悪魔と戦ってみた話
思ったより長くなってしまったので分けました。
今回はいちゃいちゃとかは少ないです。
ゼミウルの魔法に呑み込まれたタキラはゼミウル配下の片割れ、イルデと対峙していた。
共に呑み込まれた和樹はというとこの空間に呑み込まれると同時に結晶のような繭に包まれてしまい、意識があるかどうかも定かではない。
それはタキラに対しての人質のようなものであった。
「いいかげん諦めたらどうでしょうか。 これ以上の抵抗は無駄ですよ?」
勝ち誇った笑みを浮かべたイルデは魔力を集めた手をタキラに向ける。それに対してタキラは口の中の血を吐き捨てると嘲り混じりの笑みを返した。
「散々カズを盾にしてるくせによく言うじゃない・・・あれでしょ? 真っ向から戦ったら負けちゃうからそんな手ばっかり使うのね。 ほんと情けないったらありゃしないわ」
「口の減らない女ですね・・・」
敵から目を離さずにタキラは考える。和樹を救う方法を。しかし名案が浮かぶ前にイルデの魔法が飛んできて思考は中断させられてしまう。
鎌を振るい魔法を切り払いながらタキラはチャンスを待つのだった。
一方、その時和樹はーーー。
「ん・・・あれ?」
気がつくとなんか街中にいた。
「あれ? 俺たしか触手に巻き付かれてえ・・・?」
そうだ、たしかそんなエロゲシーンのような目にあったんだった。え?ということはここ触手の中!?
そのわりにはなんか普通というか・・・いやなんで触手の中に街あるの?ショクシュシティ?それとも夢?
と、とりあえず人はいるみたいだしちょっと歩いてみようかな?
街の中は自分が知っているそれと変わりないものだった。
歩いているのも人間っぽいし変なところは・・・いやまてよく見たら女の人いねえ。変なところ見っけたわ。
そんな俺の前に1人の男が立ち塞がった。知らない人である。
「そこのお前、俺とランデブーしないかい?」
「・・・・変! 態! だぁぁぁぁぁぁ!!!?」
その男は無駄にイケメンでなぜか半裸だった。
タキラは和樹が相手の手中にある以上下手に攻撃することは出来ずイルデの攻撃を耐え忍ぶことしかできなかった。
「冗談じゃないわよ・・・せっかくこんな世界でステキな彼氏ゲットしたのに・・・!」
そうしている間にもタキラの身体には少しずつ傷が増えていく。どうすることもできずほんの少し諦めそうになった時、どこからかパキン、と音がした。
「だから無理っつってるでしょうがぁ!」
そして次の瞬間、結晶が粉々に割れ、中から和樹が飛び出してきた。
酷い悪夢を見て文字通り飛び起きてしまった。うう、精神的にひどい目にあった・・・。
ぶっちゃけ起きたあともなんか悪夢みたいな世界だけどまあ、さっきまでのよりはマシである。
「カズ! 無事だったのね!」
「な、どうやって抜け出したのですか・・・!? 至高の夢に捕らわれて目覚めることなど!」
タキラの声と知らん声が聞こえて顔を上げるとそこにはなんか前に見たことがあるような気がする男悪魔。たしかゼミウルの腰巾着的なアレだったような?
「ということはお前か悪夢を見せたのはぁ・・・性癖の噛み合わない淫夢はただの地獄なんだぞ・・・!」
正気度と精神力がガリガリ削れてしまったじゃないかよ!発狂するかと思ったわ!SAN値チェック!
って、タキラボロボロじゃん!大丈夫?
「おのれぇ、タキラに怪我させたのもお前かあ・・・えーと、誰だっけ。 見たことはある」
「ああ、自己紹介はまだでしたね。 私はゼミウル様の忠実なる右腕、イルデ。 君には驚かされましたよ、まさかただの人間が私の作った至高の夢から覚めるとは」
あ、そんな名前なのかこのネームドモブ。
それよかノンケが半裸の男やゴツめの男衆に迫られる夢見たら目覚めるに決まってるだろ。なに言ってんだ。
「至高の夢ぇ? いやいや俺が異性愛者なの差し引いてもモロ現実逃避的なやつにしか見えないもの至高とか言われても」
あとシチュエーションが雑とかツッコミ所はたくさんある。
「第一タキラいるのにそっち行くわけないでしょうに」
「なぜです、何故君はその女に味方するのですか。 女なぞ男を弄んでは捨てる悪鬼ではないですか」
「お前も昔なんか嫌なことあったの?」
好いた女に十股くらいかけられたの?
「その女に弱みでも握られているとしか考えられません。 でなければ男が女になぞ・・・!」
「あー、勘違いしてるみたいだから言っとくけど俺、生まれつき異性愛者だからね? 君の上司にはもう言ったけど俺は女の子大好きな人だからね?」
そう言うとイルデは心底理解できないって感じの顔をした。解せぬ。
「異性愛者? 訳がわからない! 女の何があなたをそこまで惹き付けるのですか!?」
俺としてはお前さんの女に対しての異様なまでの拒否感がわからぬ。
しかし問われたのならば答えねばなるまいね。その叫びに俺は少し考えて
「おっぱい・・・ですかね」
答えを出した。
「・・・は?」
「胸です。 大きさに優劣はないと思うけど個人的な好みとしては大きいほうがいい。 可能なら揉みたい」
「ね、ねえカズ。 あたしのでよかったら・・・」
「後でね」
顔を真っ赤にして大きく実った胸を差し出してくるタキラはとても可愛いしとても揉みしだきたいが今はその時じゃない。
「しょせん胸など脂肪の塊に過ぎないではないですか! そんなものに惑わされるとは愚かしい!」
「主張が貧乳の人みたい。 それにそんなこと言い出したら極論我らタンパク質の塊なんですけれども? というかマザコンが母性の象徴に惹かれて何が悪いのさ」
「・・・つまりお義母さまといっしょに迫れば・・・?」
「いや、流石に近親はちょっと・・・」
そっち方面に進むのは勘弁願いたい。お母さんも俺のことは普通に溺愛してるだけだろうし。・・・ん?溺愛は普通かな?
そんなことやってたら突然イルデがオーラを纏った。なにそれ格好いい。バトル漫画みたい。
「いつまでも訳のわからないことを! そのように迷い言を吐き続けるのならキサマも必要ありません! いや、このままキサマごとすべての女を滅ぼしてくれます!」
「こいつもサイコパスかよお! あとそんなんしたら人口が大変なことになる!」
これ放置したら人間滅ぶやつだ!正直話のスケールが大きくなって付いていけないけど世界の危機である。発端が同性愛であることに目をつぶればたぶん盛り上がりどころ!
いや当事者になっちゃったからには盛り上がってる場合じゃないんですけどもね!
「カズ、下がって! あたしが・・・!」
「いやタキラボロボロじゃないのさ! ここは俺に任せて、ちょっとは時間稼いでみせるから!」
鞄から取り出した防犯グッズの警棒を握りしめイルデに向かっていく。そんな俺を眺めながらイルデは余裕たっぷりに腕組みして待ち構えている。
そのおかげで攻撃されることなく何事もなく距離が縮まっていきーーー
「初手目潰し」
「ギャアァァァァァ!?」
警棒をポイして催涙スプレーをぶっぱした。
「キ、キサマァ・・・ナニをしたぁ!?」
「デバフ」
至近距離での催涙スプレーは辛かろう。唐辛子エキス配合とか書いてあるやつだから威力は折り紙つきだ。まともに喰らえば視覚は奪われ思わずキャラも壊れる。
「グゥゥッ! この程度でこの私が・・・ギャアッ!?」
「おかわりをどうぞ」
ガードしないでまた顔をこっちに向けるとか正気かよ。少しは学習しようよ悪魔さん。
「ナ、メ、るなぁッ!」
「わたっ!」
あいたたた、腕振り回すとか危ないなぁ!催涙スプレー落としちゃったじゃないか。拾わなきゃ・・・ぐっ!?
服の首元にイルデの手がかかりそのまま持ち上げられる。服が伸びちゃう!
「クハハッ小癪な人間がァ! 目を潰した程度で調子に乗らないでほしいですネェ! 我ら悪魔はその気になればキサマら人間の何倍もの聴力を得られるのですよ! よって視力を奪おうと無駄・・・」
「・・・じゃあこういうの効きますよね?」
「ギャハァ!?」
耳元で防犯ブザーを引き抜く攻撃!鼓膜は破砕する!
自慢の聴力のおかげでこれには堪えたのか服から手を離す。ちょっと苦しかった・・・。
だけどイルデにもダメージを与えることができたらしくふらついている。
ここは賭けに出るべきところ!思いきってイルデの前に立つ!
「お母さん直伝!」
これは俺が持つ痴漢撃退グッズを渡された時にお母さんから教わったもの。もし変な人に絡まれたら使いなさいと言われてたいわば必殺技。狙うは男性共通の弱点。
「痴漢撃退キィィィック!!!!」
思いっきり足を振り上げ股間を蹴り抜いた。
あっ、嫌な感触・・・。
「イギッ・・・!?」
イルデは股間を押さえて倒れた。さしもの悪魔も急所への攻撃には弱かったらしい。
というかびくんびくんと変な震え方してる。こわい。
とか思ってたら突然イルデが顔を上げ、そのまま飛び起きた。なんと、もう股間は大丈夫なのか。
「くそがくそがくそがくそがクソがクソがクソがクソガァァァァ! 絶対にブチ殺してやるぞニンゲンんんんッ!」
さすがに怒らせ過ぎたっぽい。やばい。
イルデの手に炎が集まり放たれようとしたとき
「私の彼氏に・・・手を出すなっつーのよ!」
いつの間にか背後に回り込んでいたタキラがイルデの首もとに鎌を差し込み、そのまま首を刈り取った。えっ、グロい。
首がなくなったイルデ(グロバージョン)はそのまま灰みたいに崩れさっていった。死体が残らなくてよかったと言わざるえない。
ともかくなんとかなってよかった・・・。まさかこんな目にあうのは想定外だったからなあ。油断してたわ。
タキラと二人してその場に座り込む。
「ひとまずは助かったけど・・・ねえ、これからどうするの? 私なんかの力じゃここから出れないわよ?」
「大丈夫だと思うよ? これあるし、ほら」
鞄の中からとっておきの切り札を取り出す。
「それ私が盗ってきたクリスタル!? どういうことなの? クリスタルは持ってきてなかったんじゃ」
「ふふん、人間は嘘をつく生き物だかんね。 こと嘘をつくことにおいては人間の右に出るものはいないのさあ!」
天使は嘘つかないし悪魔も契約やら決まりとかで嘘をつけない。よって人間が嘘つきランキング一位を独占である。
「で、それどうやって使うのよ?」
「えーと、こういう時のセオリーと言えば」
手の中のピュアクリスタルを見る。説明書付いてなかったしぶっちゃけ使い方なんてわからんけど・・・こんな重要アイテムが手元にあるならやることは一つしかない。映画でもやってた。
「こうでしょ」
それっぽくピュアクリスタルを掲げた瞬間、クリスタルから光が迸り視界を真っ白に染めた。
次で本編終わらせてエピローグ書いて終わりにする予定です。
予定通りに行くといいな・・・。
あとサトムさんがこの小説の二次創作を書いてくださいました!
興味がある人は是非読んでくださいな。




