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口を封じる
友人が、奇妙な本を見つけた。
油紙で包まれたそれは、実家の蔵の奥に巧妙に隠されていた古文書であった。
古い筆文字は彼には読めなかったが、それでもこの秘匿具合である。さぞ価値があるものに違いないと、友人は学者に解読を依頼した。
けれど数日後、その学者の訃報が届いた。驚くべきか、飼い猫に喉を噛み破られたのだという。
本は友人の手に戻ったが、以来、奇妙が起き始めた。
周囲に、常に猫がいるのだ。
同じ猫ではない。だが見渡せば必ず、視界の隅に猫がいる。
まるで一挙手一投足を監視するかのようだった。
猫どもは常に炯々と目を光らせ、全身の毛を逆立てて、怨敵へ浴びせる視線で男を見ている。睨んでいる。
学者の死因を思い出し、肌に粟を生じた友人は、大急ぎで本を焼いた。
何を焼いているか、猫たちにもはっきりとわかるように、伝わるようにしながらである。
その直後から、猫の囲みはなくなった。
だが今でも月に一度以上、彼は自分を睨む猫と目が合うという。
気のせいでない証拠に猫どもは、必ずにたりと笑ってから去っていくそうである。




