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辺境の獣医令嬢〜妹に婚約者を奪われた伯爵令嬢ですが、次期辺境伯様に溺愛され辺境で獣医となって可愛い神獣たちと幸せに暮らしています〜  作者: 津ヶ谷
第2章

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第5話 動物不審死

 今日は、週に一回の休診日である。

緊急性の高いと判断した患者さんは受け入れるが、基本的にはお休みである。


「さて、今日は新しく買った医学書でも読みましょうかね」


 獣医というのは、ほぼ全ての分野について見識を持っていなければならない。

人間を見る医者なら、各自の専門に科が分かれているが、獣医はそうではないのが現状である。


 そのため、常に新しい知識を入れておきたい。


「ラースさん、ちょっといいだろうか?」


 ラースの部屋をノックした後、バーロンさんの声が聞こえた。


「はい、今行きます」


 医学書を閉じると、ラースは部屋の扉を開けた。


「どうかなさいましたか?」

「いや、隣の街のカリロ子爵の遣いが来ていて、君に会いたいと言っているんだ。なんでも、動物についての相談があるとか」

「分かりました。お伺いしましょう」


 ラースの噂を聞いた者たちが、最近はオーランドの街に続々と来ている。

それでも、領主様の遣いの人が来るのは珍しい。


 ラースは、バーロンさんと一緒に応接間に向かった。

応接間の中に入ると、身綺麗にしたまだ若い男性が立ち上がった。


「この度は、お忙しい中お時間を頂きましてありがとうございます」

「いえ、とりあえず座って話しましょう」

 

 ラースとバーロンさんはその男性の対面のソファーへ座る。


「失礼します。私、カリロ子爵様の遣いで参りました、シリノと申します」

「初めまして。ラース・ナイゲールと申します。私に、動物について相談があるそうですね。バーロンさんから聞きました」

「はい、左様でございます。ここ1週間くらいなのですが、カリロの街の領内の一角に猫や鳥などの野生動物たちが、次々に死んでおりまして。最初は、偶然かと思ったのですが、偶然では済まされない数になっており、どうしたものかと思っていた所、ラース先生のお噂を聞きまして」


 野生動物が街中で死んでいることは珍しいことではない。

しかし、その数が多いのは明らかにおかしい。


「どのくらいの数が亡くなっていたんですか?」

「全部で39体です」

「確かに、多すぎますね」


 自然死では片付けられる数ではないだろう。


「領民たちも気味悪がっておりまして、ラース先生に調査をお願いできないかと思った次第であります」

「私は構いませんが……」


 そう言って、バーロンさんの方に視線を向ける。


「私もかまわんよ。カリロ子爵には色々と世話になっているからな」

「分かりました。調査依頼、お引き受けします」

「ありがとうございます。ラース先生に来ていただけるなら、心強いです」

「今日は、休診日なのですぐに行きましょう。準備してきます」


 明日からは通常業務もあるので、急いだ方がいいだろう。

ここから、カリロの街は馬車ならそんなにかからなかったはずだ。


 ラースはそう言って、応接間を後にした。

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