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思い出きらきら  作者: チャーコ


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私の取り柄

 クリスマスやひな祭りには、特製の実演販売ケーキを作るらしいです。イベントの前には、また工場に行って練習しました。


 クリスマスの実演デコレーションケーキは、苺たっぷりの別店舗では販売しない特別商品です。予約の多いこと多いこと。当日は相当売れました。


 ひな祭りも売れると踏んだ店長が、三月二日の閉店から三日の朝にかけて、実演デコレーションケーキの土台を作ることにしました。実演主任の私と二人で、徹夜で作業です。生クリームを泡立てすぎて、腕が痛い!(機械で泡立てるのですが、最後の調整は手作業でした)


 明け方、急いでホテルでシャワーを浴びて、お店に戻ります。お化粧する時間がなかったので、バックヤードで軽くお化粧していると、店長が顔を覗き込んできました。


「へえー。すっぴんだと、そんな顔なのね」

「……普段とそんなに変わらないですよ」


 私はいつも、そんなに濃いお化粧はしません。ファンデーションとチークと口紅くらいです。不器用なので、アイメイクがそんなに得意ではないのです。


「アイメイクが得意だったら良かったんですけどねー。そんなに目が大きくないので……」

「そうね。そんなに目が大きくないわね」


 事実でも、はっきり指摘されると少々言い返したくなります。店長は美人さんなので、ちょっと悔しかったのもありますが。


「……私の取り柄は、見えないところが多いのです」

「見えないところ?」

「視力がいいとか、頭皮とか、血とか」


 美容院でカラーリングすると、頭皮が丈夫だとよく美容師さんに褒められます。そう言うと、店長は笑い転げました。


「髪が綺麗ならわかるけど、頭皮が丈夫って褒められるのは初めて聞いたわ。血も褒められるの?」

「献血に行くと、必ず『とてもいい血液』と言われます」


 視力や頭皮や血液も重要ですが、目には見えないので、店長のようなわかりやすい美人だったらいいのになあと思いました。


 徹夜明けでハイになっていた三月三日の朝でした。


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