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脅される
夜道を自転車で走っていると、前輪から妙な抵抗が伝わってきた。
やわらかい何かを踏み潰したような轢き潰したような、どうにも奇妙な感触である。
何事かと自転車を停めて振り向くと、路上に火の玉がひしゃげていた。火中には苦しげな男の顔が浮かんでいる。
「構わずに行かれよ」
気息奄々としながらも、はっきりとした声で顔は言う。
「斯様なる仕儀に陥ったは偏に某の身の不覚。貴殿には責なきが故、早々に立ち去られよ。去らねばよくない事が起こりますぞ」
それからはったとこちらを脅すように睨んだ。
数秒思案してから、目礼して自転車に跨り直した。
その後どんな不運も降りかからなかったから、おそらくはそれで正しかったのだろう。




