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第五十回  終戦


今回出てくる「universe25」実験については、正確な内容ではないかもしれません。

あくまで話の一つということでよろしくお願いします。






 昭和二十年八月十五日。


 『正史』では、終戦記念日である。


 ある意味、国が滅んで別の国が作られたとも言えるのか。

 だが、この世界では何の記念日でもない。



 地球から離れた宇宙都市で、八太郎は静かに過ごしていた。


 すでに三十を超えた年齢になったが、結婚はしていない。

 何度か見合いを紹介されたこともあり、今もちょくちょく持ちかけられる。


 それは、ありがたいのだがなかなか進むことはなかった。

 どうにも、そういった気持ちになれないからである。


 果たして自分がこのまま根を下ろせるのかという疑問が常にあった。

 あるいは、罪悪感のようなものだろうか。


 日本は二十年間平和のままだ。


 しかし、地球では今なお戦争があちこちで起きている。

 火星人は基本、どの陣営や国家にも本格的には加担はしていない。


 民間企業が物資や兵器を売ってはいるが、火星人の武装とは比較にならない。

 もちろん性能自体は地球人レベルでみれば最高クラスで優れているのだが。


 関われば、味方したほうが確実に勝ってしまう。

 だから、多くの国が支援を欲しがっている。


 一方の火星人はどれだけ声を高められようと、日本の管理者という立場だけであろうとしていた。


 それを快く思わない国は多い。

 だが、同時に安心もしているようだ。


 火星人の介入を認めれば、その国の支配層は特権、既得権益を失う危険性が高いのである。


 日本でも多くの起業家や地主などが、憂き目を見ていた。

 火星人は衣食住にプラスして、職のほうも多く生み出している。


 農村では村を出たり、都会では仕事をやめたり――


 それをしても、すぐに新しい住居や仕事が見つかるわけだ。

 わざわざ不利な場所で過ごし続ける意味などなかった。


 資本主義国にしろ、共産主義にしろ、支配層は自分たちが没落する可能性など呼び込みたくはあるまい。

 日本に直接何かしなければ、火星人も干渉することはないのだから。





 そして。





 平和の続いた日本は、どうだろう。


 考えてみれば、『正史』のほうでも何十年も戦争のない時代が続いた。

 まあ、その結果軟弱になったとか平和ボケとか、色々文句を言いたい人間も多かろう。


 失ったものはあるが、得たものもあるのかもしれない。



 さてこの世界での、日本の現状を見ると――



 確かに平和が続き、経済も安定している。

 だから安心して子供が増やせそうなものだが、むしろ少子化が進みつつあるようだ。


 もちろんそこは【昭和】なので、見合婚が主流である。


 が、世間の動きを見てみると、女性が結婚相手に求める基準は高くなっていた。


「普通の男性でいいのに」


 と、言いつつ、求めるものは平均以上の男性なのだ。

 なんだか前世でも見たような構図ではないか、と八太郎は感じた。


 平和が続くと、こんな具合になるのが自然の摂理なのであろうか?


 確かに男が戦死することもないから、男あまりは自然な流れだが。



 火星人はそれをどのように考え、判断したのか。






 地球から最も遠く離れた宇宙都市群。

 最初はあくまでも宇宙開拓をする場所の一つとして作られた。


 正式名称は秋津州県。


 六十を超える宇宙都市の一つなのだが。


 火星人はその宙域に新都市をどんどん建設し始めた。

 秋津州の人口を考えれば、明らかに過剰である。


 いったい何をする気なのかと思っていると。


 『人工子宮』による、完全な人口出産。



 これをスタートさせた。



 専用の都市で、人間がそれこそ工業品のごとく量産させることになったのである。


 いや、そういえば以前から。

 子供のできない人間のために、人工出産で子供を作ることはすでにあったが。


 この計画のスタートに、世の女性たちは多くが反発した。

 連日地球や宇宙都市を問わず、あちこちで反対デモや集会が開かれた。


 しかし、火星人はこれらを完全に無視。

 ちゃくちゃくと計画は淀みなくスタートしていった。



 そして。



 秋津州で、最初の完全人口出産児が生み出された。

 その数、およそ1億人。


 いきなり赤ん坊だけ増えても……と思うが、そこは人間以上に世話のできる人造人間やロボットが問題なく育児をしている。


「機械では、人間のような愛情がない! 子供が歪む!!」


 と、息まく女性も多かったが……。


 しかし、世には子供を殺し、虐待する親だっているのだ。

 ならばそれをロボットが代わっても、どれほどの差があるのか。

 いや、下手な人間よりもはるかにマシなのである。


 これと同時に、秋津州への移住者も募集された。

 独身者であることや、一定以下の収入であること。

 そして男性であることが条件。


 パッと見れば、下層にいる男性の島流し場所……そんな風に見えなくもない。


 果たして、これが吉と出るか凶と出るかは、まだわからなかった。

 しかし、人間が自分から子供を作らない以上、少子高齢化を防ぐためにも、必要ではあるのか?



 八太郎には、答えを出せない。



 これについて、ある人と話したこともあった。

 八太郎と同じく転生者であるその人物であるが……。


 その時出たものに――


「あなたは、UNIVERSE25実験というものを知っていますか?」


「いえ、恥ずかしながら寡聞かぶんで……」


「ま、私も記憶だけなので曖昧なものですが、簡単に言うと実験に使われるネズミたちにとって理想的な環境を作り出すことで、行動や繁殖の具合などを見る――こんな感じであったと思います」


「それはまた……」


 まるで、今の日本国民みたいではないか? と、妙な気分になった。


「その結果をみると、ですね。強いオスが餌や縄張り、メスを独占して、格差社会ができてしまった」


「しかし、それだけだと……」


「ええ。単なる弱肉強食、自然の摂理。そのようにも見えますね。ですが、ネズミたちは異常行動をとるようになり、弱いオスは引きこもり状態を取り、メスに興味を示さなくなった。では、強いオスの子孫は繁栄したか? 結果は、否です。なるほど、強いオスと共にある富裕層のメスは、子育てに熱心でよく世話をします。ですが、貧困層のメスはうまくできず、あるいは子育てに無関心となり、自分のことだと優先するようになった」


「……うーむ」


 考えてみれば。


 それは、前世の日本でも多く見られたことではないか?

 いや、先進国全般で多く見られたこととも言える。


「これは個人的意見ですが、仮に今と同じレベルのテクノロジーを得ていたとしても、火星人の統治ではなく人間が統治していれば……確実とまでは言いませんけれど、かなり高確率でこのような社会になっていると思いますよ?」


「それは、ありえるかもしれません」


「平和、経済的安定。そして、宇宙と言う無限の開拓場所がある。にもかかわらず、人口減と婚姻率の低下……。火星人のしたことを、否定できますかな?」


「わかりません」


「そうですねえ。実は私もまだわからない。人間を、工場で作るようにして、いいのか。その不安、拒否感は確かにある。でも、宇宙と言う場所に住んで、新たな段階に立ってしまった以上、こんな考え方はもう古いのかもしれません」


「……」


「いずれ、人工出産で生まれた子供たちが主流となり、自然出産は少数派となるでしょう。それは、単純に良い悪いで言えることではない」


 この先――どうなるものか。


 ――行けば、わかるさ。


 なんとなく、どこかで聞いたような言葉を八太郎は思った。


 この世界で、昭和はまだまだ続くだろう。

 そして、どうなっていくものか。

 知るのが怖いような気もするし、楽しみなような気もする。








 ひとまず。



 【完】






あちこち暴走や迷走ばかりを繰り返してきましたが、今回にてひとまず完結です。

いただいた感想で、なるほど、そういえば……と思わされることは何度もありました。

本当に感謝いたします。


ありがとうございました!!



※ もしもこんな拙作を二次創作をしてみたいというかたがいたら、ぜひお願いします。


※ 現在番外編的な短編をちょっと書いております。

  年末か、来年初春に投稿できれば思っております。



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― 新着の感想 ―
[良い点] お疲れ様でした。 途中の暴走?はウケましたww ラストもイイ感じにまとめられたように思います。 読ませてもらってありがとさんでしたー。
[一言] 来年の更新を待ってます!質問ですが火星人が来襲した時期が開国直後の幕末ならどうなりますか?
[一言] 効率重視の火星人らしい未来ですね。
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