第60話 どエルフさんとコンテスト
なんだかんだとありつつ、いつもの道具屋で装備を整えた男戦士ご一行。
エルフ装備専門店とは銘打っていたが、ちゃんと一般の人向けの装備も充実しており、そこそこに彼らの装備は充実したのだった。
「男戦士よ。鎧の調整は3日くらいかかるが構わないか」
「あぁ。ここ最近、忙しかったし、久しぶりに宿屋でゆっくりするよ」
鎧を調整に出した男戦士。
店主によって調整されている期間は、当然、鎧がないので冒険には出られない。
主戦力である彼がこういう状態なので、パーティは開店休業。
3日間という、少し長めの休暇にやったぁ、と、女エルフたちははしゃいだ。
「私達も羽を伸ばしましょう。そうだ、いきつけの美味しい料理屋があるのよ、コーネリア、ケティ、一緒に行きましょう」
「いいですねぇ。ただ、ノー○ン喫茶はちょっと」
「なにが悲しくて女の子どうしでそんな所行かなくちゃならないのよ!! ありパンよ、ありパン喫茶よ!!」
「ノーとかありとか、よくわからないパンなんだぞ」
やいのやいのと語らう女子たち。
対して男戦士はといえば、この浮いた3日をどう使おうかと、悩んでいた。
「近くに修行場などあれば、そこでトレーニングさせてもらうんだが」
「ダメよティトそんなんじゃ。休むときはちゃんと休まないと、身体から疲れが取れないわよ」
「そうですよティトさん。息を抜くのも玉には必要ですよ」
いや、そうなんだが、と、男戦士がシブい顔をする。
何分職人気質なところがある男戦士である。
数日とはいえ、剣を持たない状態が続くと、勘がにぶってしまいやしないかと、彼は警戒していたのだ。
そんなひたむきさが彼の力の源なだけに、冒険に出ないからといって、剣の訓練をサボるという選択肢はなかった。
「おう、修行ならうってつけのがあるぜ」
「なんだ? 加圧トレーニング用のリングでもあるのか?」
「違う違う、道具じゃなくってさ――」
男戦士に声をかけた店主は、後ろを振り向くとその壁に貼り付けられた、一枚のポスターを指差した。
武闘大会開催。
戦士と魔法使い、二人一組で行う実戦想定のトーナメントバトル。
優勝者にはなんと豪華賞品と賞金10000ゴールドを進呈。
「明日から開催だ。枠もまだ空いてたはずだから、お前、参加してみたらどうだ?」
「なるほど、面白そうだな――」
しかし、と、男戦士が躊躇する。
視線を向けたのは女エルフの方。
書いてある通り、この武闘大会は戦士と魔法使いのコンビで行うトーナメント。
せっかくの休みだと喜んでいた女エルフを付き合わせてしまうことに、彼は少なからず罪悪感を感じたのだろう。
そんな男戦士のらしくない気遣いを、女エルフは笑う。
「気にしなくっていいわよ。ティト、貴方がやりたいっていうなら、付き合うわ」
「賞金も魅力的ですし、よろしいんじゃないですか?」
「僕は豪華賞品がなんなのか気になるぞ!! 魔法遺物かな!?」
男戦士の望みを快く応援する仲間たち。
そんな心遣いに瞳を潤ませながら、男戦士は頷いた。
「モーラさん、コーネリア、ケティ。ありがとう――。じゃあ遠慮なく」
「そうそう遠慮なんてアンタには似合わないのよ」
「モーラさんにエントリーしてもらうことにするよ」
「――うん?」
モーラさんに、とは、また他人行儀な言い方である。
これはいったいどうしたことかな、と、エルフが首を傾げる。
ほら、よく見てくれ、と、言わんばかりに男戦士がポスターへと歩み寄る。すると、武闘大会開催の横にひっそりと――。
「ここにほら、同時開催、ミスおっぱい選手権って書いてあるじゃないか」
至極どうでもよい上に、くだらない大会が併記してあった。
「いや、いやいやいや!! 出るわけないでしょう、そんなの!! というか、武闘大会出なさいよ、アンタ!!」
「せっかくの休日だというのに、人と戦うのはちょっと」
「なに今更なこと言ってんのよ!!」
「それに、ミスったおっぱい選手権なんて、モーラさんのためにあるような大会じゃないか!! 君が出るなら優勝間違いなしだよ!!」
「誰のおっぱいがミスっとるんじゃこら!! 大正解でこのサイズじゃ悪かったのう!!」




