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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第88話 血の海

 もう何人殺したのだろう。

 律儀に数えている余裕なんてなかった。

 十人は超えている気がする。

 もしかしたら五十人くらいかも。

 裁判になったら問答無用で死刑だな、ははは。


 掴みかかってきた信者を撃ち殺す。

 ようやく銃の扱いに慣れてきた。

 でも手が痺れてきたぞ。

 銃声のせいで耳鳴りが止まらないし、頭もくらくらする。


 うわっ、顔を切られた。

 鼻から勢いよく血が垂れてくる。

 唇がちょっとビラビラと揺れていた。

 目は見える。

 でも視界が赤くなってきた。


(俺、まだ大丈夫だよな……)


 いやいや気にするな。

 余計なことを考えたら負けだ。

 ポジティブにいこうじゃないか。


 そんな風に思っていると、ついに拳銃を使い切ってしまった。

 もう弾は一発も残っていない。

 どうするんだ、まだ信者が残ってるのに。


 大急ぎで鞄を漁る俺はニヤリと笑う。


「あっ、いい物あるじゃーん」


 見つけたのは三本の小さなガラス瓶だ。

 瓶の内側は黒いドロドロとした物体で満たされている。

 これは闇医者の亜門から貰った呪液——俺の目と指が腐って溶けたものだった

 餞別として渡されたのをすっかり忘れていた。


 俺は小瓶の一本を信者に投げつける。

 命中した瓶が割れ、飛沫が散って複数人に付着する。

 その瞬間、信者達は絶叫しながら腐り始めた。

 彼らはものの数秒で異臭を放つ血肉の液体になる。


 凄惨な死を目の当たりにした信者は立ち止まる。

 さすがに今のはショックだったらしい。

 俺は気分が良くなり、舌を出して笑った。


「へへっ、一撃必殺だ」


 俺は短剣を拾うと、そこに二本目の呪液を垂らす。

 呪液はすぐに刃を包んで定着した。

 これで繰り返し使えそうだ。


「おー、いいねえ」


 自分の発明に酔い痴れていると、いきなり腹を刺された。

 だから俺は笑いながら相手を刺し返す。

 その信者は傷口からグズグズに溶けて死んだ。

 立ち上ってきた悪臭に嘔吐しつつ、俺は大喜びで駆け出す。


「どけどけー! 俺は最強だー!」


 俺は信者を次々と切りつけていった。

 掠り傷でも呪液で腐って死ぬため、とにかくスピード重視で仕掛ける。

 信者達は為す術もなく死んでいく。

 さっきまでの苦戦が嘘のように絶好調だった。

 楽しい、楽しい、楽しすぎる。


 最後のガラス瓶を剛速球で投擲する。

 瓶は信者の顔面に炸裂し、黒い呪液が四方八方に飛散した。

 それを浴びた者はやはり腐って絶命する。

 溶けた肉がぐちゃぐちゃに混ざって区別が付かなくなってしまった。

 これで皆一つだね、ざまあみろ。


 視界に生きている信者がいなくなった。

 振り返っても死体しかない。

 今の全滅したらしい。

 夢中になっていて気が付かなかった。


 俺は自分の身体を見下ろす。

 傷だらけで血みどろになっていた。

 短剣が刺さったままだったり、裂けた腹から少し腸がはみ出ている。

 無事な所を探す方が難しいくらいだ。

 思ったより酷い有様である。


「……安藤さんみたいにはいかないな」


 俺は自嘲気味に笑う。

 ごぼっ、と口から血が出た。

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