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どエルフさん  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第一部第三章 獣人娘と砂漠の遺跡
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第40話 どエルフさんとミノタウロス

「大地に棲まう精霊たちよ、古の契約に従いて我の求めに応じよ」


 剣の岩礁、と、女エルフが唱えれば、ミノタウロスの足元がたちまちに隆起する。

 突然の足場の崩壊にミノタウロスは驚いて悲鳴をあげた。


 二の足を踏んだミノタウロスにすかさず切りかかった男戦士。

 その太刀筋は、魔物の左腕の関節を捉えていた。


「ふん!!」


 上段からの振り下ろし。ミノタウロスの関節に渾身の力を込めて刃を振り下ろす。

 きらめいた両刃の剣、その刃先が血にぬれて、見事にミノタウロスの左腕は、剣山の上へと転がった。


 だが。


「ティト、危ないわ!!」

「ブルォオオオオオオオッ!!」


 残っていた右腕による横なぎの一撃。

 木の幹くらいはあるだろうかという、太いミノタウロスの腕が男戦士を襲う。


 すかさず左腕に結わえていた盾を使ってそれを受け止めえた男戦士。

 なんとかミンチになることは防げたが、衝撃に踏ん張りきれず、彼は横に転がった。


 体勢を崩し、うずくまった男戦士。

 すかさずミノタウロスが追撃に向かう。

 頭からの突撃に、あわや、これまでかと思ったその時だ。


「ティトさん!! モーラさん!! 目を閉じてください!!」


 怪光線。

 女修道士が叫ぶや、どうしたことか、ランタン以外にまったく光の入ってこないだろう洞窟の中に、突然にまばゆい光が差し込んだ。

 その光やすさまじく、女修道士の姿が見えないくらいだ。


 すかさず、男戦士と女エルフは目を塞いで、それが目に入るのを防いだ。

 もろにその光を見たのは、ミノタウロスである。


「ぶるぉおおおおっ!? ぐうぉっ!? ぶるぁあああっ!!」


 暗い洞窟内での生活が長いのか、予想以上に女修道士の目くらましは、彼の視界を焼いたらしい。


 すかさず男戦士が体勢を立て直す。


「ティト、避けてくれ!!」


 次にそう言ったのは、モグラヤモリが養殖されている柵の前へと立ったワンコ教授。

 彼女は、えい、と、その中に爆竹を放り込んだ。


「ピギィイイイ!!」


 爆竹の音に驚いたモグラヤモリが悲鳴を上げる。

 そのまま駆け出した何頭かのモグラヤモリは、土を巻き上げて暗い洞窟の中を、男戦士たちの方へと向かっていく。


 目の見える男戦士は、とう、と、それを横飛びにかわした。

 しかし、目の見えないミノタウロスは。


「グルォオオッ!! ぶるぅううううっ!! ぶもぉおおお!!」

「ピギッ!! ピギャァアアッ!! ピッ、ピギギイィ!!」


 モグラヤモリの大群に突如として襲われたミノタウロス。

 体勢を崩し、モンスターはついにその場に膝を折った。


 巻き込まれたモグラヤモリが、首の骨を折られてミノタウロスの体に折り重なる。

 モグラヤモリの死体に身動きを封じられて、ミノタウロス。

 振り払って立ち上がろうとしたその場所に暗い影が差す。


「終わりだ!! バイ・スラッシュ!!」


 ミノタウロスの脳天めがけて男戦士必殺の剣が降られる。

 気力を込めたその渾身の唐竹割は、ミノタウロスの顔を正中から二つに分けた。


 断末魔。

 地獄の底から響いてきそうな憎悪のそれは、男戦士が剣を抜くと同時に終わった。 

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