シエラが冒険者になったなら
初めての模擬戦をした日の翌日からの事だった。
アイリスが鍛錬場に来てはシエラに剣の指導をするようになった。
今日で5日連続、毎日シエラに剣を教えるという大義名分を掲げリチャードに会いに来ている訳だが。
「すまないなアイリス、二刀流は専門外でね。
指導してくれて助かるよ」
「いや、まあ一応教えてはいるけど、剣と魔導銃の組み合わせは二刀流と呼べるのかしら?」
「シエラが君の技を見て新しい発想を思い付き、それを魔導銃を使う自分に落とし込んで考えて、そして体現している。
アレンジされているが、間違いなく君の二刀流だと思うが」
「まあ、それもそうなんだけど。あの、ほら見た目というかなんというか。
ジョブはどうなるのかしら」
「ああ、確かに。
気は早い気がするが。冒険者としてギルドに登録するなら、パーティを組みやすくするために書かなければならないものな。
二刀剣士とは違うし、魔剣士で良いのではないかね?」
冒険者をしていると、どうしても一人では達成困難なクエストが出てくる。
商人の護衛や強力な魔物の討伐等がそうだ。
そんなクエストも頼もしい仲間が入れば達成出来る。
ギルドの受け付けに行って「こういう仲間が欲しい」と頼んだらのなら、ギルドの職員がその要望に応え「こちらの中から選んで頂ければ私達からお声掛けします」と要望に合致する冒険者の元にギルドカードを通じて念話の魔法で連絡が来る仕組みだ。
故に冒険者がギルドカードを作る際に書類に得意な武器やジョブを書き記すのだ、剣士、魔法使い、シールドガードナー、シーフ、等など。
パーティを編成する為に必要な情報を調べやすくするために、新人冒険者達はギルドカードを作る際、申請用紙に自分にあったジョブを書き記す慣例があるのがこの国のギルドの決まりになっている。
「アイリス、次は?次は?」
壁際でシエラのジョブはなんと呼ぶのかとリチャードとアイリスが「魔剣士ともまた違うような?」「では銃剣士、だが普通の銃でもないぞ?」と議論していると、鍛錬場中央で素振りをこなし終えたシエラが二人に駆け寄って来た。
「……なんの話し?」
「ああ、シエラが養成所を卒業した後の話しなんだがね――」
と、シエラの質問にアイリスと二人で話していた内容をリチャードは説明する。
まだ入所してすらいないがシエラの戦闘スタイルがやや特殊な為にリチャードもアイリスも新しいジョブをなんと呼ぶべきか決めるのが楽しくなってきていた。
「ジョブかあ……親父はなんだったの?」
「私は剣や槍、戦斧や大槌と、まあ近接武器を相手に合わせて使い分けていたからね。
最初はただの剣士で登録したはずだったが、いつの間にかギルドカードにはバトルマスターなどという大袈裟なジョブ名を刻み直されていたよ」
「バトルマスター、格好良い。……お母さんは?」
「お母さんはねえ…………お母さん!?」
「あっ、間違えた」
不意に言い間違えたシエラからお母さんと呼ばれ、あたふたするアイリスが顔を赤くしていく。
やぶさかではない、むしろ良い、そう呼ばれたい、とは言えず。
平静を装いながら「わ、わ、私は二刀剣士って、と、登録してるわ」と噛み噛みでシエラに応えた。
「俺は魔剣士? 銃剣士? 2つ合わせて銃魔剣士? それとも魔銃剣士?」
「い、良いんじゃない魔銃剣士! 格好良いわよシエラちゃん!」
「ん。じゃあ俺、魔銃剣士やる」
こうしてシエラのジョブ名は決め終わったので、リチャードは今日もシエラと模擬戦をするために娘を連れて鍛錬場中央へと向かう。
その様子を見つめるアイリスは「お母さん、か」と嬉しそうに微笑んでいた。




