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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第87話 大丈夫

 弾を受けた信者がばたばたと倒れた。

 しかし、後続の信者が容赦なく接近してくる。

 俺は叫びながら拳銃を連射した。


「うわあああああああああっ」


 数人が倒れるも、すぐに立ち上がってきた。

 弾が掠った程度では止まらないのだ。

 ふざけるなよ、雑魚のくせに。

 そんなところまでゾンビ感を出さなくてもいいじゃないか。


 すぐにとどめを刺そうとするも、銃が弾切れを起こした。

 乱射したのは失敗だった。

 焦れば焦るほど上手くいかない。


 俺は急いで鞄に手を突っ込み、予備の拳銃を握る。

 その隙に突進してきた信者が目の前で短剣を掲げた。


 攻撃が間に合わない。

 俺は手を前に出して真剣に呼びかける。


「ちょっ、タンマ!」


 短剣が俺の手のひらを貫通した。

 飛び出した刃を見た瞬間、俺の頭が頭が沸騰する。

 怒りのままに相手の顔に拳銃を押し当てた。


「……ってえなこの野郎!」


 引き金を引く。

 信者の顔が弾けた。

 顔にかかった返り血を拭う。

 口にも入った気がしたので吐き捨てる。


 手のひらを貫く短剣を掴み、一気に引き抜いた。

 激痛で涙がぼろぼろと出る。

 最悪だ、くそったれ。

 手のひらの傷から向こう側が少し見えていた。


(くそ、治るよな。大丈夫だよなっ!?)


 ちょっと穴が開いただけだ。

 傷を縫えば問題ないはず。


 それよりも敵だ。

 怯えるな、殺されるぞ。

 早く始末しなくては。


 拳銃を構えて、撃つ、撃つ、撃つ。

 信者が死んだ、死んだ、死んだ。


 また弾切れだ。

 今度は素早く拳銃を持ち替えてさらに撃ちまくる。

 なかなか順調だと思った矢先、負傷した信者が構わず跳びかかってきた。

 振り下ろされた短剣を避けられず、俺は胸を切り裂かれる。


 新鮮な痛みに顔を顰める。

 俺は相手を蹴り倒して銃弾をぶち込んだ。


「てめぇ、さっさと死んどけよッ!」


 叫ぶと胸が痛む。

 かなりの出血量だ。

 少し動くだけで泣きたくなってくる。


(大丈夫! 皮膚を切られただけ!)


 病院に行けばすぐに治る。

 ここで止まったら終わりだ。

 だから動き続けろ。

 そう自分に言い聞かせて、ひたすら拳銃を撃つ。


 信者がいきなり斧を叩きつけてきた。

 俺はギリギリで飛び退いて躱そうと……いや、避けられなかった。

 手が猛烈に痛い。

 血みどろの床に二本の指が転がる。

 俺は息を呑むも、無理やり自分を励ました。


(大丈夫! 一本も二本も変わらない!)


 腹を刺された。

 熱い、熱すぎる。

 じわじわと血が溢れてくるのを感じた。

 刺してきた信者を射殺し、俺は歯を食い縛って進む。


(大丈夫! そんな簡単に死なないから!)


 刺され、切られ、殴られた。

 掴まれて滅多打ちにされて、頭突きを食らう。

 もう滅茶苦茶だ。


 それでも俺は拳銃をぶっ放し、蹴り飛ばし、殴り返して殺す。

 いいね、だんだんとテンションが上がってきた。

 脳内麻薬がドバドバだ。

 激痛が甘い刺激に変わって意識の外へと追い出される。

 よしよし、これでまだ殺せるぞ。


 そうだ、笑おう。

 笑えばもっと元気になる。


「ははっ、ははははははは」


 撃て撃て、ぶっ殺せ。

 俺は無敵なんだ。

 どいつもこいつも蹴散らしてやる。


「ははは、はは……ひぃ、ははっ……」


 涙が止まらない。

 視界がぼやけるじゃないか。

 弱虫な目を潰してやりたいが、もう一個しかないんだ。

 やっぱり大事にしよう。

 はあ、楽しい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] クズの才能だな。
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