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思い出きらきら  作者: チャーコ


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新入社員生活のはじまり

 四月が始まり、入社式が行われました。同期は私含めて二十人です。入社式の翌日から二週間、新入社員研修があるということです。二週間後の研修終わりまで、配属店舗は内緒だそうです。二十人はバラバラに配属されるのでしょう。


 新入社員として、私は張り切って研修に臨みました。他店舗から店長や先輩社員がきて、心構えのお話や、実地訓練をしてくれます。ホール訓練のとき、とある店長が教えてくれたフォークとナイフの位置が違うことに気がつきました。それを指摘するのは躊躇われますが……同期たちが全員間違ったことを覚えてしまうのはいけないのではないでしょうか。


「あの、フォークとナイフの位置が違います」


 私は恐る恐る、失礼にならないように、店長にこっそり伝えました。教えてくれていた店長は、恥ずかしそうに笑いました。


「そうか、正しくはどうだっけ? 随分昔に教わったから忘れていたよ」

「ええと、こうと、こうです」


 私はフォークとナイフの位置を直しました。店長は気を悪くしたふうもなく頷いています。


「ありがとう。さすが長年アルバイトしていただけあるね」

「いいえ。アルバイト研修で教わっていただけですから……」


 同期の仲間にアルバイト経験者はいません。何人かの先輩社員と、既に顔見知りの私は、割と異質なのではと思いました。


 同期との雑談中、びっくりするお話を聞きました。


「この会社、ものすごい圧迫面接だったよねー」

「そうだね。厳しいこと言われたよ」

「……え?」


 ものすごい圧迫面接? 和やかそのものの面接で、圧迫の「あ」の字もなかったですが……。


「ちょっと待って。圧迫面接って何? そんな面接じゃなかったけど」


 私の質問に、同期は笑いながら答えてくれます。


「それは、あなたがアルバイトしていたからだよ。この会社の仕事がどんなにきつい仕事かとか、やっていけるのかとか脅された感じ」


 確かにアルバイトをするまでは、私も洋菓子店に夢を持っていた気がします。楽しそうな仕事とか、美味しいお菓子を食べられそうとか……。そんな夢は、アルバイト初日に木っ端微塵に打ち砕かれましたけれど。もしかしたら同期たちも、夢がある仕事と思って応募したかもしれませんね。それなら圧迫面接も納得です。


 研修中、顔見知りの社員に挨拶をしたり、同期と飲みに行ったりしていると、アルバイトをしていたお店から連絡をもらいました。なんでも私の送別会を開いてくれるらしいです。私は喜んで、お休みの日にお店に向かいました。


「ああ、きてくれたのか! 手伝ってくれ!」

「……はい?」


 お店は改装期間に入っていました。改装前にものを捨てたり、運び出したりしなくてはいけません。送別会だと聞いたからきたのに……と理不尽さを感じつつ、改装のお手伝いをしました。


 お手伝いのあと、飲み会がありましたが、私の送別会というより慰労会の様相です。それでもみんなに声をかけられました。


「お前がいなくなってから、一気に人手不足になったよ」

「帰ってきて、うちで働かない?」


 年収百四十万円のアルバイトがいなくなったら、それは人手不足になるでしょうね。帰ってきて、と言われましても、配属店舗がどこになるかはわかりません。

 それでも仲の良い職場仲間にそう言われますと嬉しくなります。終電までおしゃべりしながら、賑やかに飲みました。


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