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げんとげん  作者: 長月十伍
Ⅷ;幻滅 と 元凶
223/300

Track.8-3「ぶっぶー、はっずれー」

 ごくり――圧に、心は喉を鳴らして唾を飲み込んだ。

 先程――景が心に身体を正対させた時からずっと、もはや視認できるレベルと勘違いできるほどに夥しい()()の渦に曝されている。


「……私たちが通話している回線は社内の多くの人が聞いています。それでも、その全部を漏らさず聞き入れているのはほんの一握りです。しかも、回線を特定されないように複数を使いまわして聞いていたのは一人しかいません」

「どうしてそれが俺っちの仕業だって判ったのか、そっちのが知りたいんだけど?」

「だってあなた――いつも同じ使い回しの繰り返しじゃないですか。私からしたら、そんなの自分を見つけてほしいって言ってるこじれたかまってちゃんみたいなもんですよ」

「へぇ――――」


 圧が強くなる。もはや景の周囲には、陽炎のように揺らめく荒れた霊銀(ミスリル)の奔流が渦巻いていた。


『鹿取、無理すんな!玉屋、OSオペレーションスフィアの用意は!?』

『準備完了、いつでもいけますっ!』

『おっしゃ、お前ら行くぞ――“転移”(シフト)!!』


 屋上に満ちる不穏な大気に、極彩色の渦が現れては割れた。

 空いた空間の裂け目から出てきたのは航を筆頭とする調査チームFLOWと、そして奏汰、葛乃、リリィの全6人。それが景を取り囲むように現れた。


「へぇ――7人なら勝てるとか思ってくれてんだ。()()()()()()()()()()()()


 べろりと舌舐めずりをして、その舌の蠢きのように周囲を()めつけた景は、羽織っていたミリタリージャケットを脱いで鍛え抜かれた肉体を顕わにした。


 紋様だ。

 夥しく肉体に刻まれた、民族文化の刺青(トライバル)に似た霊銀(ミスリル)の紋様。

 それが淡く発光しながら渦巻き、異様な雰囲気を強めている。


「ヨモさん、あの人って大神さんの従兄なんだっけ?」

「ああ、そうだよ――俺っち大神景は、クローマーク社最大戦力である調査チームWOLF(ウルフ)のリーダー大神太雅の従兄だ」

「オレ、ヨモさんに聞いたんだけどなぁ……」


 苦笑いを浮かべた茜は前傾姿勢を取る。いつもの前羽の構えではなく、攻撃に重きを置いた構えだ。


「玉屋、兵装の転送までどのくらいだ?」

『今です!』


 無線式インカムから勢いづいた声が聞こえたと同時に、芽衣、茜、心の周囲に極彩色の輝きが生まれ、その身体を包んでいく。霧のようにそれが晴れると、三者は三様の異なる装備を身に着けていた。


 森瀬芽衣は右手にFLOW専用装備である直剣型甲種兵装・唐菖蒲(グラジオラス)を握り、左手には籠手型丙種兵装・(カスミ)、そして身体を包むのは黒塗りの外套(コート)型乙種兵装・(アラシ)


 甲種兵装を持たない茜は外套(コート)型乙種兵装・(ソヨギ)を、同様に甲種兵装を持たない心は外套(コート)型乙種兵装・(ナギ)を身に纏った。細かな意匠(デザイン)は異なるが、それらは全て肩から袖口にかけてと背中を縦に貫く四本の白いラインが特徴的だ。


“固有座標域、展開”(ボックス・オープン)――」


 航も自らの固有座標域より取り出した自らの兵装――FLOW専用太刀型甲種兵装・紫陽花(アジサイ)を構え、同じく外套(コート)型乙種兵装・(ナビキ)に袖を通した。


 奏汰たちも同様に、自らの武装を解放して臨戦態勢を整える。

 奏汰は白革の手袋型の術具を嵌め、葛乃は腰から抜いた音叉型の術具を握り、リリィは首から下げた方位磁針型の術具に霊銀(ミスリル)を通わせる。


「……おっけぃ、準備は出来たかい?」

「いちいち待ってたのか?気を使わせて悪かったな」

「そりゃそうだろーよ。言い訳なんてする余地も与えずに叩き潰そうってんだから――全力で来てくんねーと」


 ヴォウッ――大気を揺るがす音と共に、煌々と燃える炎が景の右腕を包み込んだ。

 同時に、対する左腕には霜が降り、相反する極低温が左腕の周囲を白ませている。


「……双術士(デュアルマンサー)

「ぶっぶー、はっずれー」


 呟いた芽衣の言葉を棄却した景は、両腕を振るって火球と氷球を浮かび上がらせると、今度は右腕に迅雷を、左腕には黒い力場を形成する。それらもまた、雷球と重力球となって彼の周囲を衛星のように旋回し始めた。


「――四つ!?」


 奏汰は顔を顰めて声を荒げた。


「何だよ、ヨモさん。俺っちのことは教えて無い系?そりゃ無いっしょ」


 基本的に、魔術士は瞳術や躰術などの霊基配列を介さずに行使する魔術を除き、一人につき一つの系統を修めるのが一般的だ。

 本来同じ系統である炎術と氷術の二つを修める双術士(デュアルマンサー)は比較的少なくないが、それでも高温と低温という真逆のベクトルを同時に扱うのは至難であり。

 また、気体と液体との両方を得意とする流術士(フルィドマンサー)もいないでは無いが、かなり困難なことをやってのけているのである。


 そもそもヒトの霊基配列というのは、ふたつ以上の系統の魔術を扱えるようには出来ていない。

 かじるだけならまだしも、双術士(デュアルマンサー)や気体と液体を統べる流術士(フルィドマンサー)がいるのは、あくまでもそれが“ひとつの系統の別側面を操っている”からだ。


 だから大神景のように、炎術と氷術、そして光術と動術の四つを併用しているというのは、常軌を逸しているにも程があることなのだ。


「――あと、言っておくけど、四つだけじゃないかんな?」


 そう――そして景は、この四つの術系統の他に、流術、方術、器術をすら一定の段階(レベル)で修めている。勿論その段階(レベル)とは、魔術士として独り立ちできる段階(レベル)だ。


「大神景、元術士(エレメンタラー)。クローマークの最高戦力は大神太雅でも四方月航でも無い――俺っちだ、って話だよ」

幻術士、言術士、弦術士に次ぐ第四の“ゲンジュツシ”。

それは複数の魔術系統を網羅して修めた、一人魔術兵団。


⇒次話 更新日時未定とさせてください。


宜候。

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