第10話
まだ風邪が治らない。今から寝ます。早く人並みになりたーい!
神殿に沢山の贈り物が届きました。この間のお詫びに、プレゼントを山ほど貰いました。お詫びって何だろう?とグランドロスさんに聞いても答えてくれません。中を見ましたが心臓に悪そうな豪華な物ばかりです。
「エリーナ、神殿から貰った。好きな物を選んでいいぞ。もちろん!全部貰っても構わない」
大きな箱型の入れ物(ゲームでよく見る宝箱)を開けて見ると沢山の品物、服にアクセサリーその他諸々がぎっしり詰められていた。
「え?これ、全部?要らない!使わないもの」
前世のことわざで、ただより高い物はない。対価が何かも分からないのに貰えないわ。
幾ら綺麗でも、パーティーにも行かなければ、街中に行くことも無い私には無用の長物だわ。
簡単に着れるワンピースみたいな感じ物だったらもらえるのに、フリフリのドレスは要らないのよねー。
好みが合わない物は返すのが1番いいよね。
「気に入るのが無いのか?」
グランドロスさんが、聞いて来たけど今の私に必要の無い物ばかり。
せっかく持って来てくれた、グランドロスさんに悪いかな?
そうだ!ランドが気に入るものないかしら?
「ランド、どれか欲しい?」
ランドが、箱を覗いて見ても気に入るのはなかった。
「う〜ん?要らない」
ランドの、気を引ける物はなかったようです。
グランドロスさんの顔どんどん険しくなっている。
ひとつ位選んだ方がいい?
えーっと、あ!これにしよう!
「グランドロスさん!これがいいです。ありがとう!後は勿体無いので神殿に返してくださいね」
見付けたのは、ゴルフボール大の綺麗な石でした。
これを使って、簡単な遊びをランドとしようと思います。
「気に入ったか!良し!残りは返してくる」
「御礼言っといてください。ゴルフごっこで遊べます」
「ゴルフごっこ?それはどんな遊びだ?」
ここではない物ですから説明が必要ですね。
「ボールの大きさの穴を掘って、それに向かってボールを入れる遊びです。回数少なく入れた方の勝ちです」
残りを返して来るー!と言って飛んで行きました。
即実行のグランドロスさんです。仕事が早い。
大きな入れ物は、邪魔に成るから良かったわ〜片付いて。
「パパ!やったね〜!」
ランドも喜んでます。2人がにこにこしているのはいい事です。
「ランド、これで遊びましょう」
「はーいママ!」
小さな庭に手の平サイズの穴を掘って、棒を持って似非ゴルフごっこでもして遊ぶ事にしました。これ位だったらランドと一緒に遊べます。
「さあ、ランド頑張って穴に入れてね」
一生懸命頑張って入れようとしてる、ランドを見てるのは楽しいです。
「わーい!入った!今度はママの番〜」
石をころころ私の方に転がしてくれました。よちよち歩きで、ペタペタ言わせながらころころ石を転がすランド可愛いわ!
「今度はママが頑張るわ!えい!」
場外ホームランです!力を入れ過ぎて下に落ちてしまいました。
残念!続きができません。
後で、グランドロスさんに取ってきて貰おうと思います。
「あ〜あ〜!落ちたよ〜ママ」
木の、住まいから落ちた石は簡単には取りに行けません。
ランドが残念そうにしています。
「ごめんね、ランド。ママ下手ね」
違う遊びを考えないとダメですね。今度は失敗しないわ!
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神殿にて、神獣様と神殿長の会話(突っ込み主に神殿長の心の声)
「エリーナが、フルピカ王国からの石を受け取った。喜んでいた」
神獣様が嬉しそうにしています。お怒りが少しは軽減されて喜ばしい事です。
「それではその宝石を加工させましょう」
宝石を簡単に丸くしていただけでしたので、選ばれたら加工します。と添え書きがしてあった物でした。
「装飾?要らないぞ。転がしてランドと遊んでいる、玩具だろう?俺もエリーナがランドと楽しく遊んでくれて満足だ!他のは要らないから返す」
ドサッと箱が下された。は?神獣様!今なんと?転がして遊んでいると言いましたか?幻聴ではなく?ああ〜国宝級がー!泥塗れ?
「……フルピカ国の贈り物ですよね?神獣様」
間違いないか、もう一度失礼だと思いましたが聞かせていただきました。
「ああ、間違いない!確かめたからな。2人共に気に入ってる」
知らない、とは幸せな事ですね。宝石は見て飾って美しさに魅かれるのだと思っていましたが!
まさか!地面に転がして遊んでいるなど、誰にも想像できません。
ましてや、国宝級の宝石を地面にですか?他の人が聞いたら卒倒しますね。
これは、秘密にするべきか?
それよりも、他の物で代用して貰える様にお願いするか。
どちらにするか悩みます。
「そ、そうですか。それはフルピカ国の王も喜ばれると思います」
いや、この様子だと他の物に変える事は不可能だ。
神獣様の喜び様に太刀打ちできない。
「そうか!宜しく言っておいてくれ。お礼に加護は早めに回らせて貰う」
加護を早め!伴侶様の喜ばれる姿に機嫌が良くなっている。
序でに、ステッペン山脈奥の神殿に、力を注いで貰える様にお願いしてみなければ!
「神獣様、お願いがあります。ステッペン山脈奥の神殿に力を貰えますか?」
あの山にある、スノープリンと呼ばれる果実で勧誘しましょう。確実に行って貰える様に。
「あの山脈は面倒だからなー」
神獣様でも、臭いが凄い山脈は苦手なのだな。ですが行ってください。
「スノープリンと呼ばれる、珍しく美味しい実がなってます。伴侶様にプレゼントしたら喜ばれるかと」
考え込んでますよ。臭いを取るか伴侶様のプレゼントを取るか!
どっちですかー?神獣様。
「む、んーん、エリーナに食べさせよう。神殿に行く連絡はしといてくれ」
おお!伴侶様、様ですな。1番遠く厄介な神殿に誘う事が出来ました。助かります。しかし、気に入ったのがフルピカ国のだけだったとは、誤算でしたね。
それも、他のは要らないと返された。絶望する各国の王の姿が目に浮かびます。
元々自分達の所為ですからね。他の物で頑張って貰うしか手がありません。今度は気に入った物を贈れるといいですね。
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グランドロス
気に入った物を贈れた!満足。エリーナを喜ばせたい為神官長の話に食い付く。誘導されているとは思ってない。
エリーナ
グランドロスさんが悲しむと思ってひとつ選んだ。本当に欲しい物なし。貴族だった時もお目に掛かった事のない石に関しては無知。国宝級の物とわからずゴルフごっこに使用。色はマーブル。
ランド
楽しくママと遊んでれば満足。
神官長
ご機嫌の神獣様に、滅多に頼めないステッペン山脈奥の神殿に誘導に成功。また、神官長の名声が上がる。この世界は神官になっても結婚できる。神官長は由緒正しい家系のサラブレッド。若いながらも優秀で神獣様の扱いも上手い。前の神官長は権力に溺れ神獣様の怒りを買って自滅。
ステッペン山脈奥の神殿
所謂、聖地と言われる場所(本当は違う)だが誰も何も言わない。険しい山に囲まれた秘境。戒律を守らなかった問題児が押し込められている。力を込めるのは脱走防止。神獣様への態度が悪いと、勝手に罰を受けてこれまた自滅。1度入ると出るのが難しい。神官の為の中央神殿とはまた別扱いである。




