初の授業
自己紹介もそこそこに、本日の授業が始まった。
冒険者養成所でまず学ぶのは武器の使い方や基本的な魔法などなのだが、ことAクラスの生徒に関してはその辺は各家庭にて家庭教師なり両親からなり履修済みなのは入所試験で分かっている。
そのためリチャードは定められたカリキュラム通り、魔物の生態についての講義を始めた。
「さて、この街の近くにも多く存在するリーフスライムだが――」
剣に覚えがあり魔法が使える貴族の少年少女達にとり座学などつまらない物だろう。
そしてこの時は意中の想い人に良い所でも見せたかったのか、生徒の一人がリチャードの講義に異を唱えた。
「リチャード様。私達は剣も魔法も使えます。
魔物の生態を学ぶ座学などは不要。
その魔物と戦って経験を積む方が有意義に思います。
大体、今更スライムの生態なんて知ったところでなんの役にも立ちません」
「ほう、言うじゃないか。では一つ聞こう。
この街近辺に生息するスライム種最弱と言われているリーフスライムだが彼等の体液はその食性からあるものの代用品として役にたつ事がある。
なんの代用品か分かるかね?」
「……いえ、分かりません」
「ふむ、では彼以外で他にリーフスライムの特性を知る者はいるかい?」
リチャードの言葉に誰も手を挙げない。
そんな中、ただ一人シエラだけがピシッと手を挙げていた。
「ではシエラ。答えを」
「ん。リーフスライムは薬草を好んで食べる為、その体液には回復薬と同じ効果が見込めます。
個体によって効果の振れ幅はあるけど、中には高級回復薬並の回復力を持つスライムもいるので――」
「そこまでで良いよシエラ。
つまりそういう事だ、リーフスライムは緊急時に回復アイテムの代用品になる。
この事を知っているだけでクエスト中の生存率は大きく変わるんだ。
良いかい君達、知識とは武器だ。
時には剣や魔法よりも頼りになり、強く柔軟な武器や防具になる物だ。
あえて言おう、無駄な知識など無い。雑学ですら生きるために役立つ時がある。
まずは魔物の生態をしっかり学びなさい。
君達には私と違ってまだまだ時間があるんだから、焦って戦いに身を置く必要は無いんだ。分かったかな?」
「……はい。リチャード様、申し訳ありませんでした」
「ふむ、ちゃんと否を認め謝罪出来るなら、君はきっと良い貴族になるな。
将来が楽しみだ。さあ授業を続けるぞ?」
こうして午前は座学の授業はつつがなく行われていく。
そして昼食を挟んで午後の授業は各々得意な武器を手に鍛錬場での訓練が開始されるのだが。
「シュタイナーさん、手合わせを」
「いや、シュタイナーさんには僕と手合わせをしてもらうんだ」
「いや僕が」
「いやいや、私が」
このようにクラスメイトの男女両方から手合わせを申し込まれてシエラは困って冷や汗を流した。
リチャードの後ろに隠れたい欲求もあるが、戦いを申し込まれてそれをするのは逃げているみたいで嫌だと思ったシエラは面倒くさくなったのだろう。
「分かった、まとめて相手するから掛かって来て」
と、木剣2本を構えて手合わせを申し込んできたクラスメイト全員の前に立ち塞がった。
まるでダンジョンのボスの様に佇むシエラの様子を見ていたリチャードは苦笑しながら、他の生徒に剣の指導や魔法の指導を行っていく。
そして、次に視線をシエラに移した時にはシエラに挑んだクラスメイト達が武器を叩き落とされて呆然と佇んでいた。




