休日はゆっくり、出来なかった
冒険者養成所は地の日に全面休校となる。
我々でいうところの日曜日、リチャード宅のドアノッカーを叩く音にシエラが対応した。
「おはようシエラちゃん、今から遊びに行かない?」
「ついでに剣教えてくれ」
玄関を開けた先にいたのはナースリーとリグスの二人だった。
初めての出来事にシエラが困っていると、アイリスが廊下からヒョコッと顔を出して「お父さんには私から言っておくから行ってらっしゃい」と言われたので、シエラは頷くと木剣を2本持って出ていった。
「――というわけで、シエラちゃんは遊びに行ったんだけど」
「おお、それは良かった。たまには子供らしく遊ばないとな。
で? 何故私は押し倒されたのかな?」
シエラを見送ったアイリスは、リビングでノートを広げ、生徒達一人一人の教育方針を考え、生徒別に鍛錬の内容を紙に書き記しているリチャードをソファに押し倒した。
「私達付き合ってるけどシエラちゃんがいるから中々そういう事出来ないじゃない?
だから、チャンスかなあって」
「あのなあアイリス。
私は今……いや、そうだなシエラも生徒達も大事だが、たまには二人の時間も必要だ。
だが、ここでするのは些かな……寝室に行こうかアイリス」
「貴方のそういう所、好きよ」
「私もアイリスが好きだよ」
子供の居ぬまにイチャイチャと、リチャードとアイリスは恋人の時間を寝室で楽しむ事にした。
そうしてしばらく寝室で致し、風呂で二回戦ついでに汗を洗い流し、再び寝室に戻ってきてはベッドで抱き合いくつろいでいたところ、昼を過ぎ、太陽が西に傾き、乱れた寝室を整え始めた頃。
トントン、と再び家のドアノッカーが叩かれた。
「居留守するかね?」
「そういうわけにもいかないわ。もし大事な用なら――」
「分かった出てくるよ」
「ええ。ん。行ってらっしゃい」
アイリスに口付けをしたリチャードはシャツとズボンを履いて玄関へと向かった。
リチャードが玄関の扉を開くと、そこにはSランククエストの為に遠征していた現役だった頃のパーティメンバーが5人。晴れやかな表情で立っていた。
「おお、君達か! その顔、アースドラゴンを討伐出来たみたいだな」
「お久しぶりです先生。アースドラゴン【羽根無し】の討伐、やり遂げました!」
「詳しい話は中で聞こう、入りなさい」
「ああいえ、ギルドにも行かないといけませんから。
マスターにはまだ報告してないんですよ。
先に先生に伝えたくて、帰ってきた足でこっちに来たので」
「ハハハ。そうか、なら丁度良かったな」
「え?」
「まあ直ぐに分かるさ。入ってリビングで待っててくれ」
「ああ、え? まあ、じゃあ、お邪魔します」
困惑する元パーティ。今は友人と言うべきだろうか。
その5人を招き入れると、リチャードはアイリスが待つ寝室へと向かった。
この家の間取りを知っている面々からすれば玄関での会話。
そして、リチャードが寝室に向かった事からパーティの女性陣二人はリチャードの言葉の真意を察して「まさかギルドマスター」「遂に想いを」と顔を見合わせてニヤニヤしていた。
その後直ぐの事だった。
ギルドにいてはまず見られない私服のギルドマスターがリチャードと共にリビングにやって来たので、予想が当たったパーティの女性陣二人はアイリスに近付き、手を取って「やっと告白したんですね」「想いが伝わって良かったですね」と、二人の関係を祝福する。
残る男性陣三名も、その様子を見てやっと二人の関係を理解したようだった。




