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赤くなる
学校から帰ってくると、家の前で見知らぬお爺さんが踊っていた。
「やあ赤くなった。とうとう赤くなった。赤くなった」
嬉しそうにうちの屋根を見上げていた。
つられて私も見上げた。確かに屋根は赤かった。
けれどそもそもうちの屋根って、何色をしていただろう。
そのお爺さんが見られながら家に入るのは嫌だったので、近所のコンビニに立ち寄って、しばらく立ち読みしてから帰った。
戻ると期待通りあのお爺さんはいなくなっていた。けれど屋根は赤いままだった。
母が帰ってきたので訊いてみた。
「お母さん、うちの屋根の色って何色だったっけ?」
「一々覚えてないわよ、そんなの。赤以外ならなんでもいいでしょ」
アルミホイルを噛んだような、ひどく嫌な心持ちになった。その話はそれきりにした。
今もうちの家の屋根は赤い。
気がつけばこの町内の屋根は、皆赤いようだった。




