試験前には一悶着あるものだ
リチャードと分かれ、試験会場のである屋内鍛錬場の前までやって来たシエラ。
そこには既に十数人の子供が集まって試験の案内を待っていた。
仲の良い子供達で集まっているのか試験に自信が有る無いを話しているグループもある。
そんな子供達が新たにやって来たシエラに注目する。
本来なら試験に使用される武器は試験会場で貸し出される物だ。
この場に自分の武器を持参しているのはシエラだけ。
どうやら貴族の子供はまだ到着していないようだ。
皆一様に飾り気の無いシャツやズボンを着用している。
「見ない顔だなあ、お前、生意気に武器持ってんのかよ」
「俺もお前の顔は知らないけど?」
子供の中で一人、周りよりやや身長が高く恰幅の良い男の子が武器を持つシエラに突っかかってきた。
ガキ大将の様な存在なのだろうか、取り巻きもその男の子に続いて「女の癖に」と偏見爆発でシエラに突っかかる。
「お前じゃそんなの使えないだろうから、俺が使ってやるよ」
と、先頭のガキ大将がシエラに手を伸ばす。
それを軽く避けたシエラだったが、ガキ大将はそれが気に食わなかったのだろう。
顔を赤くしてシエラに再度手を伸ばそうとした。
その時だった。
「止めろ!」
「や、止めて下さい!」
二人の子供の声が同時に響き、シエラの前に一人の少年がガキ大将との間に割って入った。
茶色い髪に一部赤みがかったメッシュの入った少年。
いつぞやリチャードと共に訪れた肉屋で出会った肉屋の店主の次男坊、リグスだった。
そしてもう一人、リグスと同時に声を上げたのは一見すると気の弱そうなセミロングヘアの少女。
その少女はシエラが剣を抜こうとした腕を抱き締めて止めていた。
「ガング、お前死ぬ気か!?」
「はあ? おいおい、お前頭悪いんじゃねえの? 誰が死ぬって?」
「お前だよ馬鹿! 斬られるつもりか!?」
ガキ大将、ガング少年に負けない凄みでリグスが言う。そんなリグスにシエラは少し感心していた。
「斬らないよ、弱いやつは斬らない」
シエラにしてみれば煽っているわけでは無い。
ただ実力差を測って事実を述べたのみなのだが、まあそれが相手には煽りに聞こえるわけで。
「なんだとこの女!」
と、シエラはガングを怒らせてしまったが、丁度そこに貴族の子供が数名、親同伴でやってきたのでガングは舌打ちして取り巻きの方へと戻っていった。
「何かあったのかい?」
シエラ達に声を掛けてきたのは今期冒険者になるためにやってきた貴族の少年の一人だった。
金髪碧眼、王子を絵に描いたような少年だ。
「俺が武器を持ってきたのが気に障ったみたい」
「君、女の子だよね? 俺なんて男っぽい喋り方――」
「俺が自分の事を俺って言って何が悪いの?」
「いや、だって――」
「止めなさいアレン、その子の言う通りだ、すまないねお嬢さん、息子が余計な事を」
貴族の少年、アレンの父親であろう男性がそう言ってシエラを見たのでシエラは「良い、気にしてない」と言って首を振った。
そんな時だった。
「養成所入所試験を受験の皆様、準備が整いましたので屋内鍛錬場へとお越し下さい」
と、鍛錬場から出てきた教官の声が響いた。
「あなた、いつまで掴まってるの?」
「ああ! ご、ごめんなひゃい」
「名前は?」
「ナースリーって言いますぅ」
「そうか、とりあえず離して」
シエラの言葉にしがみついていた少女、ナースリーが手を離してあたふたする。
どこか放っておけないその少女とリグスに「ありがとう、助けてくれようとして」と言うと、シエラは試験会場へと歩き出した。




