#63 彦星の1-A強化計画
「校長!奴は一体何者なのですか!」
「お、落ち着きたまえよモードレッド君。また倒れるぞ?」
「そんな事はどうでも良いのです!」
怒りのあまり、モードレッドと呼ばれた彼は強くテーブルを叩きつける。用意されたティーカップがガチャンと音を立てて倒れ、熱いハーブティーがモードレッドの服にかかった。
「あちちち!熱っ!」
「ほれ、興奮すると良い事が起こらん。冷静になりたまえ」
「うっ……くそ…」
「良いかね、モードレッド君。当校ではまず彼が何者で何処から来たのかなどという情報は、さして重要では無い。それは、君も知っているだろう?」
「……はい」
「この学校に来る事を許されているのは、強者のみなのだ。強き者が、さらに強き者に教えを請い、互いに切磋琢磨する、そういう場なのだ」
「それは、その通りですがしかし、伝統というものが……」
「…確かに、伝統を重んじることを悪いとは言わん。しかし、重んじるあまり誰も彼もが、偉大なる先人の知恵と技術を継承する事に力を入れ結果、生徒の質は下がり、それに合わせて授業の内容も先生も、低迷の一途を辿ったのだ」
モードレッドは黙ってうつむき、悔しそうに肩を震わせている。校長の言葉は紛れもなく事実であり、真実でもあった故にだ。
「彼はその低迷した現状を打破する人材だと思っておる。君も魔法理論を教える教師ならば、良くわかっておるじゃろう?」
「それはっ……!…そう、ですが…」
そう、モードレッドもまた、彦星と同じく魔法理論を教える教師だ。しかし伝統と規律を重んじる彼の授業は従来の『いかに早く正しく美しい詠唱を行えるか』という授業であり、対して『無詠唱で極めて実践的な魔法』を教える彦星とは根本から違う考え方をしていた。
「……私は、彼を買っておるよ。事実、生徒の質は少しづつ上がり、他クラスとは一線を画す勢いじゃ」
「……その影響で、下級生が上級生と対等に渡り合えるとしてもですか?」
「…君がもし、先日の事を言っておるのなら、それは私たち教師の失態だ」
「…わかり、ました……」
小さく、納得したという意味を込めて頷いたが、モードレッドの中では何も解決していない。失礼しますと言って、モードレッドは校長室を出る。
「……奴は危険だ。こうなれば私自ら…」
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一週間前、彦星は職員会議に出席していた。職員会議では主に、各学年各クラスの修学状況の照らし合わせ、行事のお知らせ、その他連絡事項などを行う。
「えー、次に来週の合同授業についてお知らせします。当日は他の授業もなく、授業進行状況に遅れが出るとは思いますが、一年生にとっては大事な授業ですのでご協力をお願いします」
ちなみに彦星が赴任してから早くも一月が過ぎようとしていた。その間に、彦星の担当するクラスは全員基礎を終えており、少なくともその全生徒が魔力を纏う事が出来るようになっている。
「……あの、合同授業って何するんですか?」
「あぁ、ヒコボシ先生は今年が初めてでしたね。合同授業では主に魔戦学を行います。一年生から三年生の全学年全クラスを学科毎に分け一年生は将来の選択を、二年生と三年生は他者との差を認識させるんです。また、この合同授業で一年生の適性も測っています」
「へぇ……」
意外と先生ってのは大変だな。テストに指導に生徒一人一人を観察して判断、他にも雑用、派閥、横領、汚職……あれ?最後の二つは違うか?単純に面倒だなぁ……。
「また、クラス担任の先生には、自分のクラスをしっかりと指導しているかを問われ、優秀な成績を収めますと生徒と先生に報酬が出ます。ヒコボシ先生はその枠に当てはまりますので、しっかりと応援してあげてくださいね」
な、なんだとっ!?報酬が出るなら話は別だ。何としてでも1-Aには勝ってもらわねば!
「はいっ!了解しました!」
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「……ってなわけで、お前らには何が何でも全勝してもらう。僕の報酬のために頑張ってくれ」
『無茶振りが過ぎるぞアンタ!』
先生に向かってアンタとは聞き捨てならんな。だが勝つなら許してやろう。
「はい、先生」
「おうどうしたシュンレイ」
「まず報酬ってなんですか?」
「学食一年無料と先生の休暇。ちょっと地上に降りて様子を見に行きたい所があるんだよ」
「ご存知かと思いますけど、あと一週間しか無いんですよ?どうやって上級生に勝てと言うんですか?」
ふむ、まぁその通りだ。いくら僕の授業を受けたと言っても、その質は上級生のそれとはどうしても差が出る。
「今から普通に練習したって、確かに勝てないな。特に、僕の授業を受けた上級生には」
「なら、やっぱり勝てるなんて無理かと」
「言ったろ?『普通の』練習だと。さて、そこで提案なんだが、ここに『時間の流れがとてもゆっくり流れる空間』がある。この中は魔素で満たされ続けていて、魔法も打ち放題。ここで朝と夕方のホームルーム、あと一回ある魔戦学の授業を使えば勝てると思わないか?」
「……本当に、そんな都合のいい場所があるなら、ですけどね」
ふふふふ、あるんだなぁコレがっ!外の世界の一時間が一日中になる魔法の空間が!
「刮目せよ!開け異界の扉、その姿を現したまえ!」
『おおおおお!……お?』
適当な呪文で現した空間の扉は、人一人がやっと通れるくらいの木製のもので、全体的に桃色をしている、つまりはどこにでも通じそうなドアだ。猫型ロボットの半月ポケットから出そうな感じの。
「うん、クソダセェけどまぁいいや。こいつの中は外の世界と時間の流れが違ってな。一時間が一日になる魔法の世界と繋がってる。ホームルームの時間が十分くらいだから中で四時間、午後と合わせれば八時間特訓できる。授業の無い日もホームルーム分するとして、まず一週間で五十六時間、ついでにこのクラスの魔戦学をこの中で過ごして……えっと…一時限が四十分だから……」
十分で四時間、一時限で十六時間、四時限あるから六十四時間、ホームルームと合わせて百二十時間。
「全部で五日分ある。寝床も食料も用意しておいたから、安心してみっちりスパルタ教育してやる。安心しろよ、全力で教えるのは得意なんだ」
『(何一つ安心出来ない……)』
「さぁそうと決まれば今から特訓だ!時間は有限、今は一分一秒が勿体ないからな!ほらほら入って入って。大丈夫、痛くしないから」
そう誘導して、僕は空間の中に生徒全員を押し込んだ。さて、何から教える?付与術?剣術?いやいや、まずは生徒全員に重力をかけて基礎能力の底上げを図りつつ、想像力と創造力の鍛錬だな。あ、身体強化と流動術、縮地も捨てがたい。ここはやはり剣士と魔法使いに分けて教育しなければ。あぁ、夢がひろがりんぐ!!
「……さぁ、授業を始めよう」
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「よーし、とりあえずここまで。休憩に入るぞ」
『あ……ありがとう…ございました…』
この程度で息切れか?ぶっ倒れるまで魔力使ってから息切れしろよな。
彦星の強化授業は、今の分で二日分が終わった頃だ。この後は少し休憩を挟んで、魔戦学の授業になる。その中で約二日半、この空間に缶詰となるのだ。
「……よし、二十分休憩したな。特訓再開だ」
『は、はいっ!』
初日の三十分で全生徒の適性を僕なりに判断してみた結果、ちょうど十人づつの適性に別れた。つまり『潜在魔力が少なく体術に長けた者』『潜在魔力が高く操作に長けたもの』『そのどちらでも無くしかしどちらかに多少秀でた者』だ。
言うまでもなく、体術に長けた生徒には剣術と流動術を教え、魔力が高い生徒には星域と魔素の運用法を授業し、残る生徒には回復と支援に分けた。
「ほらそこ!流れがに強弱があるだろ!もっと己は均一に、他人の粗探しをしろ!」
「お前はもっと具体的に想像しやがれ!なんだそれは、泥水か?粘土か?実物なら倉庫にあるからよく観察しろ!」
「ほらほら違うそうじゃない!回復させるなら傷ではなく疲労感を解け!戦場じゃあ擦り傷なんて気にしてられねえんだ、全身に溜まった疲れの元を分解しろ!」
「お、そっちはセンス良いな。その調子でどんどん付与しろ、いいか?大事なのは呪文ではなく言葉に込める意思だ。こうなれって思えば原則としてどんな言葉だろうと発動する。あまりかけ離れすぎると言葉につられて想像が出来なくなるぞ」
『(何でこの人は全部見えてるんだろう…?)』
剣術を教える者には万年筆で書き出した木刀で試合をさせ、ついでに力の流れを操作する流動術をさせ、その応用として縮地、身体強化と合わせて使わせた。そのうち魔力で全身を覆わせるが、武器までさせたら紙でもナイフ以上の切れ味になるので今は使わせない。危ないからね。
魔法を教える生徒にはひたすら想像と創造を繰り返させた。どのように物が燃えるのか、水は何で出来ているのか、その他もろもろ色々と、考える事に果てはない。こちらは頭の良い生徒より悪い生徒が成功し始め、逆に固定観念に囚われた優等生達は星域の展開と魔素の運用法を上手く使い始める。あとは、分からない物同士で教え合ってくれるだろう。
回復魔法を教えるのが一番苦労した。何しろ、人体の構造を知らない者に教えるのだから、普通より苦労する。今時、心臓が左胸にあるなんて思い込んでいる生徒がいるんだ、理解不能すぎてため息が出る。はぁ、保健体育もしないとダメなんだろうかね。
付与魔法を教える者には、付与するという行為がどの様なものなのかを考え、こちらも同じく想像を繰り返しさせた。だがこちらは物体の想像ではなく動きの想像で、例えば速度上昇の付与とはどの様な現象が起こるか想像させたりする。
「ほらほら時間無いぞ!もっと明確に、具体的に!魔法は呪文ではなく想像だ!想像を創造する代償に魔力を消費するんだからな!」
「流れが不自然だ、もっと滑らかに力を移動させろ!踏み込みで得た移動エネルギーを一つも無駄にするな!」
「骨の向きが前後逆だ!お前の右腕は左腕なのか?」
『は、はいっ!すみません!』
どうして見ていない方向の生徒の様子が分かるのか不思議だが、彦星にはしっかりと見えていた。否、感じていたのだ。
「……よしよし、さすがは天才の巣窟。理解力と吸収力が高いな。この分だと当日に間に合うぞ…」
そうこうするうち三日、四日と時間は消費され、残り二時間を切った頃。
剣術を教えていた生徒は全員、呼吸する様に流動術を行い、縮地と身体強化、途中から追加した魔力を纏う技術も習得し、今では雑談しながら試合を行なっている。
魔法を教えていた生徒はより強力で摂理に従った魔法を習得し、得手不得手はあるものの全ての属性を扱える様になっている。星域を応用した飛行術、高速移動を当然のように行い、魔素を体内に素早く吸収させ続ける事で、魔力回復速度も魔力量も、大幅に上昇した。
一番苦労した回復魔法を教えていた生徒達は、例え今すぐ衛生兵に指名されても慌てずに治せる技術を習得し、それぞれのやり方で傷の種類に応じた治療法を確立した。本格的に学びたいのなら、治癒科に席を置く事になるだろう。
付与魔法の生徒は、途中で更に二分化する。身体能力を上昇、低下させる付与術を得意とする者と、魔法や剣の威力を増加させる事を得意とする者だ。
「よーし、最後の休憩だ。少し長めに三十分取る。ゆっくり休めよ?」
『はいっ!』
元気よく返事した生徒達はぞろぞろと休憩室に入る。軽い食事と仮眠を取ったら、また強化授業が始まるのだ。
「……そろそろ出てくるな…」
きっかり三十分経ったのち、生徒はまた持ち場に戻って授業を始めようとするが、彦星はその生徒達を止めて整列させる。
「残り一時間半を切ったわけだが、実の所もう教える事は殆ど無い。だが時間を無駄にするわけにもいかない。ではどうするか、だが……」
万年筆で外と空間を繋ぎ、彦星の自室へ手を伸ばす。そこにあった自分の刀を取り出したら、それを帯刀した。
「本気の僕と戦ってもらう。勝つ必要は無いが、勝つつもりでやれ。負けても何も無いが、僕は殺す気でやる。理解したか?」
『……は、はい!』
「よし。じゃあ、僕が十歩後ろに下がったら、戦闘開始だ」
すう、ふぅ……久しぶりだな、この刀も。鈍ってなきゃ良いけど。残り三歩、二、一……ッ!
踏み込みと同時に抜刀。縮地を使いつつ、攻撃に備え、眼前に迫った魔法に斬りつけた。
「そうこなくっちゃなぁ!」
詠唱はどの生徒からも聞こえない。当たり前だ、そういう風に教えたんだから。
「そらっ!死にたい奴から前に出ろっ!」
刀に魔力を纏わせ、一閃。飛ぶ斬撃が剣士二人の生徒を両断したが、他の生徒に斬撃を割られた。
「ちょ、先生!?切ったらまずいんじゃ無いんですか!?」
「安心しろ、生徒の制服には転移術式が付与されてる。空間にあらかじめ小さな穴を開けてあるから、致命傷を受けたら教室に飛ばされてる、よっ!」
もう一度、一閃。今度はそれに重ねて魔弾を放つ。馬鹿正直に属性で相殺すると煙を放つ付与を乗せて。
「ちっ、流石に子ども騙しは効かねえか…っぶね!」
下から石針が突き上げる。直前に感知し、バク転で回避、回避、回避。
「くそ、キリがねえ……なら、断ち切るっ!」
たんっ、と上に飛び、突き立てる石針の上に着地。左右に避けながら術者の懐へ飛び込んだ。
「ひわっ……!」
生徒は悲鳴をあげつつも刀からは目を離さない。次の攻撃にも備えている……が。
「相手は刀だけじゃ無いだろ?」
刀を持つ右手とは逆に、左手を生徒の腹に押し当てる。踏み込みのエネルギーを一瞬で左手に移し、放つ。防御を無視し、打ち込まれたエネルギーを流しきれず、爆散……する前に転移。
一瞬動きが止まった僕に攻撃を当てようと、剣術を教えた生徒が四人がかりで四方から縮地で迫る。
「囲むならあと上と下も塞いどけ」
彦星は上に飛び、万年筆で作った壁を足場に包囲網を抜け、地に足が着くと同時、囲みに来た生徒を縮地と居合で両断。転移。そのまま直進しながら、ついでとばかりに三人を両断した。
「残り、二十!」
その時、景気良く動き回っていた彦星の速度が突然落ちる。縮地に失敗した?いや、これは身体能力低下の付与術だ。
突然の事に一瞬だけ怯んだ隙を突き、土と水の複合魔法『木魔法』で彦星は拘束される。無防備な体に、渾身の一撃が下されるが……しかし。
「おっと?星域の厚みがケタ違いだった様だな。拘束するなら魔力の遮断も合わせて行えよ?」
体表を燃やし、拘束から脱出する。厄介な付与術者に風と水の複合魔法『氷魔法』を強く撃ち込み、一掃。一気に五人が転移する。
「飛び道具ばっかじゃつまんねえよな?」
刀を鞘に戻し、空高く放り投げる。それに目を奪われた魔法使いの生徒を二人、剣士の生徒を三人の腹に風穴を開け、転移させた。おっと、回復魔法も使わせてやらねえとな。
「そらっ、飛んでけ!」
適当な生徒を蹴り飛ばし、都合よく足の骨を折っておく。その生徒を救うべく、一人の生徒が飛び出して行った。数秒後には、足の治った生徒が立って動き回っている。
「……回復も、申し分無し。疲れた生徒を片っ端から快復させてるな…」
ここらで、回復術者を二人ほど減らそう。標的は…っと。
今まさに回復魔法を使った生徒を背後から襲い、全力で回し蹴り。飛ぶ先に壁を生成させ、叩きつけて転移させる。飛んだ生徒の元に走ろうとした生徒には、正面から満面の笑みで炎の渦の中へと閉じ込めた。しばらくすれば服が燃えて転移するだろうな。
「そろそろ、片手で数えるまでに減らそうか!」
残っているのは八人。回復三人剣士一人魔法使い四人だ。ここから一気に三人減らしたい。剣士が一人で頑張っているから最後にするとして、魔法使い二人と回復一人だな。
「おっとお?ここで四人が力を合わせて特大魔法ですかぁ?」
単純な魔法の塊ほど怖いものはない。素手で触るのは危険だ。
「素手がダメなら魔力で防ぐまでよ!」
全身を魔力で覆い、手刀を刃物より切れる状態にする。
「割れ、ろっ!!」
振った手刀から斬撃が飛び、魔法の塊をスッパリ両断。
「まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだぁぁぁ!!!」
振れば出る斬撃で、大きな魔弾を微塵切りに。
「分解、吸収!バラ、バラ、バラ」
星域を伸ばし、細かくなった魔力を魔素に変換。大量の魔素を体内に吸収して、同じ大きさの魔弾を再構築。
「元気いっぱいの玉だ、よーっく味わえ!」
魔法使い四人にまとめて当てたが、星域と防御魔法でかろうじて防いでいる。
「まぁ制御出来る魔力量なんだから、これは当たり前に出来なきゃな。でも」
再び手刀を振って、追い討ちをかける。正直、この巨大な魔弾は隠れ蓑だ。
「他の可能性も考えとけ!」
魔弾を貫通し、飛んだ斬撃は魔法使い四人を転移させて消える。
「よそ見してるお前らも、なっ!」
二発目の斬撃が残る二人に襲いかかり、僕と近い位置にいた回復術者が転移する。
「そんでもって、残る剣士には敬意を払い……」
そこで、ようやく落ちてきた刀を再び帯刀。僕の神速の居合を、生徒の構える剣で反らされた。
「そう、そうだ!流れを感じろ!つなぎ目を狙え!」
切り上げ、横薙ぎ、刺突、刺突、刺突、変わり種の回し蹴り、風土火の魔弾、斬撃、回転斬り。少し不自然な牙突。
「そこだぁっ!」
「……は、フェイク」
横薙ぎされる剣を、刀の柄底で強打して真っ二つに叩き折る。
「達成感に浸るな。勝ったと思った時が一番負ける」
踏み込みのエネルギーと魔力と、サービスで重力全開放の一撃を食らわせ、最後の一人を転移させた。
「………………ふぅ…」
刀を鞘に納め、礼。
「……これにて、授業は終了です。お疲れ様でした」
五日間、お世話になった空間に礼をして、彦星は外の世界に出る。きっと教室に戻ったら、ぶーぶー文句を言われるだろうと覚悟して。
ご愛読ありがとうございます。
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