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【完結】転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!〜二つの王冠の子〜  作者: 木風


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第16話「忘れ物のキスと、神さまへの誓い」②

侍従の手で正装を整えられ、襟を正し、腰帯を締める。

鏡越しに自分を見据える間、言葉は一切なく、ただ最小限の動作だけが続いた。


……リエルは大丈夫だろうか。

昨晩、無理をさせてしまったのではないかと、そればかりが気にかかる。


初めて夜を共にした姿を思い出すだけで、愛しさが胸を満たし、溢れて止まらなくなる。

準備が整ったら、すぐにでも彼女のもとに戻りたい。

きっと今日の彼女も美しいに違いない……そう思うだけで、逸る気持ちが抑えられない。


会った瞬間、抱きしめたい衝動を我慢できる自信はない。


迷った末、逸る心を隠すように深く息を吐き、立ち上がった。

彼女はきっと口を尖らせながらも、この手を握り返してくれるだろう。

そんな確信を胸に、足早にリエルの部屋へと向かう。




扉がノックされ、濃紺のローブを纏ったエドが静かに部屋へ入ってきた。


金の縁取りが光を受けてきらめく。

鏡越しに映る私のアイボリーのドレスも、刺繍の糸が同じように煌めいていて、隣に並べばまるで計算されたかのように調和してしまう。


……え、いつのまにリンクコーデなんて作ってたの!?

いやいやいや、私の意見どこ行った!?相談とか無かったの!?

くっそ……マダム・フルールとこいつ、絶対グルだろ!!!


けれど当の本人は、そんなこと露ほども気にしていない様子で、当たり前のように手を差し伸べてきた。

大勢の侍女や従者の視線が集まる中、その手を取るのはやっぱり気恥ずかしい。


「リエル」

「……はいはい」


差し出された手を受け取ると、自然と口元が緩んでしまう自分がいた。


そのまま二人並んで廊下を進み、豪奢な馬車へと向かう。

外には楽師や兵士たちが整列し、楽器や武具を整えながら静かに行進の準備を整えていた。


馬車の扉が開かれ、エドにエスコートされて中に足を踏み入れる。


車輪の軋む音と蹄の響きが、次第に石畳を伝って広がる。

窓の外を覗けば、王都の中心にそびえる神殿の白亜の尖塔が陽光を浴び、金色に輝いていた。


「……でっか……」


思わず小声で漏れる。

まるで空に突き刺さるように聳えるその姿は、魔王城とはまた別の意味で圧倒的な威圧感を放っていた。


やがて馬車がゆっくりと停まり、従者が恭しく扉を開ける。

外には整列した神官と巫女たちが待ち構えており、厳かな空気が張り詰めていた。


差し伸べられたエドの手を取って外へ出ると、眩しい光とともに大理石の階段が目に飛び込んでくる。

その先、神殿の扉までは赤い絨毯が真っすぐに敷かれ、両脇には兵士たちが整然と並んでいた。


「リエル」


隣から届くエドの声は落ち着いている。

その手だけを頼りに……縋るように、一歩ずつ階段を上がり、神殿の荘厳な扉の前へ進む。


扉が重々しく開かれると、冷たい空気とともに神殿内部の神聖な雰囲気が押し寄せてきた。

高くそびえる柱、天井一面に描かれた聖獣や精霊のフレスコ画。

中央に据えられた祭壇は白い大理石で造られ、金の燭台に灯された炎が静かに揺れている。


神官長が進み出て、朗々とした声を響かせた。


「アストリア王国の王太子、エドガー・ルクス・アストリア殿下。

ならびにクローバー公爵家令嬢、アリエル・C・ラバー殿……」


堂内に緊張感が満ち、足音すら吸い込まれるような静寂が広がる。


私とエドは並んで進み、祭壇の前に跪いた。

差し出された銀盆に手をかざすと、澄んだ聖水がゆらめき、そこに金色の光が浮かび上がる。


「この聖水をもって、二人の契りを神々へと示す」


神官の言葉に従い、私はエドと共に聖水に指先を浸し、額に小さく印を描いた。

冷たい雫が肌に触れた瞬間、全身を包み込むような清浄な気配が広がる。


「ここに、二人の結びを認める」


神官長の宣言と同時に、祭壇の炎が大きく揺れ、天井から差し込む光がまるで祝福のように私とエドを照らした。

静かなはずの堂内が、ざわめいたように感じられる。


隣を見ると、エドはいつもの冷静な表情を保ったまま。

けれどその瞳の奥は確かに輝き、私の胸の奥にずしりと重みが落ちる。

これはもう、後戻りできない……そう強く悟らされた。


「アリエル殿、少しお時間をいただけますか」


神殿を後にしようとしたその時、不意に神官の声が背に届いた。


「あ、はい……」

「エドガー殿下は、先に外へお進みください」


え?私一人だけ?

振り返った神官は、男なのか女なのか、年齢すらも判別できない不思議な人物だった。

けれど声は柔らかく、まるで脳に直接届くようで……あぁ、これが『一/fゆらぎ』ってやつなのかもしれない。


神官はゆるやかに掌をこちらへ向け、言葉を紡いだ。


「あなたの中には、もう一つ魂が宿っていますね」


……っ!

神官の言葉にドキリとした。

この人、気づいてる。私とアリエルが別人だって。

そして、アリエルの魂はまだ私の中に……?


「本来なら終えるはずの生が、深い眠りについているようですが……」

ブックマーク、☆☆☆☆☆、リアクション

よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ


※本作には、この物語の前段階にあたるお話しがあります。

ご興味のある方はそちらもご覧いただけると嬉しいです。

https://book1.adouzi.eu.org/s6427j/

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