第23話「未来を抱きしめる腕の中で」③
転生してから、気づけばもう十カ月。
妊娠したことで、お妃教育の復習も免除!公務もほぼ免除!!
今日も明日も明後日も……ネグリジェ姿のまま誰にも怒られず、本を読みふけり、ワンワンを撫でて、気が向けば庭を散歩。
……ついに!ついに私は念願のダラダラ生活を手に入れたんだ!!!
思い返せば、この十カ月は怒涛だった。
何がどうなったのか、王太子に見初められ、命を狙われながらも婚約まで漕ぎつけ、週七でお妃教育を叩き込まれ……。
王太子妃になったと思ったら、あっという間に妊娠四カ月。
展開バグってるよね?
こんな濃い転生悪役令嬢ライフ、聞いたことないよ。
自分で自分にドン引きだわ。
ポコッ……ポコッ……
最近は胎動もはっきり感じられるようになってきた。
けれど、エドの手をお腹に持っていくと、不思議なほどピタリと動きが止まってしまう。
……なんなんだろ、コレ。
「ねぇ、エド。子どもってさ、男の子と女の子……どっちがほしいとかある?」
ベッドに寝転びながら、隣で書類を読んでいるエドに問いかけてみる。
彼は少し目線を外し、考えるように間を置いたあと、静かに答えた。
「……君に似た女の子……いや、男の子も捨てがたいな」
「ふふ、欲張りだね」
「でも、どっちでも楽しみだ。元気で、君と俺の子なら」
「……ま、二人いるから、両方かもね」
「え?」
「名前、二つ考えとけよ?」
エドの氷のように澄んだ青の瞳が驚きに大きく開かれる。
その瞳を見つめながら思う。
子どもはこの瞳を受け継ぐのだろうか。それとも、アリエルの紫の瞳とローズゴールドの髪を?
どちらにしても、きっと男の子でも女の子でも……たまらなく可愛いに違いない。
「……神よ、ありがとう!」
「わっ!」
突然、身体をぐっと抱き寄せられる。
その力強さが、彼の喜び大きさを表してるように思えた。
「神に祈るんじゃなくて、私に祈っとけって」
「もちろん……リエルは俺の女神だから」
女神て。ほんと恥ずかしい奴だな。
でも……この医療レベルの低い世界で、神に祈りたくなる気持ちも、今なら少しわかる。
……
エドの胸に身を預けながら、ふと疑問が湧いてくる。
「……ちょっと待てよ」
同君連合って、セシルが帝国皇女と結婚して子どもができた場合……その子どもがアストリア王国と帝国、両方の王位継承権を持ってしまうのが問題だったはず。
で、私が妊娠したことで、アストリア王国の継承権は私たちの子どもに移るから、同君連合は事実上成立しなくなる……。
はず、だよな?
その認識は間違えてないはず。
「その……同君連合?妨害ってさ、私たちの子どもが無事に生まれるのが前提じゃないの?」
おい……目を逸らすな。今の沈黙と視線の動き、『そうです』って認めてるのと同じだろ。
この野郎、あの時大団円みたいな空気出してたくせに……!
「子ども込みで、命の危険度爆上がりじゃねーか!!!」
「……危険にさらすことにはなる。でも、誰にも君を傷付けさせないと約束する」
さっきまで目を逸らしてたくせに、急に真っすぐに見つめて、こんなこと言うんだから。
ズルい王子様め。
しかも婚約も結婚も……一応こいつが口にした約束は、ちゃんと叶えてきてるんだよな。
「……はぁ。マジで頼むよ。もう私一人の身体じゃないんだから」
「もちろん」
寄りかかると、背中越しに伝わる温もりに少しだけホッとする。
ほんのり膨らみ始めたお腹を撫でていると、大きな手がそっと重なる。
重ねられた手を取り、エドに向き直ると、そのまま、ゆっくりとエドの香りが近づき、唇を重ねられる。
こいつはどんな父親になるんだろうか。
なんか、底なしの親バカになりそうで、怖いけれど、想像するだけで、楽しみな気がする。
頬を撫で身体を支え抱きしめる手は、いつも以上に優しく暖かく、それ以上に、慈愛にのようなものを感じて、離れ難くなってしまう。
婚約直後は抱きしめられることすら恥ずかしかったのに。
今では自分で寄っていくなんて……この数ヶ月での自分の変わりように驚いてしまう。
冬がきたら四人家族か。
まさか転生して家族が増えるなんて。
こんな人生、誰が想像できただろう。
寒いのが苦手で、冬は嫌いだったけど。
エドと夫婦になって、冬がくるのが楽しみだと思えたのも初めてのこと。
妊娠のことといい、初めてのことだらけで、不安しかない。
神頼みなんて普段はしないし、誰かに甘える生き方なんてしてこなかった。
……でも、この手の主だけは、頼ってもいい。信じてもいい。
そんな風に、心の底から思えた。
「転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!」2巻完結になります。
最後までお付き合いありがとうございました。
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頂けると嬉しいです*⸜(*´꒳`* )⸝*
夫婦となった二人は、次は家族へと成長していきます。
近い内に、お話の続きを投稿予定です。
その際は、またよろしくお願いしますミ(o _ _)o
※本作には、この物語の前段階にあたるお話しがあります。
ご興味のある方はそちらもご覧いただけると嬉しいです。
https://book1.adouzi.eu.org/s6427j/




