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すべてが終わった話

とんでもなく遅くなりましたが続きです。


光が収まるとそこは外だった。どうやら無事に脱出できたらしい。我ながらノープランでよくやったものである。


周囲に散らばった触手の残骸を見るにどうやらクリスタルの光が触手の集合体を内側から吹き飛ばしたらしい。つまり腹の中で爆弾が爆発したようなものか。説明するとグロい。

せめてもの救いは血とかは出てないことか。おかげで学校は戦闘の余波でボロくなってはいるが血まみれとかにはなっていない。出ていたらスプラッタースクールになっていた。そしたらホラー映画になってしまっていただろう。セーフ。

まあ血が通ってる感じではなかったというか明らかにゼミウルのオプションっぽかったからね。


それはともかく俺の現在地は空中である。都合よく地に足が着く場所で出てくるとかそういう優しさはなかった。

おかげで先程からタキラに抱えられておりいまいちカッコつかない。いやカッコつける気はないけれども。


「む? まさか脱出するとはな。 ・・・ふん、イルデはしくじったか」


そしてこの状況で敵の目の前というね。リスキルはやめてほしい。


「槇原! 無事だったんだな!」

「ったく、心配かけさせやがって・・・」


喜んでるところ悪いけど俺たちまだ敵の目の前なんですよ。無事じゃないんですよ。

正直なんかいい感じにクリスタルが光った時は「あとは桜井たちに任せりゃいいや。 完全勝利だぜえ」とか思ってたけどこれ違ったね。勝利条件変わっただけだね。

ともかくここから逃げねばなるまい。


「あー、それじゃあもういい時間なんで俺たちはこの辺でおいとまするねえ」

「いいや、逃がさぬぞ? もう一度取り込んでくれる!」

「きゃあ!?」「ひゃあ!」


なんか触手復活したし襲ってきたぁ!?また触手プレイはいやなんですけれどもー!

襲いかかってくる触手の合間を抜って飛び攻撃を避けるタキラ。そしてものっそい揺さぶられている俺。

知っているかい?世の中には慣性の法則というものがありましてね、つきまして気分はケータイのストラップ。吐きそう。


「・・・あっ」

「へあ?」


吐き気を堪えていたら触手を避ける勢いでタキラの腕からすっぽぬける。

ポーンと俺の体が宙を舞う・・・とか言ってる場合じゃない!おーちーるーーー!地面と抱擁しちゃう!ストラップから潰れたトマトに転職しちゃう!


「っと! させねえぞ!?」


落ちる途中で真に受け止められた。トマトは免れた。

滑り落ちてしまわないよう真の体にしっかりとしがみついてようやくひと息つけた。


「た、助かったよ真・・・」

「ったく、無茶してんじゃねえよ!」


怒られた。いやでも無茶をしている自覚はあるので素直に反省しよう。


「ご、ごめんなさい」

「ふん、もう無茶すんじゃねえぞ」


許された。思ったよりイージーに許された。

許されたついでに真の背中に移動しておこう。正面で向き合うのは会話する上では正しいのかもしれないがぶっちゃけ掴まりづらいし。


「よそ見している余裕があるのかね?」


許されてホッとしていたらそこにまた触手が!なんだこのKY!

が、そこは武闘派天使というべきか真は手にした槍で次々と触手を切り落としていく。だけどもさすがに数が多いらしく顔に余裕はない。

ついでにものっそい動いているので掴まっている俺も余裕はない。


「一旦下がるぞ。 ここじゃあの野郎の思うつぼだからな」

「う、うん。 でもだいじょぶなん?」

「安心しな。 お前は俺が守ってやるよ」


やだ、頼もしい・・・。俺が女の子ならきっと胸キュンとかしてるだろう。

と、そこに横から来てた触手を斬り飛ばしたタキラが食って掛かった。


「ちょっと! 私もいるんだけど!?」

「ちっ、てめえもいたな。 まあいい、てめえも和樹を守るんだろ? なら共闘といこうじゃねえか」

「はん! 本当ならあんたら天使の助けなんていらないんだけど、カズのためだもの。 やってあげるわ!」


わーい、天使と悪魔が守ってくれるぞー!いかん、これだけ聞くとどうにも厨二病臭がする。

でもそんなことは言ってられないのである。なにせここはまだ敵陣の中。回りにはたくさんの触手。R指定をかけるべき。

そんな状況だからかあまりの触手の数に二人でも抑えきれない。刃から逃れた触手が迫ってくる。キモい!モザイクはよ。


だがしかし、触手が俺たちを捕まえることはなかった。


何故なら触手が俺たちを捕まえる瞬間、どこからか飛んできた黒い光によって吹き飛ばされたからだ。


「今のは!?」

「お? これは・・・」


光の飛んできた先を見るとそこには軍服っぽいのを着た人の姿が。いや人じゃねえ悪魔っぽい翼あるから悪魔だ。

それに気づいたのとほぼ同時に建物の影から次々と悪魔たちが姿を現す。さらにゼミウルの後ろ側にも黒い光と共に悪魔達が召喚されてきている。

新しく来た悪魔たちはゼミウル配下みたいに使い魔タイプではなくほとんどが人っぽい姿で悪魔っぽい翼が付いている。悪人面してないしビジュアル的に味方のやつ。

突然のことに驚く天使たちを余所に新しく来た悪魔たちは彼らではなくゼミウルたちに武器を向ける。そして容赦なく攻撃を始めた。いいぞーもっとやれ。


「どういうことだ? なぜあいつらはゼミウルの野郎を攻撃してやがる?」

「あ、ごめんこれ俺のせいだったり」

「はぁ!? どういうことだ!?」


また怒られた。これ以上怒られる前に説明しておこう。


「いやほら、あいつ悪魔からも嫌われてるっぽいし理由さえあればボコるのに手を貸してくれるんじゃないかとですね・・・」

「それであいつらまとめて呼んだってか!?」

「コネもあったしね。 ほら俺の隣に」

「私がママに紹介したのよ」


お忘れかもしれないがタキラはエリートである。そんでもってエリートというのは本人の力もあるが同様に家の力も凄かったりするものだ。

そんなわけで実はここに来る前にタキラのお母さんに会ってきたのだ。ついでにご飯もいただいた。そのせいでこっちに来るのが夕方になってしまったけどなんやかんや間に合ったのでセーフ。

そういうわけでタキラのお母さん反ゼミウル勢力を集めてもらったというわけでこの悪魔たちは味方である。思ったよりいっぱいいた。

魔界に残ってるゼミウル派を黙らせたら精鋭を送ってくれるって話だったから間に合うか心配だったけど問題なかったようだ。


「だからってお前は! 魔界に行くとか普通ならどんだけ危険かわかってんのか!?」

「えっ、ごめん知らなかった・・・でも真や桜井たちのために少しでも何かしたくって」

「・・・っ! し、しかたねえ奴だな。 次からは勝手な真似はすんじゃねえぞ?」


また許された。いやゲロ甘かよ。もうちょっと俺に厳しくてもいいのよ?あと次とかいらない。今回のでお腹いっぱいだからファンタジーはそっちでやって。いやダメだ俺の彼女はファンタジーだ。


そんなことやってるうちにどうにか桜井たちが陣取るエリアの近くまで来ていた。

前方に触手が進路を塞ぐように出てきたけど俺たちに触れるすんでのところで生徒会長やショタ先輩にサイコパス、そして味方の悪魔の攻撃によって蹴散らされ道が開ける。

そこに真は飛び込んだ。そのままの勢いで桜井たちの元へ飛ぶ。


「少しばかり荒っぽい着地になるぞ! 捕まってろよ!」

「えっ・・・あ」


予想以上の勢いだったせいで着地途中で真の腕からすっぽぬけて地面にダイブした。も、もうちょっと早く言っておくんなまし・・・。それとも勝手な行動した罰かなこれは?


「ちょっと、なに人の彼氏手荒に扱ってるのよ! もっと割れ物を扱うように! 花を愛でるように優しくしなさいよ!」

「わざとじゃねえよ! つかこんな状況じゃなかったら言われなくてもやってるに決まってんだろ!」

「ちょっと君らケンカする前に俺に駆け寄るとかそういうことすべきじゃないかなあ?」


そんな感じに無事(?)着陸した俺たちの所に桜井たちが走ってきた。


「槇原っ! お前なんでこんな無茶を!」

「やー桜井、元気かい? 俺は顔がとても痛い」

「ふざけないでくれ! お前を巻き込みたくなくて俺は!」


いやまじめに顔痛いのだけど。


「あーうん、そういうのいいから。 はいこれお届け物ねえ」

「え、おいこれって・・・」


お届け物とはもちろんピュアクリスタルである。ちょっと使っちゃったのは許してほしい。


「桜井のでしょ? それ。 ひょんな偶然で手にいれたから持ってきちゃった。 もしかしたら必要になるかもって」

「・・・ああ。 ありがとう」


桜井はなんか決意した顔で頷いている。なに決意したかは知らんが当初の目的は達成である。


「お話はお済みですの?」


知らない人の声が割って入ってきた。いやたぶん人じゃないけど。

俺たちの背後から歩いてきたのは無駄に露出がある軍服を来た女性。その背にはもちろん悪魔っぽい翼がある。というかこの悪魔さん最初にゼミウルにレーザーぶっぱした悪魔じゃん。

彼女は微妙に警戒してる天使たちの前に立つと軽く頭を下げた。


「ボクは此度の援軍の指揮官を任されましたラフィールですの。 そこにおりますお嬢、タキラ様の母君の名代として貴殿方天使の手助け、およびゼミウルをぶっ飛ばすために参りましたの」


そういえばタキラのお母さんに会った時後ろにいた気がする。


「悪魔がなんで天使の手助けを・・・?」

「あら、別に貴殿方のためではありませんの。 今回のこれは婿様の願いあってのことですのでその事お忘れなきよう」


あ、婿様って俺?早いねえ内定。

天使どもがすごい目でこっち見てくるけど気にしない気にしない。

ともかく塩対応ではあるけど無事に天使と共同戦線を張ってくれるらしい。というか今でも他の悪魔さんたちはゼミウルの足止めをしてくれている。


「・・・みんな、ありがとう」


さて、戦力も整ったことだしどう攻めんべ。という空気になったとき桜井が口を開いた。


「俺、正直怖かったんだ。 いきなり大天使の生まれかわりって言われたり悪魔が襲ってきたりして・・・どんどん当たり前だったことがなくなっていくのが。 だからどうすればいいのかわからなくって、なにもできなかった・・・」


桜井も大変だったんだなあ。

ところで喋る度にクリスタルの光が強くなっているんだけどなにあれ。音声認識?


「でもそんな俺をみんなは助けてくれた。 守ってくれた。 なんの力もない槇原だって危険な目にあってまで助けに来てくれた」


褒めるなよ、照れる。


「だから俺ももう、逃げない!」


めっちゃ光り始めたピュアクリスタルを桜井が握りしめた瞬間、彼の背中から羽が生えた。

え、お前は前世天使なだけで今はただの人間とか言ってなかったっけ?

それはあれかな?前世インストール的な?


「わあ、なんか大変なことになっちゃったぞお?」


ああ、一瞬目を離した隙に服装まで変わって・・・なにその服めっちゃキラキラしてる。あと服というかほぼ布じゃん。豪華な布。


「あれが、大天使・・・」

「なんつー力だ・・・同じ天使のはずなのにビリビリきやがる」

「力に衰え、なし。 ・・・感無量」


天使どもがなんか言ってる。


「は、話には聞いてたけどとんでもない力ね・・・え?待ってこれ悪魔勝てるの? 普通に負けない? 絶滅しない?」

「だ、大丈夫ですのお嬢。 ボクらの精鋭も負けてはないですの・・・たぶん」


タキラとラフィールさんまで・・・え、えーとこれは俺もなんか言うべき?でも俺ただの一般市民だからみんなが言う力なんて感じないし・・・と、ともかくそれっぽいことを!


「後光がすごいですね」


ただの感想だこれ!

だ、駄目だ。もっとそれっぽいことを・・・。

しかしそんなことを考えている間にも事態は動いていく。ぶっちゃけ桜井が元の天使の力を取り戻してパーフェクト桜井になった時点ですでに巻き展開入ってるんじゃなかろうか。


「グアアアアア! こ、この私はがぁぁぁぁぁぉぁ!?」

「す、すごい・・・あのゼミウルを一撃で・・・?」


案の定だよ!どっかから出した剣を桜井が振ったらあっという間にこの様だよ!

なんか桜井と剣刺さったままのゼミウルが喋ってるみたいだけどゼミウルの身体キラキラ光りながら消えてってるしこれもう終わりでしょ。

そう思ったら一気に疲れが出てきた。タキラと一緒にその場に座り込む。


「あーおわったあー」

「そうねー、さすがに疲れちゃったわ・・・」

「お嬢、婿様。お疲れ様ですの」

「ラフィールさんもねえ」


天使達が歓声をあげる横で静かに労をねぎらいあう。

そうしてるとゼミウルの消滅を見届けた桜井が戻ってきた。あ、まだパーフェクト桜井なんだ。


「ゼミウルは倒した・・・これで、全部元通りなんだよな?」


あーそうだそうだ。すべての元凶は倒したんだしこれからは日常編オンリーだよねきっと。

だけど桜井の言葉に生徒会長は首を横に振った。え、ちゃうのん?


「否定、・・・修正が必要」

「・・・どういうことだよ」

「さすがに影響を与えすぎたってことさ。 本来なら天界や魔界はこの世界に必要以上に関わっちゃいけないからな。 だから『最初から関わらなかった』ことにするのさ」

「・・・あ、またそのパターン?」

「それなんだけどねー? 今回のは規模が違うっていうかねぇー世界の根本から元に戻すというかーゼミウルの影響を全部無くすから槇原くんだけ大丈夫ってのはないんじゃないかなー」


そっか・・・まあ、前回のもなんで影響なかったかわからんままだしねえ。

でも、ゼミウルに関わる記憶を全部消すっていうことはタキラのことも忘れちゃうわけで・・・。


「タキラ・・・」

「カズ・・・私・・・」


タキラは泣きそうだ。俺も泣きそう。せっかく恋人ができたのにお別れとか・・・。


「また、こっちに来れるの?」

「・・・すぐには無理ね、落ち着いたら来れるようになるはずだけど・・・」

「だったらさあ、俺待ってるよ」

「え?」


まさか諦めるとでも思った?はは、まさか。


「またタキラがこっち来たらさあ、俺に会いに来て。 そしたら俺はまた恋をするから。 きっとタキラのこと好きになるからね。 だから会いに来て」

「・・・うん! ぜったいに、ぜったいに会いに来るから!」


そこで耐えきれなくなったのかタキラの目から大粒の涙が零れる。涙を隠すようにそっぽ向いてしまった彼女の肩をラフィールさんが慰めるように抱き締めた。

そんな彼女たちから目を逸らした俺の前に真が立った。


「わりいな和樹、俺もお別れだ」

「え、真も? 真はこっちに人間として生まれたんじゃ・・・?」

「こうして天使として覚醒しちまったからな。 俺だけ何事もなくってわけにはいかねえんだとよ」


・・・まじかー。寂しいなあ。

いやちょっとまって、真いなくなったら俺ボッチにならない?それどころか幼少期からボッチだったことにならない?つらたん。

悲しい予感から目をそらすように桜井の方をみれば桜井も同じことを聞かされたのか他の天使たちとの別れを惜しんでいた。

というかノーマル桜井に戻ってるね。いつの間に。


「さて、そろそろお別れだ」


うおっ、なんだかまぶたが重くなってきた。ねむい。これ目が覚めたら全部忘れてるパターンでしょ。

うあー、寝る前に言うこと言っとかんとなあ。


「お前も、真も会いに来てよ? 約束だからねえ」

「ああ、もちろんだ。・・・またな、親友」


その真の声を最後に俺の意識は途切れた。

というわけで本編はこれにて終了です。

あとはエピローグですのでなるべく早く書くよう頑張ります。

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