合格発表
筆記試験の内容はあってないような物だった。
名前が書けるか、から始まり、この国の名称、足し算引き算と簡単な算術、最後に冒険者の試験らしくスライムの弱点は? という設問とどうして冒険者になりたいのか? という、問題というよりは質問で筆記試験は締めくくられていた。
貴族なら家庭教師に勉学は教えてもらっている為、こんな程度の試験はもはやアンケートを記入するくらい簡単な事。
その試験を終えた受験生は各々帰宅の為に答案用紙を筆記試験の試験官を担当した教師に渡し、教室を出て行った。
シエラも早々に貴族達に続くように教室から出て行った。
合否はその日のうちにランク付けされて発表されるとの事だったので、シエラはそれまで時間を潰すためにリチャードを探そうと思い立ち、校舎内を歩き回るつもりでいた。
しかし「むやみやたらに歩き回ると道に迷い、余計な被害にあう」というリチャードから教えられた冒険者としての心得からリチャードを探すのをやめて合格者が発表される鍛錬場の前の広場へとシエラは向かっていく。
「シエラ? どうした、試験は終わったのかい?」
「親父? 俺の方は終わった。親父こそどうしたの?」
結果として歩き回らずに鍛錬場の前に来たシエラは時を同じくして赴任の挨拶を終えたリチャードと再会することになる。
「こちらも挨拶を終えたところでね。聞けばここで合格発表……いや、どちらかといえばクラス分けか。それがあるというじゃないか。
だから見に来たのさ。まあまだ貼り付けられてはいないようだがね」
「他の子はまだテストしてた」
「ああ、終わったら抜けても良いんだったか。試験を受けたのは20年以上も前だからなあ。すっかり忘れてしまっているよ。
どうだった? 試験は」
リチャードとシエラが近くのベンチに座り、話していると、他の受験生達、教養のある貴族の少年少女たちが全員校舎から出てきて、少し遅れて平民枠である受験生達も校舎から出てくる、どうやら筆記試験も終了したようだった。
「予想より試験は簡単だった。
剣技の試験も魔法の試験も、人形壊した」
「ハハハ、まあ今のシエラならもう人形相手だとそうなるだろうなあ。
筆記試験はどうだった?」
「大丈夫、問題ない。スライムの弱点も種類別に全部書いた」
「ん? 種類別に全部? それは少し難しい問題が出たんだな」
「答案用紙にはスライムとだけしか書いてなかったから、どのスライムか分からなくて、覚えてる限り全部書いた」
「あー多分だが、答案用紙に書いていたスライムというのはリーフスライムの事だよ、君たち冒険者の卵が最初に戦う魔物の一匹になるだろうからねえ」
「そうなの?」
「恐らくね」
そんな話をしてしばらく待っていると、試験官を務めた教官が合格者のランク付けがされた丸めた張り紙を持ってきて掲示板に張り付けた。
受験生の面々が合格しているかどうか、というより、自分のクラス分けが気になってその掲示板の前に集まる中、シエラはリチャードと座るベンチから動こうとはしなかった。
合格は皆一様に確約されている、たんにシエラが自分のランクに興味がなかっただけだ。
「見に行かないのかい?」
「ん。べつにいい」
「そうかい? でもお友達はそうでも無いみたいだぞ?」
「友達?」
リチャードの言葉に視線を掲示板の方に向けると、ナースリーが手を振って自分の名前を呼んでいるのをシエラは見て首を傾げるが「行っておいで」とリチャードに言われては仕方ない、とシエラは渋々ベンチから立ち上がると手を振るナースリーの方へと歩いて行った。
「シエラちゃん一番上見て上!」
「ん。見てみる」
張り紙の前に受験生が集まっても上の方は見える。
クラス分けはA、Bとなるので一番上は成績優秀と認められたAクラスになる生徒の名前が書かれている。
そのほとんどが貴族であるが、一番上、主席で合格と認められた生徒の名はもちろんシエラであった。
「Aクラスだよシエラちゃん! 貴族じゃないのにすごいね!」
「ナースリーは?」
「私はBだよ、一緒になれなくて残念だねえ」
「残念……うん、そうだな残念。友達とは、一緒のクラスが良かった」
シエラのAクラス認定、この結果を見た他の受験生の反応はというと「まあ、でしょうね」という感じだった。
そんな中ただ一人。合格した筈の本人だけが初めての友達と同じクラスでないことに不満を抱いていた。




