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プロローグ

 伊集院明人はエロゲのキャラである。

 金髪ロン毛で背景に薔薇を出現させる鬱陶しい男。

 親が金持ちでわがまま放題育ったバカ男。

 バッドエンドルートで寝取った挙句の果てにヒロインの精神を壊すまであれやこれやするクソ野郎。

 顔と親の財力だけはステータスが振り切れているが、中身はわかりやすい悪党。

 ……そんな最低の男には中の人がいた。


 当初、明人は前世の記憶を持ちあわせていなかった。

 ところが、中学生になったある日、明人は盗んだ原チャで走り出したところをパトカーに跳ねられ、前世の記憶を思い出した。

 明人の前世は10年物の自宅警備員。

 不摂生な生活を送ったせいか、エロゲをやりながら己のジョイスティックを操作中に心臓発作で死亡。

 死してもなおジョイスティックを離さぬその姿は、某有名掲示板で散々ネタにされただろう事は言うまでもない。


 そんな惨めな人生を送った明人は当初は、『よくある転生モノじゃん。ヒャッハー人生やり直しktkr(キタコレ)!』と全力で喜んでいた。

 ところが入院生活の最中に鏡を見た時、ある疑念が頭によぎった。


(もしかして俺はエロゲの悪役なのでは……)


 鏡に映っていたのは鬱陶しい金髪、王子様のような軽薄な美形。

 なぜか自然と殺意が湧き上がってくる。

 それだけならそんな疑念は抱かない。

 だが、今世での伊集院明人という名前。

 死ぬ直前までプレイしていたゲーム、『らめ(以下見苦しい表現のため自粛)』の悪役の名前だったのだ。

 念のため全力で今のプロフィールと比較する。

 実に親の会社の名前まで一致。

 しかも前世の記憶によると、明人はどのエンディングにおいても悲惨な最期を遂げるのだ。


 『らめ(以下見苦しい表現のため自粛)』はパッケージ&あらすじ詐欺という罠を張り、しかしその内容はNTR、陵辱、精神破壊、ハッピーエンドなしの最悪の鬱ゲーである。


 伏線だけ引いて投げっぱなし。

 サスペンスの皮を被った、ただ単にヒロインをなぶり者にするだけの展開。

 意味も説明もなく次々と死ぬヒロイン達。

 絵だけのゲームという評価すら生ぬるい。


 その悪質さによって某巨大掲示板において大規模な祭りが発生、開発元にDVDを割って返送、各種イベントの爆破予告などの騒ぎにまでなった。


 その中のバッドエンドは、主人公である飯塚亮(いいづかりょう)の一部が某アジアの大国に出荷されるという壮絶なものである。

 トゥルーエンドですらもヒロインは薬漬けにされて出荷される。

 救いなど一切ない完全な鬱ゲー。

 シナリオライター頭おかしい説が定説とまでなってしまった。


 死んでもジョイスティックを離さなかったほど性欲を持て余した明人ではあるが、ここまでの悪役をする根性も性癖もない。

 しかも伊集院明人はトゥルーエンドでは警察に捕まり、家を放逐、ホームレスになったところを寝泊りしていた公園で中学生に集団リンチを受け死亡。

 バッドエンドでもヒロインを闇の組織に出荷した後に不審な死を遂げる。

 結局、誰が黒幕なのかはわからずじまい。

 投げっぱなしでエンディングを迎える。


 せっかく人生をやり直せるのにそんな運命は嫌だ!


 長くとも16歳の誕生日までに明人は死ぬ。

 寿命はあと数年。

 明人は決意した。

 運命を変えてみせると。



 これは陵辱系鬱ゲーのフラグを片っ端からへし折って事件解決を目指す一人の悪役の暴力と破壊の物語である。

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