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#79 集う使者

ニコニコ超会議ィ!さいっこおおおおお!!!!!

でも毎週更新はやめない、作者の鏡()

 さて。神を殺す準備を淡々と進める中、不足しがちな人員の確保にいよいよ手を出すのだが。


「よぉ、あんたら。気分はどうだ?」


 厳重な警備と捕縛で、特別に今この場へと呼ばれた五人。そのうち四人は敵意を向けている。


「久しぶりだな、ザンキ」

「うむ」

『ゲヒャヒャヒャ!こりゃあ揃いも揃って不機嫌きわまりねぇなぁオイ!』


 集まってもらったのは他でも無い、今まで倒して捕まえた使者達だ。


「一応、確認を取るぞ。まずは『兎の使者・ヘルフリードカッコカリ』『猿の使者・ザンキ』『虎の使者・デーブ』『狐の使者・コン』『猫の使者・タマ』……。もう一度聞こうか?気分はどうだ?」

「良いわけ無いだろう?殺すぞ」

「おデは満足なんだナ。毎日お腹いっぱいなんだナ」

「黙ってなさいよクソデブ。触るわよ」

「…………」


 なお、一人は能力の関係上話せない。聞こえてはいるようだが。あとお面を付けた獣人も。


「本来なら、あんたらは一生暗い地下のブタ箱で死ぬまで飼い殺される運命だった。だが、とある理由により地上で話し合う権利を与えられたわけだ、あんだすたん?」

「要件を言えよ。ワイはもう、この世界に未練なんざねぇんだから」

「おいおいタマ、そりゃアレか?シャロの奴がいなくなったからか?」

「そうよ、私だってシャロくんがいなくなって、顔もこんなに醜くなって、生きるのが辛いのに死なせてくれないんだもの」


 当たり前だ。生きる意味を失ったからと死なれては、また使者を探す所から始めなければならない。それはめんどくさい。


「まぁ、シャロは今ごろ幸せにしてるだろうな。それはそれとして、今日は取引をしに来た」


 監視役として同行した憲兵さんに目配せし、部屋を退室してもらう。僕を含めて部屋に六人だけとなると、ポケットから鍵を四本取り出した。


「あんたらの能力と呼ばれる力は異端だ……それは、同じく『蝙蝠の使者』となった僕が保証する。だが、能力は能力で、問題なのは使う人だと、僕は考える」


 包丁だって、便利に使えばなんでも切れる刃物にもなるし、人を殺す事だって出来る。要は使い手が何に使うか、なのだ。


「そして、その使い方を間違え、死ぬまで飼い殺されるハメになった。けれど僕はその力をもう一度、世界に役立ててくれないかと思っている。同じ『転化した神の使い』として」


 ピクリと、コンとタマはこちらを睨みつける。おそらく、この力の出所を知っているのは僕と獣人である彼らだけだ。


「ご飯はあるんだナ?」

「あぁ、三食昼寝付き……とは言わんが、食うに困らないくらいの支援はされる」

「ならいいんだナ。おデ、お前に協力してやるんだナ」

「わかった」


 デーブの手錠の鍵を渡し、首に巻いた斬首用チョーカーを外す。


「……協力者はデーブだけか?」

「…目的も知らずに協力も何も無いだろ」

「わかってるくせに。言っておくが、僕の望みはシャロと同じだぜ?目指す世界は違えど、やる事は変わらない」

「ならなおさら、協力は出来ないな。ワイの目指す世界とはかけ離れてる」

「……ハーフの迫害されない世界か?」

「……っ」


 タマはその出生が原因で、幼少期より獣人にも人間にも迫害され続けていた。特に人間からは酷い差別を受けており、今回の席にも相手が人間の僕である事から最後まで応じようとしなかった。


「鬼ごっこのあの日から数ヶ月は立っているんだが、ちょっと世界情勢が変わってな?信じられ無いかも知れないが大分友好的になってるぞ」

「嘘だっ!」

「全力否定かよ」


 しかし事実であるのでそれ以上言う事はない。まぁ、協力出来ないってなら仕方ないな。


「タマも、コンも、知っているとは思うが、シャロは自分で世界を変えた。能力とは別に、己の力で。都合良く世界を書き換えるのも良いが、変わりつつある世界にもう一度挑んでみる気はないか?」

「…………チッ」


 舌打ちを一度、タマは自分の錠の鍵をひったくる。ひとまず、協力はしてやるという意思表示だろう。


「……勘違いするなよ?」

「何が?」

「ワイは人間を信じちゃいねぇ。だが、獣人を救うべく動いたお前、シャロがその力を託したお前、世界を受け入れろと言わずに挑戦しろと言ったお前。ワイは少しだけ、少しだけお前を信じる事にしただけだ」


 素直じゃねぇなぁ……野郎のツンデレはもうザンキでお腹いっぱいなんですよ。


「さてさてさぁて?残るはあと二人なんですが?」

「私は協力しないわよ?」

「…理由を聞いても?」

「私、世界とかカミサマとか、どうでも良いもの。使者になったのも成り行きで、シャロくんと一緒にいたのは私がシャロくんを好きだからだし」

「うん、知ってた。というわけで、コンさんには隣の部屋に行ってもらえますかね」

「……なんで?」

「三時間……いや、一時間耐えられたら自由にしてやっても良い。シャロを探しに全国を旅しようが何しようが、無罪放免だ」

「拷問って事?甘く見られたものね。良いわ、受けてあげる。その代わり約束は守りなさいよ?」

「あぁ、一時間耐えられたら……な」


 颯爽と、コンは部屋を出る。これで残す所は一番キライなヘルフリードカッコカリだけだ。


「……」

「とりあえず、名前を教えてくれるかな?ヘルフリードカッコカリ」

「…………」

「あ、話せないのか。えっと……?」


 確か文字は『静』だっけ?それとも『黙』?あー……うん、どっちでも良いや。


「そんじゃまぁ……『解』」

「……ぁ…あー…」


 ヘルフリードカッコカリはしばらく自分の声を確認し、発生練習を始める。この声を聞くのも、久方ぶりだな。


「あー、あー、あ、え、い、う、え、お、あ、お。あめんぼあかいなあいうえお」

「ふざけてるのか?」

「……しばらく自分の声に酔いしれても良いじゃあありませんか、ヒコボシくん?」

「……うへぇ…」


 気持ち悪いわ、こいつ。話すだけで身の毛がよだつ。もう生理的に無理。


「さて……どこから話せば良いのかなぁ?」

「……とりあえず名前を言え。長ったらしくて呼ぶのがダルい」

「名前……なまえ、ねぇ…?……」


 喉をさすりながら、ヘルフリードカッコカリはしばらく悩むフリをする。やがて納得したように一人で頷き、貴族風の笑みを向けた。


「名前はとっくに捨てて忘れてしまったんだよ。だから好きに呼んでくれて構わない。むしろ、ヒコボシくんの奥さんに名付けて欲しいなぁ」

名無し(no name)貴族(aristocrat)を略してノーナ(nona)だ。小子には一言も話すな、触るな、見るな」

「ひどいなぁ。こっちは君たち二人をどうやって不幸にしてやろうかずっとずっとずぅぅぅぅぅっっと考えてたのにさぁ?」


 ……ホンットに気色悪いなこいつ。恍惚とした表情でナニをカタくテント張らせて堂々と殺害予告してやがるんです?


「……やっぱキライだわ、お前」

「でもでもぉ、協力はして欲しいんでしょお?」


 ノーナは妖艶な仕草で……男だが……最後の一本を掴み取る。そうして満面の笑みでこう言ったのだ。


「神様を殺したらぁ、二人を不幸にさせてねぇ?」

「……やれるもんならやってみろ。幸せ絶頂すぎて砂糖吐いて死ね」

「約束だよぉ?」


 …………さて。一番キライな野郎も協力させる事に成功した。そろそろ、タマも戻ってくるだろう。


「彦星さんっ!」

「おう小子。こっちは全員協力してくれるってよ。そっちは?」

「それが……」


 実を言うと、隣の部屋には小子に待機してもらっていて。与えた指示は『自重しなくていいぞ』だけ。生粋のケモナーたる小子の前に可愛い狐獣人を差し出せば……お察し出来ましたかね?


「お姉さまぁん♡もっと、もっとコンに、この堕狐にお仕置きをぉ♡」

「……何やったの」

「はいっ!全力でもふり倒しました!」


 うん、知ってる。大体予想してたけど。でもさ?これじゃあただのクレイジーサイコレズじゃん?


「なぁタマ、神を殺す手伝い……」

「は?なんで?嫌に決まってんでしょ」

「…………小子」

「協力してくれませんか?」

「はぁい♡お姉さまの為なら例え火の中水の中、神だろうが魔王だろうがブチ殺して差し上げますわ♡」

「…………彦星さぁん…」

「何も言うな。僕は何も、見なかった」


 かくして、神を殺す準備は、怖いくらい順調に進んでいくのだった。

本日もご愛読ありがとうございます。


例によってブクマ、評価、感想、レビュー、ツイッターフォローなどなど、よろしくお願いします。

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