金管三人娘の部活動
部活が終わって、私は御師匠と、トランペットをやっているアッキーと帰りの電車に乗りました。金管パートの仲良し三人組です。部活の出来事などを話していました。
「今日はびっくりしたねー。男の先輩たちが、女の子の順位を決めていたなんて知らなかったよ」
その日初めて知ったのですが、私たちが入部したとき、先輩男子たちが好みの女の子を言い合っていたそうです。ランキング表にしていた事実に、腹立たしい気持ちより微笑ましくなりました。
「クラリネットの子が一番か~。てっきりフルートの子が一番だと思ったけど」
私は美人なフルートの女の子を思い浮かべます。御師匠は「男心は違うのよ」と反対意見を述べました。ちなみに御師匠は恋多きオンナです。付き合っている人が途切れたことはありません。
「クラの子は、ほら、守ってあげたくなるようなタイプじゃない。庇護欲をかきたてるっていうか。ああいう子が男には人気あるのよ」
「へえ~」
私とアッキーはその意見に感心します。女は顔じゃないのでしょうか。そういえば、と思います。
「先輩も綺麗なのに誰とも付き合っていないよね」
ホルンのパートリーダーの先輩は非常に美しい女性です。でも、男の気配がないことが不思議でした。
「ああ、先輩は……隙がなさすぎるの。適度に隙がある女が付き合いやすいって話よね」
「……なるほど」
納得して御師匠を見つめます。御師匠は隙だらけです。しっかりしているようでドジばかりです。御師匠は溜息をつきました。
「もうすぐ夏休みね。彼は実家に帰らないから、毎日通って世話するわ」
一人暮らしの彼に、御師匠はいつも尽くしています。夏休みの話に、私は落ち込みました。
「夏休みはこれでもかってくらい、アルバイトのシフト入れられているんだ。何十時間働く羽目になるかな~」
夏休みは容赦なく働かされます。お休みの希望があったら早く言わないと、アルバイトで予定が埋め尽くされてしまいます。御師匠は笑いました。
「あなたは『バイト部』ね。それで私が『恋愛部』」
部活は全員オケですが、言い返せないほどのアルバイト生活でした。御師匠の恋愛部もその通りで、恋愛ばかりしています。私が恋愛一割、アルバイト九割で、御師匠がその逆です。二人でアッキーを見ました。アッキーはアルバイトもしていませんし、誰とも付き合っていません。
「私は……『通学部』かな」
あはは、と苦笑いするアッキーは、往復五時間以上かけて大学に通っています。彼女の親御さんが一人暮らしを許してくれないということで、頑張って通学していました。
「傘とか飲み物とか、いつも荷物がいっぱいだよ。毎日小旅行って感じかな」
一人だけ夏休みが嬉しそうなアッキーでした。




