第28話 どエルフさんと魅惑の水着
「それはまさか、噂に聞く幻の装備、魅惑の水着!!」
妙に布面積の小さい水着を持っていた男戦士を正座させ、くどくどくどくどとお説教をしていた女エルフ。
そんな彼女に横っ面から、女修道士が声を浴びせかけた。
何事、と、振り返った女エルフの手から、女修道士はその水着を拝借する。
「間違いありません。モンスター・人間を問わず、見るモノの視線を釘付けにし、隙を生み出すという魅惑のアイテム!! どうしてこれを!?」
「いや、こいつがなんか、知らないうちに買っていて」
「そんな凄いものだとは露知らず」
正座を解いて立ち上がった男戦士。
そうだったんですか、と、女修道士がそれを男戦士に返すと、なんだか誇らしげに、男戦士は胸を張った。
いや、えばるところじゃないだろう、と、エルフ娘が男戦士を睨む。
「防御力は下がりますが、俊敏性と魅力のステータスが上がりますよ。装備してはどうですか、モーラさん」
「えぇ、いいわよ、こんなの」
「せっかく買ったんだ。一回くらい着てくれてもいいじゃないか」
「そうですよ減るもんじゃないんですから」
えぇ、と、嫌そうな顔をしつつも、どこか照れくさそうなエルフ娘。
なんだかんだといいつつ、おだてられると弱い彼女である。
しょうがないなぁ、と、再び男戦士からそれを手に取ったエルフ娘が、それを手にして広げた。
その時。
【このアイテムを装備することはできません!!】
アイテム妖精が、エルフ娘たちの周りで囁いた。
装備できない、とは、これいかに。
あきらかにそれは女性用の装備品である。
困惑に、首を傾げたエルフ娘。
「どういうことでしょうか?」
「まさかモーラさん、男ということ――」
「絶対違うから!!」
「そうですね、ためしに私が装備してみましょうか」
そう言って、女修道士が水着を手に取り藪の中へと入る。
しばらくして、ピロリン、と、愉快な音が藪の中から聞こえてきた。
【コーネリアは防御力が3下がった】
【コーネリアは俊敏性が1上がった】
【コーネリアは魅力が10上がった】
「普通に装備できましたけれど」
「何故だ。どうしてコーネリアさんに装備できて、モーラさんに装備できないんだ」
「なんか、それはそれで、ちょっと悔しいんだけれど」
再び修道服に着替えて、茂みから出てきた女修道士。
そんな彼女から再び水着を受け取ると、女エルフはまじまじとそれを見つめるのだった。
【このアイテムを装備することは物理的にできません!!】




