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欲しがる
子供の頃は、必ずかさぶたを剥がしてしまう悪癖があった。
傷が治りかけるとついいじり始めて、それから爪で掻いて、結局引っぺがしてしまう。
親は口を酸っぱくしてやめるように言ったが、無意識の癖のようなものだから仕方ないと居直って、いっかな改めなかった。
その日も手持ち無沙汰になるなり、傷口を掻いていた。大きなかさぶたがべろりと綺麗に剥がれて、ちょっと気分がよかった。
そこに、
「欲しい」
いきなり声がかかった。驚いて振り向くと、ちゃぶ台くらいまでの背丈しかない、着物姿の男がそこに居た。
「欲しい、欲しい、欲しい」
男は剥がしたてのかさぶたを指し、ただ同じ言葉を繰り返す。
怖くなって、つまんだままだったそれを投げつけた。すると男は拾い上げるなりかぶりつく。実に美味そうに咀嚼して、完食してからてこう言った。
「採れたら、また来る」
そうして現れた時と同様に唐突に消えて失せた。
悪癖を直したのは、それからの事だ。




