就職先が決まりました
大学三年生も終わり頃になると、そろそろ就職活動です。大学で紹介された会社を中心に、企業研究を始めました。
一応、アルバイト先の洋菓子会社も受けることにします。何店舗か支店のある洋菓子会社で、洋菓子業界ではそこそこ有名な企業でした。
就職活動中は、あまりアルバイトのシフトに入れません。何次試験まで通るかわからないからです。でも、毎日のように「今日は入れない?」と電話がかかってきました。
アルバイト先の会社の最終面接の日がきました。十五時から本社でと伝えると、十四時までは働けるよね、と当然のように返ってきました。ちょっと待ってください。お昼ごはんくらいは食べさせてください。十四時まで働くと、副店長がおむすびを二つ作ってくれました。
「これ食べて、頑張ってきてね」
「ありがとうございます」
急いでおむすびを食べ終え、リクルートスーツに着替えて本社に行きます。十五時には間に合いました。
人事部長と面接すると、「うちのアルバイトが受けに行きますので、どうぞよろしくお願いします」と店長が言っていたと伝えてくれました。さすがは店長です。私の後押しをしてくれています。その割には、ぎりぎりまで働かされましたが。
「S店で何年も働いているんだってね。あそこのお店は忙しいでしょう?」
「そうですね。今日も十四時まで働いてきました」
人事部長は驚いた様子です。それはそうでしょう。一時間前まで働いていたのですから。
「それは大変だったね。普段はどんなふうに勤務しているのかな?」
「土日はランチ前の十一時から閉店作業が終わる二十四時までです。平日は早番で働いて、大学の講義を受けて、部活動を行い、習い事二つ終わったら、遅番で働いて帰ります」
自分で答えながら、働きすぎだなあとしみじみしてしまいました。
終始和やかな面接で、翌日内定の電話がかかってきました。
別の会社の社長面接の日がきました。こちらも和やかなムードです。ですが、一つの質問で私は戸惑いました。
「他の会社の内定はもらっていますか?」
就活本には、この質問の場合、正直に答えたほうがいいと書かれていました。なので、私は内定をもらっている旨を話しました。
そうしたら、その会社に落ちてしまいました。ええー。内定をもらっていないと答えればよかったでしょうか。未だにその謎は解けていません。
そうして私の就職先は、アルバイト先の会社になったのです。




