譲られる
両手にはスーパーの袋のずっしりとした重み。旦那が後で車を回してくれるからと、ついつい必要以上に買い込んでしまった。
うんせうんせと心の中でかけ声しながら、ようやく待ち合わせの公園へ辿り着く。
息を整えながら見回すと、夫の姿も車もまだない。少し早く着きすぎてしまったようだ。
仕方ない、どこかに座って一服しよう。それでまだ来なければ電話を入れよう。
そう考えたところに、
「どうぞ」
すぐ近くから声がかかった。
まるで気づかなかったのだけれど、びっくりするほど近くのベンチに、制服姿の少女が居た。
私の驚きを逡巡と取ったのか、彼女は読んでいたのであろう文庫本を鞄にしまって立ち上がり、もう一度「どうぞ」と言った。
「待ち合わせですよね。その荷物だと、他へ移動するのも大変そうですから」
確かに私は先からきょろきょろとしていたし、それなら人探し中、ひいてはここで待ち合わせなのだと見当もつくだろう。それにしても随分と聡い子だという印象を受けた。
「ありがとう」
「いいえ」
礼を言うと、少しはにかんだような笑顔と会釈が返ってくる。
いやはやと嘆息して、私は彼女の背中を見送った。今時の子、などとひとくくりにはできないものだ。
すっと背筋を伸ばして歩み去る姿に、女の私でさえもはっとするような華があった。加えて親切で気遣いも利く。さぞかし学校ではモテるに違いない。旦那が来たら尾ひれをつけて話してあげよう。
ちょっといい気分でいると、程なく夫がやってきた。
「何やってるんだお前」
聞いてよ、と切り出すよりも早く、彼はベンチに座る私を見て渋面になった。
「そこ、ペンキ塗りたてだぞ」




