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酔歩
わたしの少し先を、男が歩いていた。
ふらふらと覚束ない足取りで、きっと酔漢だろう。
一本道で追い越すのは少し嫌だった。酔っ払いの発想は素面の予想で追いつけない。女の一人歩きと侮られて、おかしな真似をされたら困る。
そう考えてわたしは歩を緩めた。男の後をじっと尾けていく格好になる。
やがて、Y字路に来た。
さてどちらへ行くのかと酔っ払いの背を眺めていると、男はふわっとふたりに分裂した。そしてそれぞれがそれぞれの道を歩いていった。
全く同じ足取りで遠ざかっていく鏡写しのふたつの背中を、わたしはただ呆然と見送った。




