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思い出きらきら  作者: チャーコ


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お仕事していて起こる出来事

 働く時間が長いと、どうしても寝不足になります。つい通勤電車の座席でうとうとしていたら、扉が開く音がしました。扉の開く音は、自動ドアの開く音に似ていますので──。


「いらっしゃいませー!」


 寝ぼけていた私は座席から立ち上がり、大声で挨拶してしまいました。直後、我に返り、猛ダッシュで電車から降りました。少なくない乗客が驚いていましたね。しばらく、その時間の電車に乗れなかったです。




 たまに「このケーキください」とショーケースを指さすお客様がいます。ケーキの名前がわからないので、普通の店舗なら前に回り込んで確認するのですが、W店は裏口と裏門を通らなければいけないので、ショーケースの前まで行くのに時間がかかるのです。なので、仕方なく──。


「申し訳ありません。名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


 そう尋ねると、ご夫婦で来店されていた奥様が不機嫌になりました。


「なんで名乗らなければいけないのよ」

「お前、ケーキの名前だよ」


 ご主人様が突っ込んでくださったので事なきを得たのですが、一歩間違えるとクレームですね。「ケーキの名前」と訊けばよかったです。




 いつも十三時頃、ケーキを買いに来てくださる男性のお客様がいました。見た感じ三十歳前後の、整った顔の男性。チーズケーキを一週間連続で買ってくださった次の週は、チョコレートケーキを一週間連続で買ってくださいます。同じケーキを一週間買うのが、そのお客様の特徴でした。


「毎日同じくらいの時間に来るよね」

「しかもケーキ一個だけだから、自分用かな。おもてなしで買うんなら、もっと個数を買うよね」


 従業員の間では、『若社長』と呼ばれていました。毎日十三時頃いらっしゃるとなると、仕事は時間に融通が利くのだと想像したのです。で、若くて格好良いので若社長さんだと。


 ある日、パートさんが若社長さんに挨拶していました。普段は「いらっしゃいませ」だけなのですが──。


「いつもご来店ありがとうございます。本日はどのケーキにいたしますか?」

「……はい。えーと……」


 でも、そのやり取りの翌日から、若社長さんは来なくなってしまったのです。ええー、常連さんと捉えられていたのが嫌だったのでしょうか。男性のお客様のお気持ちはわかりかねますが……どうなのでしょうね。男性のみなさまは、ケーキ屋さんで常連さんになるのは恥ずかしいですか? まったく恥ずかしいことではないですよ?


 働いていると、色々な出来事が起きますね。


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