親子二人は飯よりデザート
「なあ親父、壁壊しちゃったけど良かったのか?」
「ん? ああ構わんよギルドの人が直してくれるからね」
「そっか、分かった」
冒険者ギルドの屋内、食事処は今日も冒険者でごった返している。
肉や魚の焼ける香ばしい香りが鼻をつき、食欲を刺激するが、リチャードとシエラの甘党親子二人はギルド特製のパフェを食べていた。
「チョコ美味しい」
「うむ、甘味の中にあるほのかな苦味がアイスや生クリームの甘さを引き立たせているな。
キメの細かいクッキーも絶品だ、口の中でアイスと絡んで、うむ。美味い」
特製パフェにご満悦の親子は行き交う冒険者達から見ても和やかな様子だ。
パフェを頬張るシエラを見て「今の見た?」「可愛いねえ」と女性冒険者の二人組などはニコニコしながら親子二人のテーブルを通り過ぎた後に話していた。
そんな親子のテーブルに近付く人影が一つ。
まあ、アイリスなのだが。
「ちょっと同席良いかしら?」
「アイリス、こんにちは」
「やあアイリス。休憩かい?」
「こんにちはシエラちゃん。
ええ、休憩よ。見てたわよ二人共。
シエラちゃん、もしかしてあの剣の構え方って私の真似だったりする?」
シエラの横に座りながら挨拶を交わしたアイリスが嬉しそうにシエラに聞いた。
不快に感じていないのは明らかだったので、シエラは頷き「アイリスの真似した」と微笑みながら答えると、シエラは渾身のドヤ顔をアイリスに向ける。
「はあ~可愛い。連れて帰りたい」
「馬鹿を言うな。
前にシエラにも言われただろうが」
「わ、分かってるわよ」
「俺はアイリスの家には行かない。
だから、アイリスが親父の家に住めば良い」
「ハハハ、確かにそれならいつでも一緒にいられるな」
子供の無邪気な発言はアイリスには刺激が強かったか、その発言を冗談と捉え笑うリチャードとは違い、アイリスの顔は赤い薔薇の色のように染まっていく。
「い、一緒に住めばって。私とリチャードが結婚するって事!?」
「……いやいや、何故そうなる」
「親父と結婚、アイリスが?」
アイリスのあげた声に周囲の冒険者達は「いい加減告白する気になったかマスター」「いつまで片思いしてるつもりなのかしら」「片思いしてる間にリチャードさん寿命で死ぬんじゃね?」等と口々に言っては笑う。
そんな冒険者達をアイリスは睨み付け、殺気を向けると、冒険者の笑みは引きつり、冷や汗を流しながら視線を逸らしては食事に戻った。
「アイリス、殺気を振りまくな。
彼らは冗談で言ったに過ぎんだろ? シエラもいるんだぞ? 冷静になれ」
「アイリス怒ってる」
「はあ、ごめんなさい。確かに大人気なかったわね」
「で? 何か用があって会いに来たんじゃないのかい」
「ああ、ええそうね。
いや、えっとシエラちゃんが私の剣の真似をしてたから色々教えたくなっちゃてね。
それにしてもよ。
シエラちゃん器用よね、マギアライフル使いこなしてるじゃない。
窓から見ててビックリしちゃったわ」
「うむ、正直驚いたよ。もしかしたらこの子は私の見込み以上に成長するやもしれん」
「貴方が言うならそうかも知れないわね。
ねえシエラちゃん、今日お父さんと戦ってみてどうだった?」
「ん。楽しかった。
親父といると毎日楽しい。
勉強もトレーニングも楽しい」
「天才が努力を楽しめば最強になる、か」
「誰の言葉?」
「私の師匠だよ」
シエラの疑問の言葉にリチャードは昔師匠に言われた事を思い出しながら微笑んで答えた。優しい笑顔だった。
そんな彼に、アイリスは見惚れていた。




