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俺とシロ(second)  作者: マネキネコ


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64. 出し物

 俺は参道脇(さんどうわき)でボンボン (水風船) を作りながら、何やら準備(じゅんび)が進む境内の方を見守っていた。


 『只今(ただいま)戻りました。主様(ぬしさま)


 念話を飛ばしてきたのはヤカンだ。


 こんな人が多いところにキツネが出てきたらふつうは騒ぎになりそうだが、


 魔力操作の訓練をしてない一般人にヤカンを見ることはできないので特に問題はない。


 時計を見ると午後の4時すぎ。


 ダンジョンに(もぐ)っていた剛志(つよし)さんらが帰ってきたようである。


 おそらく今は汗を流しに地下の温泉浴場(おんせんよくじょう)へ行っているのだろう。


 「ヤカンお疲れさん! 大変だったな」


 俺はイカ焼きを皿に入れヤカンのまえに出してやった。


 「これはまた、なんとも……」


 口のまわりをタレで汚しながらヤカンは(うま)そうにイカ焼きを食べている。


 「ワン!」


 「ウニャン!」


 そこへ寄ってきたのは俺のうしろで寝転がっていたシロちゃん。いつの間にかチャトも隣に並んでいる。


 「なんだぁー、お前たちもイカ焼きがほしいのか? シロはさっき食べただろう!」


 そんなことを言いながらも、シロにもちゃんとイカ焼きを出してあげた。


 ボンボン釣りで(かせ)いだお金は、こうしてそのほとんどが【イカ焼き】へ消えていったのである。


 「これから夜になるから周囲の見回りはお前たちも頼むぞ!」


 「ワン!」


 「コン!」


 「ウニャン!」


 そんな3匹の頭を()でながら境内の方へ目をむけると。


 ……ん、んん。 あれって(しげる)さんなのか?


 そこには太刀(たち)()いた鎧武者(よろいむしゃ)が腕を組んで立っていた。


 黒い甲冑(かっちゅう)を身につけ、(かぶと)の下には面頬(めんぼう)までつけているのでそれが誰なのかはわからない。


 (面頬:甲冑に付属した顔面を守るための防具)


 あっ、でもあっちの神主姿(かんぬしすがた)の人が茂さんだよな。


 するとこっちの鎧武者は……? あぁ――っ、フウガだよ。


 あの姿でなにかパフォーマンスをはじめるようだ。






 先程(さきほど)準備していた長テーブルの上には皿が横に7つ並んでおり、皿の上には一つずつ丸いメロンが乗っている。


 まぁメロンといっても、そう高い部類のものではなさそうだけど。


 それにしたって……、あの黒子は逆に目立っているよな。


 黒布(くろぬの)で顔を(おお)った、いわゆる黒子(くろこ)と呼ばれる者たちがその準備を粛々(しゅくしゅく)とおこなっているのだが、周りからはおもいっきり目立っていた。


 ………………


 準備が終わり床几(しょうぎ)に座っていた鎧武者が立ち上がると、


 周りは水を打ったように静まりかえった。


 そして長テーブルに近づいていった鎧武者は、太刀柄(たちづか)に手をおき腰を落として半身に(かま)える。


 居合(いあい)の構えだ。


 そして次の瞬間、


 ――ええいっ!


 気合一閃(いっせん)! 腰の太刀をスパっと水平に()いだ。


 ――オォォォー!!


 周りからはどよめきが上がった。


 すると何処(どこ)に居たのか黒子があらわれ、切れた半月状のメロンを再びきれいに並べていく。


 するとフウガは太刀を上段(じょうだん)に構え、 今度は目にも()まらぬ速技で(たて)に4等分切りそろえていった。


 あれだけ太刀を振りまわして、下に()いてある皿が一枚も割れてないというのはまさに驚異的(きょういてき)だ。


 そして最後のメロンを切りおわり、(ふところ)から出した懐紙(かいし)刀身(とうしん)(ぬぐ)うと、フウガはその場でくるりとひと回り、太刀を(さや)に納め観衆(かんしゅう)に向け一礼をした。(桃太郎侍か!)


 ―――オォォォー!!


 再びどよめきが起こり()き上がる観衆。そして鳴りやまぬ拍手(はくしゅ)


 出し物の方はどうやら上手くいったようだ。


 そしてなにより子供たちが嬉しそうにメロンに(かじ)りついていた。


 ……このような感じで手裏剣(しゅりけん)打ち体験や、裏の駐車場でのフリーマーケットなど、様々なイベントを(はさ)みながらおこなわれた例大祭(れいたいさい)は大きなトラブルもなく無事に(まく)を下ろした。





     ▽





 今年の例大祭は近年(まれ)に見る人出だったらしく、茂さんには大いに感謝された。


 まあ、日頃(ひごろ)からお世話になっているのだから当然のことをしたまで。


 それにみんなで大騒ぎして楽しかったし。やっぱり日本の【祭り】って最高だよね。


 さて、健太郎(けんたろう)を含むパワレベ組はどうなったかというと。


 健太郎がLv.11、剛志さんがLv.8、久実さんがLv.7、(かえで)はなんとLv.9。それぞれが確りレベルアップできたとおもう。


 ただ魔力操作(まりょくそうさ)のレベルはというと剛志さん一家は一律でレベル2。魔法を使うにはもうちょっと時間がかかりそうだ。


 ヤカンも頑張(がんば)っていっるぞ。現在Lv.5と順調に伸びてきている。


 そうなると茉莉香(まりか)だけが出遅れてしまった感じになるのだが。


 サーメクス (異世界) に連れて行くにしても学校を勝手に休ませる訳にはいかないし、基礎的(きそてき)なことならこちらに居ても十分できる。


 まぁ次のダンジョン覚醒(かくせい)までは、まだ40日以上ある。


 家も近いと言っていたし、学校終わっての部活動(ぶかつどう)みたいにちょこちょこ(きた)えていけば大丈夫だろう。


 ただし魔力操作の訓練だけは毎日しっかりやってもらうけどな。






 そしてレベリングしながら3日が過ぎた。


 茉莉香もようやくLv.2になった。


 東京から来ている本条家の人たちも、剛志さんがLv.9、久実さんがLv.8、楓がLv.10とお三方共にレベルアップを果たしていた。


 この短期間によく集中して頑張ったんじゃないかな。


 そして健太郎なんだが……、


 気を抜いていたのか大きなポカをやらかしてしまったのだ。(ポカ:うっかりミス)


 本日、10階層(かいそう)のボスであるゴブリンキングに単独で果敢(かかん)(いど)み見事勝利をもぎ取ったのだ。さすがは勇者(ゆうしゃ)である。


 と、ボスを倒したまでは良かったのだが、転移台座(てんいだいざ)(ぎょく)に触れ階層を登録する際、あろうことか【ダンジョン前広場】へ転移してしまったのだ。


 「あっ、やっべぇぞ!」


 すぐさま反対側に設置してある転移台座でダンジョンへ戻ったらしいが、おそらく目撃(もくげき)されているだろうな。


 今、ダンジョン前広場の周りには自衛隊がずらりとキャンプを張っており、おそらくビデオカメラも設置してあるはずだからバレるのは時間の問題である。


 それにヤツの装備(そうび)はモンハンばりの革鎧(かわよろい)で、本人たっての希望で色は真っ赤なのだ。


 しかも革ヘルムの上には(ぼう)隊長機のように(つの)まで付けていた。


 要するに、とても目立つということだ。


 「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを」


 いや、そこは認めような。


 ……これに関しては、また後ほど対応を考えたいとおもう。






 中秋(ちゅうしゅう)名月(めいげつ)は昨日だったが、今宵(こよい)の月も十分に満ちている。


 転移するには問題はないだろう。


 今回の帰省(きしょう)に際してのメンバーは、俺・シロ・ヤカン・メアリー・マリアベル・チャト・キロ、そして慶子(けいこ)である。


 なぜ慶子がと思うだろうが。


 なんでも、こちらで集めた魔石を売ってポーションやいろんな魔道具を買い付けに行くらしいのだ。


 異世界貿易(いせかいぼうえき)とは抜け目がない。さすが慶子である。


 俺は、また10日程のんびりとして来ようとおもう。


 天気も良さそうなので今夜向こう (サーメクス) へ渡ることにした。


 茉莉香にはレベルの低いうちはあまり無理はしないようにと、


 それから、この神社は監視(かんし)(きび)しくなるかもしれないので日頃の行動にも十分に気を配るよう注意を(うなが)した。


 ……いやマジで言ってるからね。


 気を抜いてるとホイって3mぐらいジャンプしていたりするし、ジョギングしながら自転車を楽々追い抜いてみたりと、”そういった人間” はまだこちらの世界では認知(にんち)されていないのだ。


 だから『とにかく目立つことは(ひか)えるように』とみんなに念を押して、俺は【トラベル!】を発動させた。







9月26日 (土曜日)  

次の満月は9月27日

ダンジョン覚醒まで40日



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挿絵(By みてみん)
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