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  作者: 鵜狩三善


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うずくまる

 越してきて数日して、そいつの存在に気がついた。

 それは夜が来るとどこからともなく現れて、じっとうずくまっている。冷蔵庫とその後ろの壁面の作る直角の隅に顔を向けて、黙って膝を抱えている。

 黒色透明、薄い影のような風体で、その体勢の所為ばかりでなく人相も格好もよく判らない。

 いつの間にかそこに居て、いつの間にか居なくなっている。体の大きさからして、おそらくは成人男性なのだろう。


 つかまされた、と思った。

 思えば他の紹介物件よりも賃料が地味に安かった。何かいわくつきの部屋だったに違いない。

 だが親の仕送りに頼る貧乏学生の身分で、頻々(ひんぴん)と引越しをするわけにもいかなかった。怯えながらも、諦めてここに住み続ける事にした。


 それから半月ほど、影と共同生活をした。

 影はやはり何をするわけでもない。ただ部屋の隅でじっとしている。

 ただそれだけで別段害はないのだが、とにかく空気が暗い。苛々する。言ってしまえばこの上なく鬱陶しい。

 疲れて帰ってきた日には殊更、その陰湿な気配はたまらなかった。

 手出しをすれば後難があるのではと腫れ物に触るようにしてきたが、とうとうある日、我慢の限界が来てそいつを蹴り飛ばした。

 すり抜けるかと思ったが、空中に浮くビニール袋程度の感触があった。

 蹴られたそれが、じろりと顔を上げた。面相は相変わらずよく見えないが、睨んでいるようだった。腹に据えかねていたこちらも臆さず睨み返す。すると、すぐにしょんぼりと顔を下げて、消えた。

 以後、そいつを見なくなった。

 一体何だったのかは分からない。だがいずれにせよ煮え切らないヤツだと、思い返すたびに腹立たしくなる。

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