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【完結】転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!〜二つの王冠の子〜  作者: 木風


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第18話「ページをめくる指と、絡む指先と」②

「わふっ!」


執務を終えてリエルの部屋を訪れると、彼女と一緒に真っ白な大きな毛玉……いや、犬が出迎えてきた。


「……毛玉が」

「毛玉じゃなくてワンワン!だってば。やっと今日、連れて来てもらえたんだよね~!」


リエルが嬉しそうに白いフワフワを抱きしめる姿は確かに愛らしい。

だが、その毛玉が撫でられながらも、時折こちらを確認するように視線を寄越すのがどうにも気に食わない。


「……まさか夜は寝室にも?」

「侍女が夜は控室で預かってくれるって。一緒に寝たいのにね~?」


さすが選りすぐりの侍女をリエルの担当にして正解だった。

提案してくれた侍女に思わず心の中で感謝してしまう。


眉を寄せながらも、リエルが毛玉に頬を寄せて笑う姿を見ていると、不思議と胸の抵抗感が薄れていく。

どう足掻いても、リエルが笑ってくれるなら……結局はすべて許せてしまう。


撫でられる毛玉を横目に、ため息混じりに問いかけた。


「俺がいない時は、リエルを頼むよ」


毛玉は「わふっ」と一声。

……通じているのかは分からないけれど、その頼もしい声に思わず苦笑がこぼれた。




「殿下がいらっしゃいました」


「お疲れ様」

「今日一日、どうだった?」


テーブルに料理が並べられ、従者たちが静かに下がると、二人きりの晩餐が始まる。

午前中の練習のこと、本の感想を話し合ったり、取りとめもない出来事を並べたり……。


「さすがに一週間休むと、執務が溜まっていてね」

「夕方に戻ってきて大丈夫だったの?」

「コンラートに押し付けてきた」

「ぶっ!今頃困ってるんじゃないの?」

「……本当に優秀な側近に恵まれて良かったよ」


笑いながら交わす、なんてことのない会話。

一緒に食事を摂り、一緒に笑って、一緒に眠る。

王太子と王太子妃という特別な立場なのに、こうして普通の夫婦みたいに過ごせるなら……悪くない。そう思えた。




そんな穏やかな日々が続いたある日のこと。

珍しく昼食を共にしていると、従者が慌ただしく部屋へ駆け込んできた。


「殿下、ユリオス様から急ぎの封書が」

「……持ってきてくれるか?」


手渡された封筒の蜜蝋がパキッと割れる音が、やけに大きく響いた。

目を走らせたエドの顔が見る間に強張り、青ざめていく。


「エド……手紙には、なんて?」

「……明日、セシルと帝国皇女の婚約内定が公示される……と」


……内定?

え?私たちの結婚を前倒しにしたことで、セシルの婚約は無くなったんじゃなかったの?


「嘘……何で?」

「本来なら、内定まで両国間のやり取りに一年は要すると見ていた。だが……」


ということは。

明日発表されるということは、一年前からすでに話が動いていたということ。

その頃、アリエルはまだルシアンと婚約していた。

私とエドが結婚を早めたところで……実は、何の意味もなかったってこと?


頭の中で、后妃の言葉が甦る。


『未来の王妃殿下。どうか、その座を大切になさって』


私なんて、后妃にとってはいてもいなくても同じ。

取るに足らない存在だったんだ……そう思い知らされる。


「エド……セシルは、どうなっちゃうの……?」

「……」

「帝国に……連れて行かれるとか、そんなこと、ないよね?」


答えの代わりに、固く握られた手の熱だけが伝わってくる。

悔しいのは、私以上にエドのはず。

それでも……。


「っセシルの助けになるんじゃなかったのかよ!?」


無理して笑っていたセシルの顔が頭に焼きついて離れず、思わず声を荒げてしまう。

エドは……叶わないことを絶対に口にしない人だ。

何も言わないってことは……きっと、そういうことなんだ。


その夜は、ほんの少しキスを交わしただけで、何も言葉を残さず抱き合って眠った。


そして翌日。

帝国の第一王位継承権を持つ皇女と、セシルの婚約内定が正式に公示された。


さらに同時に、発表されたのは……一週間後、セシルが帝国に一年間留学する、という事実だった。


セシルが出発するまでの一週間、私はほとんど毎日のように面会を求め続けた。

手紙を送り、侍従に取り次ぎを頼み、声が届くものなら廊下に立ってでも呼びかけた。

それでも返ってくる答えは、どれも同じだった。


『留学準備で多忙のため、今は叶いません』


……事務的で、どこか冷たい文言。

まるで役所の窓口から届く定型通知のようで、セシルの気配も呼吸も感じられない。

彼自身が返していない。その確信だけが、胸の奥をじわじわと蝕んでいく。


避けられているのだろうか。

会いたくない、と言われたのだろうか。


考えまいとしても、思考はそちらに寄っていく。

日ごとに不安と焦燥が募り、落ちていく体温と同じ速度で心も沈んでいく。

視界の端すら灰色に感じられ、食欲も薄れていった。


そして、ついにセシルの出立の日がやってくる。

ブックマーク、☆☆☆☆☆、リアクション

よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ


※本作には、この物語の前段階にあたるお話しがあります。

ご興味のある方はそちらもご覧いただけると嬉しいです。

https://book1.adouzi.eu.org/s6427j/

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