Track.6-3「楽しくて楽しくて堪りません」
「それでは実際の配置・運用についての説明を、石動支部長にお願いする」
「はい」
会議は中核に入り、全員が机の上の資料を捲る。
「今回の依頼者はリーフ・アンド・ウッド合同会社、先方担当者は業務部長の煤島様です。依頼内容はRUBY現メンバー計16名ひとりひとりに対する身辺警護、期間は先程常務からもありましたように、11月16日月曜日から12月27日日曜日までの42日間、その全ての日程を24時間体制で執り行うものとします」
頁を捲る音があちこちから聞こえてくる。
「資料4から5頁は、RUBYメンバーと担当グループの振り分けの一覧です。メンバーの情報については6から7頁に顔写真と簡単なプロフィールを記載しましたので、そちらをご参照ください」
4頁に記載された、メンバーに対する警護グループを読み上げていく森造の声はとても穏やかだが、この日ばかりは重みが含まれていた。いつもの恵比寿顔も、その奥に硬度を持った何かが窺い知れる。そしてそれは、覚悟であった。
<一期生>
●赤田屋 智花
担当……日)田能火群、夜)小松田雷吏
●五十嵐 姫夢
担当……日)加瀬霧生、夜)刃詩遊子
●尾久井 真知
担当……日)浦形衛鵡、夜)植野偉成
●冠 ニア
担当……日)弓伴すず、夜)楢手緋百合
●國橋 貴海
担当……日)竹飯燃斗、夜)矢崎天馬
●佐古 加奈緒
担当……日)大神太雅、夜)アドルフ・ヴォルフ
●鋼間 ルナ
担当……日)鴨寝彩璃、夜)西守魁二
●土師 はらら
担当……日)海崎澪冴、夜)安芸茜
●女木崎 未夏
担当……日)糸迫右京、夜)錫方弥都
<二期生>
●鵜去 汐南
担当……日)臥雁世陣、夜)鹿田真魚
●掲谷 繭羽
担当……日)壬生葉月歩、夜)可賀湧水
●鐘倉 未夢
担当……日)木場朱華乃、夜)乾九郎
●雛田 和歌
担当……日)灘茉莉、夜)灘直雄
●星 藤花
担当……日)鹿取心、夜)森瀬芽衣
●夜岸 ひまはり
担当……日)黛唯好、夜)瀬見小幸
●綿部 帆南
担当……日)小砂川七薙、夜)紐足ルカ
<統括>
日勤)海崎冴玖、大神景
夜勤)四方月航、眞境名恒親
<オペレーターチーム>
日勤)新井田羽緒、峠縁香菜、峠縁佐那
夜勤)玉屋望七海、皆見契子、紫藤早緒莉
「配置の兼ね合い上、他チームとの競合は避けられません。また、先月に新しい調査チームFLOWを発足しましたが、WOLF・FOWLと合わせてチームの再編を予定しています」
新設されたばかりのFLOWを除き、チームWOLFとFOWLには下位チーム、所謂“二軍”が存在する。二軍とは言っても列記とした調査チームであり、チーム単体で異界調査に赴くこともあれば魔術警護の任にも就く。ただし最上位の無印グループに比べれば劣るし、訓練生も混じっている、という立ち位置だ。
彼らは例えば“WOLF-2nd”や“FOWL-3rd”などと呼ばれる。
「FLOWチームに下位のFLOW-2ndを新設します。FLOW-2ndのメンバーには、FOWLから海崎冴玖と海崎澪冴、WOLF-4thから灘茉莉と灘直雄が移籍となります。FOWLには充当としてFOWL-2ndから刃詩遊子と加瀬霧生が繰り上がり、FOWL-3rdから鴨寝彩璃と弓伴すずが2ndに繰り上がり、WOLF-4thから可賀湧水と紐足ルカが移籍という形で充当します。またこれにより、WOLF-4thが解体という形となります。チームメンバー各位には別途通達を出していますが、調査チーム再編については別紙1を参照して下さい」
<調査チーム再編>
執行日:2020年11月16日より
WOLF
大神太雅、木場朱華乃、乾九郎、アドルフ・ヴォルフ
WOLF-2nd
大神景、楢手緋百合、鹿田真魚、植野偉成
WOLF-3rd
矢崎天馬、竹飯燃斗、田能火群、小松田雷吏
WOLF-4th
※再編に伴い解体
FOWL
糸迫右京、錫方弥都、刃詩遊子、加瀬霧生
FOWL-2nd
西守魁二、浦形衛鵡、鴨寝彩璃、弓伴すず
FOWL-3rd
臥雁世陣、壬生葉月歩、可賀湧水、紐足ルカ
FLOW
四方月航、森瀬芽衣、安芸茜、鹿取心
FLOW-2nd ※新設
海崎冴玖、海崎澪冴、灘茉莉、灘直雄
「チームが変わったことによる兵装の交換については各々の裁量に任せます。本来であればWOLFがFOWLの兵装を用いるのは規定違反ですが、今回の依頼に限り許可します。勿論FLOWチームは新設ですので、まだ装備は無いかも知れませんし――」
「支部長、そのことで少しいいですか?」
航が手を上げ、森造は上層役員に目を配る。この場で司会進行を務める警護部長の倖田が頷いたのを確認すると、森造は航に発言を促した。
「ありがとうございます。新設であったチームFLOWですが、前回のPSY-CROPS異界調査では私がそれまで所属していたチームFOWLの装備を借用させていただきました。しかし現在、開発部ではチームFLOW用の新兵装の開発に取り掛かっており、11月16日の任務開始には間に合う予定です」
「――その、新兵装とはどのようなものかね?」
航の言葉に興味を覚えた常務・和泉が組んでいた腕を解き、前傾姿勢になって訊ねる。航はニヤリと笑う――と、いうのも、和泉はこのクローマーク社の創設者の一人だ。現在の立ち位置は違うが、和泉と航とは古き顔なじみなのだ。
「いえ――それは見ての、お楽しみということで」
航のその言葉に、和泉の両隣で呆気に取られているのは佐渡島と倖田だ。当の和泉はくつくつと笑いを堪えていたが、やがて前のめりになっていた身体を反らし背もたれに乗せ、大声を上げて笑い出す。
その声量に、会議室内は何とも形容しがたい空気に包まれた。
「はっはっはっ――航、お前はそれだから出世せんのだ」
「お言葉ですが常務、私は今の立ち位置で満足しています。まだ若造ですし」
「そうか、管理職より現場勤務の方が性に合うか」
「ええ、楽しくて楽しくて堪りません」
「――そうだな、それでこそ復讐者だ」
再び前傾姿勢に戻った和泉は、ニヤリとした笑みを深めた。
最優先でご覧に入れます、と締めた航は閉口し、苦笑しながら森造は資料の説明を再開した。
そんな遣り取りを集中して見ていた芽衣は、そう言えばこんな人だったなぁと、航の横顔を横目で眺める。
冷たく鋭い、戦士や武人としての一面。
真面目で真摯な、大人としての一面。
しかし。
子供のように笑ったり怒ったりする、感情のままに生を謳歌するその一面こそが、きっと四方月航の本来の姿なのだろうと。
芽衣はそう思いながら、初めて共に戦ったあの飯田橋の異界攻略を思い返していた。
今回だけで28人もの新しいキャラクターが出ましたね。
28人分の名前を考えるのが一番手間取りました。あと編成。
→次話、8/4 23:00公開です。
宜候。




