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鶴亀算
玉突き衝突が起きた。
悪い事に現場はトンネルの中央だった。副次的に発生した火災の所為で、痛ましくも多くの人命が失われた。
消火活動と遺体と負傷者の運び出しが終わり、現場検証に赴いた俺のところに、オレンジの制服を着込んだ救助隊員がひとりやってきた。
「お伝えしておきたい事があるんです」
彼は困り果てたような顔をしていた。
「どうした?」
「遺体なんですが、おかしいんです」
「欠損か?」
大事故では部位が足りなくなったり、混ざり込んでしまったりのケースが起り得る。その手の痛ましくはあるが支障ない、些細なトラブルであるのかと考えた。
だが、彼は首を振る。
「いいえ、多いんです。死者十二名中十二名、全員外傷はあれども欠損はありません。でもトンネルの中に、誰のものでもない両足が、まだ数十組転がっているんです」
勿論、負傷者の中にも足を失った方はいません。
そう結ぶと彼は、困り果てた顔で俺を見た。




