第十五話 あふれる力と、ひびの入ったペンダント
驚いた華奈が手を開いてみると、ペンダントは輝きを増し、どんどんと熱くなってきます。
「……あつっ――!」
「華奈、俺に!」
華奈が持てれなくなるほどに熱を持ち始めたペンダントをシオンが受け取りました。するとペンダントはさらに熱くなり、光も強くなっていきました。
「なんだ⁈ どうしてこんな――」
シオンがつぶやいたその時、雲の隙間から一条の白い光が二人に向かって射してきました。そして、美しい声が辺りに響き渡ります。
『シオン! 今すぐペンダントとのつながりを断ちなさい!』
シオンは目を見開いて、光の指してくる方を見上げました。
「この声は……姉上⁉︎」
「シオンのお姉さん……?」
同じように見上げるも、眩しすぎて目を開けていることができず、華奈はシオンの方を見ます。するとシオンは驚いた顔をして言いました。
「どうして――⁉︎」
『そのペンダントは、大きすぎる力にたえれなかったの!』
「大きすぎる力……?」
『そう!』
シオンが「いったいどういうことだ」とつぶやくと、慌てるような声が響いてきました。
『ヒビが入って壊れてしまったのよ! 熱を持って、強い光も発しているでしょう?』
先程聞こえたパキンという音。それはなんと、ペンダントに流れ込んだ力が入りきれずに壊れた音だったようです。
『そのままでは、今も増え続けている力に耐えれなくなって、爆発してしまうわ! そうしたら、近くにいるあなたたち二人とも、無事ではすまない――だから早く!』
「――わかった!」
シオンが膝をついてペンダントを地面に置き、手を合わせて自分とのつながりが切れるよう念じると、光はそれ以上増すことなく、少しずつ消えていきました。
「これで……大丈夫か……?」
シオンの正面にしゃがんだ華奈が、恐る恐るペンダントに触れてみると、
「もう、熱くはないみたい」
持てなくなるくらいの熱さだったペンダントは、ひんやりとして、光の欠片も随分と少なくなっています。
華奈がペンダントを手に取り見ると、光の欠片ははじめに拾った時よりも少なくなっていました。
「入っていた力は……どこに行っちゃったのかな……」
集めた力がそこにないのだと分かった華奈が、ペンダントを差し出しながら悲しそうにつぶやきます。シオンはそれを受け取り、辺りを見回し、空を見上げて言いました。
「ヒビからもれて散っていったみたいだ……光が収まるのと同時に、ヒビから力が抜けていくのが見えたから……まぁ、自然に還ったんだよ」
その時です。空から刺す光が一層強くなり、鳥の鳴き声や様々なざわめきが聞こえなくなりました。
驚いた二人がまわりを見渡しすと、木の葉がまるで凍ったかのように動かず、そよいでいた風さえもが止まっていることに気がつきます。
『今、これ以上その世界に干渉しないよう、あなた達以外の時を止めました。
シオン、自分の力のコントロールを意識しなさい』
「コントロール? 何でだ?」
『今もなお、力が貴方に集まり続けているからです』
「力が……?」
その言葉で二人は、シオンの体の輝きが増してきていることに気づきました。
『そう。このままではコントロールしきれず溢れる力が、世界を超える扉と道だけでなく……少なからずつながっているその子にも影響を与えてしまう……』
「華奈に――」
シオンは華奈を見つめ、華奈もシオンを見つめました。
集まり続けている力の影響か、シオンの金色に輝く髪は風もないのに揺らいでいます。そして燃えるように赤い目には、優しく、悲しげな光が指しました。
『私が止めた“時”はもうすぐ動きだしてしまいます。
これ以上その世界に干渉しないよう、世界をつなぐ扉が安全に開けるよう。力をコントロールして、貴方の力を移しなさい。この新しいペンダントに』
すぅっと二人の間に現れたのは、深紅のオパールのように輝く玉をその中心に抱くペンダント。
シオンがそれを手に取ると、ペンダントは反応するように光りだします。そしてシオンから沢山の光が移っていき、ペンダントはすぐにキラキラと輝く虹の欠片でいっぱいになりました。




