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【完結】転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!〜二つの王冠の子〜  作者: 木風


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第21話「ポテトの塩気と氷の食感」②

……ごめんなさい。

研修医の頃、妊婦さんに『いつか悪阻は終わりますから』なんて、気休めみたいに言っていた。

今ならわかる。もっと寄り添ってあげるべきだった。


けれど不思議なことに……数ある匂いの中で、エドの匂いだけは平気だった。

むしろ彼の匂いに包まれていると、不思議と落ち着いて、深く眠れる気さえした。


「無理に食べなくていい。少しずつでいいから」

「うぅ……マックのポテトが食べたい……」

「まっく?」


吐き過ぎてかすれた喉で、必死に説明する。


「五ミリ角くらいにジャガイモを細長く切って、油で揚げて……塩をたっぷり振って……」

「すぐに厨房へ依頼しよう」

「うぇっ……」


説明を終えると同時に、またトイレへ駆け込む羽目になる。

涙目で戻ってくると、鼻をくすぐる香ばしい油の匂い。懐かしい記憶が一気に蘇る。


「フライドポテト……!!!」


テーブルに積まれた揚げたてに飛びつく。


「っ熱っ!……でも、美味しいーー!!」


油のじゅわっとした感じと絶妙な塩味。これだよこれ!

信じられないけど、不思議と吐き気もしない。


「食べられるものが見つかって良かった。いつでも作れるよう厨房に伝えておく」

「うぅ……ありがたい……!エド!みんなにボーナスあげて!!」


感動に涙目になりながら叫ぶと、エドがふっと笑った。

グレープフルーツを欲する妊婦が多いと噂に聞いていたけど、私は断然ジャガイモ派らしい。


「……ポテチも食べたい……」

「ぽてち?」

「ジャガイモを薄くスライスして、油で揚げて、塩を振るの!」

「それは……先ほどの料理と同じに聞こえるけど?」

「ち・が・う!全然違う!!パリパリのやつが食べたいの!!!」


「脱水になりそう……スポドリ……」

「……すぽどり?」

「塩と、はちみつと、レモンを水に混ぜて……」


「氷が食べたい……」

「……齧るのか?」

「うん……多分、鉄欠乏性貧血を起こしてる……」


ベッド脇のグラスを手渡されると、そっとグラスに蓋をするようにエドの大きな手が乗せられる。


「見ていてごらん」


掌の紋が淡く光り、空気がひやりと震えた。


……コロン、コロン。


一口大の氷が透明な音を立てて、次々とグラスの中に落ちていった。


「氷!?魔法で出したの!?食べられる!?」

「もちろん」


一個手に取ると、確かにひんやりとした氷……

恐る恐る齧る。カリッ、バリッ。冷たい感触が喉を抜けると、吐き気がすっと遠のき、胸の奥が軽くなる。


「えー!?何この掌ー!!便利過ぎる!!」


思わずグラスを置き、エドの掌を両手で包む。氷は冷たいのに、その手は魔法の余韻か、いつもより温かい。


「ふっ。王太子を便利なんて呼ぶのは、この国でリエルくらいだろうな」

「ご、ごめん……だって氷が嬉しすぎて……」

「構わないよ。俺は代わってやれないから……せめて役に立ててよかった」


真顔で言い切るその姿に、胸がじんと熱くなる。

エドは氷の入ったグラスを手にし、私の隣に腰を下ろすと、氷を一つ手にし、口元に運ばれ口に含む。

氷の歯ごたえを噛み締めていると、満足そうに指を舐めるエドの姿を見て、思わず顔を背けてしまう。


「氷が欲しくなったら、いつでも言って構わないから」


それからというもの、エドはできる限り執務を私の部屋でこなすようになった。

ぐったり横たわる私の髪を撫で、背をさすり、氷がほしいとねだればすぐに掌から、魔法で出してくれる。

なんなんだよ……なんでそんなスパダリ感凄いんだよ……

甲斐甲斐しく世話をしてくれる彼を見ていると……あぁ、本当にこの人と結婚して良かった。

そんな柄にもないことまで考えてしまうのは、きっと全部マタニティブルーのせいに違いない。




「……気持ち悪くない……!」


ある日突然始まった悪阻は、予告もなく終わりを告げた。


マジで良かった……!

数日後に控えた祝賀の場、洗面器抱えて出席も覚悟してたんだからね!?


少し胃のむかつきは残るけど、もう吐くほどじゃない。

普通に食事が摂れるって……なんて素晴らしいことなんだろう。


「お食事が摂れるようになって、本当に良かったです」

「お腹の赤ちゃんのために、二人分ご用意しますね」


……二人分!?

この世界に体重管理なんて概念は無いらしい。

食べ過ぎて妊娠糖尿病や高血圧症候群になったら大変なのに……

採血も採尿もなし、完全に自己管理オンリーとか、難易度高すぎる。


妊娠を理由に公務や練習は免除されたけれど、やっと悪阻を乗り越えたと思ったら今度は自己管理との戦い。

私の転生生活、ほんとハードモード過ぎる。


「せめて、もう少し元気かどうかわかる何かがあればなぁ……」


……ポコッ。


「動いた!?今の……赤ちゃん、元気って教えてくれたの!?」


最初は腸の動きかと思った。

けれど、間違いなく内側から小さな命が合図を送ってきていた。


初めての胎動に胸が熱くなり、ようやく『母になる』実感が全身に広がっていった。

ブックマーク、☆☆☆☆☆、リアクション

よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ


※本作には、この物語の前段階にあたるお話しがあります。

ご興味のある方はそちらもご覧いただけると嬉しいです。

https://book1.adouzi.eu.org/s6427j/

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