第24話 どエルフさんと紫外線
「あ、暑い――」
見渡すばかりは砂、砂、砂。
延々と続く黄色い地平に、容赦なく空から照り付ける太陽。
そこを行く、戦士、エルフ娘、女修道士の三人。
彼らの目的はその背嚢の中。
この砂漠の北端の街で受け取った書物を、横断した先にある王国へと届けることにあった。
「もうだめ、しんどい、暑い、歩き疲れた」
「ダメだモーラさん!! 寝るな!! 寝たら死ぬぞっ!!」
「それは雪山だっての。ちょっと休憩していきましょうよ」
仕事の内容は単調だが、かれこれ、三時間も砂漠を歩けばしんどくなってくる。
エルフ娘がその場にうずくまったのは、仕方のないことだった。
仕事は真面目にきっちりこなす。
それでなくても、弱音なぞ、めったにはかないエルフ娘が、この体たらく。流石に男戦士も、女修道士も、これはまずいなと足を止めた。
男戦士が太陽の前に立って日陰をつくり、その中で、女修道士がエルフ娘を手で扇ぐ。ありがと、と、笑ったその姿にも、いつものちゃきちゃきとしたエネルギーは感じられなかった。
「大丈夫か、モーラさん」
「うん。まぁ、なんとか、休めば大丈夫だと思う」
「よく見るとすごい汗ですね」
「ほら、エルフ族って、森の奥深くに棲んでるじゃない。だから、種族的に日光の光に弱いのよ」
肌もそんなに焼けないし、と、腕をまくって見せるエルフ娘。
その言葉の通り、彼女の腕には日焼け跡の一つだって見当たらない。
ね、そういう種族なのよ、エルフって、と、言った矢先、太陽を背にしていつもの真顔になった戦士の姿が彼女の目に入った。
はい、また、いらんこと言ったな。
「バカな――!! それじゃ、ダークエルフは、エルフがギャルビッチ化した姿ではなかったというのか!?」
「うん、なんだ、ギャルビッチ化って」
「野生化。女性特有の特殊ステータスですね。私の知り合いにも、若いころにこのステータスにかかっていた人が何人かいます」
「聞いたことないんだけれど!?」
その場に膝を落とし、砂を握りしめる男戦士。
よっぽど悔しかったのだろう。目には汗とは違う、きらめく液体が光っていた。
一方、エルフの瞳には、こんな直射日光のただなかにありながら、一切の光が宿っていなかった。
「一緒に旅をしていれば、一度くらいはこのステータスになるかと思って、楽しみにしていたのに。俺の、俺の純情を、どうしてくれるんだモーラさん!!」
「どうもしないわよ!! そんな劣情!!」
「せっかく、交渉、魅力、感覚強化、危険回避、根性のスキルがあるのに――もったいない」
「なにがもったいないのよ!!」
「うぅっ、しかし、たとえ肌が白くても、どエルフさんはどエルフさんだ。それだけで、俺は毎日頑張れる」
「何を!?」
「そうそう、ツッコミのスキルもありましたね。こちらはややマニアックな層向けですが。流石どエルフさんですわ、さすがです」
「うれしくないわよ、そんなので褒められても!!」




