交流会前日
交流会を翌日に控え、養成所では屋外鍛錬場もとい校庭に全生徒が集められ、明日の交流会についての説明が行われていた。
Sランクパーティである緋色の剣来訪の報せに湧き立つ生徒達の中において、シエラは退屈そうに欠伸を一つ吐き出す。
「――というわけで、明日の交流会は君達にとって有意義な物になるだろう。
よく話を聞いて失礼の無いようにな。
以上で集会は終了だ、解散してくれ」
校長であるバルザスの長い長い話が終わり各自教室に戻っていく最中の事。
「シュタイナー! 聞いたかよ、緋色の剣が来るってよ!?」
「シエラちゃん会った事ある!?」
ブレザーのポケットに手を突っ込んで歩くシエラの背後からリグスとナースリーが声を掛けてきた。
それに対して振り向いたシエラはポケットから手を出すとヒラヒラ手を振る。
「昨日うちに来てた」
「ええ!? そうなの!? 良いなあー。ねえどうだった?」
「やっぱり格好良かったか!?」
冒険者を目指す少年少女たちにとって緋色の剣に限らずSランク冒険者のパーティというのは言わばヒーローの様なものだ。
我々の世界で言うところのスーパー戦隊物のヒーローや、仮面を付けたライダー。もしくは魔法少女達が学校にやって来る。
子供達にとってはそんな感覚なのだ。
もしくはアイドルや俳優、女優が学校に来る感覚に近いか。
誰もが知る英雄達が養成所にやって来るとなればリグスやナースリーだけでなく、生徒達全員が興奮気味にその事についての話で盛り上がっていた。
「……親父の方が格好良い」
「まあ確かにリチャード先生は格好良いけど。
そうじゃなくてさ、こう、やっぱりSランクの冒険者って威圧感とか強そうだなあ、みたいな感じしなかったか?」
「ミリアリス様、ミリアリス様はどんな方だった!?」
「威圧感、は無かった。皆優しい。
ミリアリスさんは、何だかお母さんに似てた、優しいけど強そう」
「へえ~。そうなんだあ。明日会えるんだねえ」
「楽しみだよなあ」
「俺も楽しみ。明日の交流会でトールスさんと戦えるから」
「ええ!? 剣聖と剣合わせるのか!? ズルいぞシュタイナー!!」
ボクサーが開始のゴングの後グローブとグローブを合わせる行為と同じだ。
剣士が戦いの前に剣を合わせる、それは剣士同士が握手をするに等しい行為。
リグスは剣士として修行中の身。
であるならば、シエラを羨む気持ちは人一倍なのは頷けた話だ。
三人が楽しく会話しながら教室に向かっていた時の事。
Aクラスのクラスメイトが三人がシエラ、リグス、ナースリーの前に立ち塞がった。
眉間に皺を寄せ、険しい表情を浮かべている。
何か気に食わない事でもあったのだろうか。
「おい! 貴様らBクラスの平民ごときがシュタイナーさんに馴れ馴れしいぞ!」
「は? 何だよ、お前ら関係ないだろ!? シュタイナーは友達だ! 馴れ馴れしくて悪いかよ!?」
「悪いに決まってるだろ? シュタイナーさんはリチャード様とギルドマスターのご息女だぞ?
貴様らでは釣り合わないだろ。
さあ、シュタイナーさん、一緒に帰りましょう」
「……え? 友達じゃないのに? 絶対やだ」
クラスメイトの誘いだろうが貴族の誘いだろうがバッサリ切り捨てるシエラ。
悲しいかな、更にはシエラは固まる三人を無視してその横をリグスとナースリーの手を引いて通り過ぎていった。
「なんだあいつら?」
「知らない、最近良く話しかけてくる」
「友達になりたいんじゃない?」
「俺は、俺の友達を馬鹿にする奴等とは友達にはならない」




