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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第79話 真の脅威

(この人はどこまで事態を把握しているんだ……?)


 棺崎はどんな時でも動揺を見せない。

 それはすべてを計画通りに進めているからではないか。

 根拠のない発想だが、あながち間違っていない気がする。

 とにかく彼女が協力者でいることに感謝した方がよさそうだ。


 当の棺崎は射殺された死体を漁りながら微笑する。


「安藤君は霊退治にはさほど興味がないが、悪人殺しは大好きだからね。頼んで正解だったよ」


「まあ確かに……」


 俺達だけで淀離協会に乗り込むのはあまりに無謀だ。

 棺崎のことだから何か策があるのだろうと思っていたが、想像以上の効果を発揮している。

 俺達が何もせずとも淀離協会が壊滅する勢いであった。


(これならどさくさに紛れて楽に死体を回収できるかもしれない)


 祟りビルの時と似た展開になり、希望が見えてきた。

 ここは棺崎の判断を素直に喜ぼう。

 疑うなんて失礼だ。

 俺が無事でいられるならそれでいい。


「さあ、行くよ。安藤君が暴れている間に目的を果たそう」


「はい!」


 崩落した入口の隙間から建物内へと入る。

 中はホール状の広い空間となっている。

 ただし天井の照明は割れ、あちこちに瓦礫が積み上がって廃墟のようになっていた。

 さらに一帯には白煙が充満し、遠くはうっすらとしか見えない。


「煙幕が焚かれている。安藤君がやったのだろう。敵の視界を奪うことで人数差を覆したようだ」


「そんな簡単にいきますかね……」


「彼の実力なら何ら不思議ではない」


 瓦礫に潰された死体があちこちに倒れている。

 壁際にはいくつかの通路があるが、大半が瓦礫で埋もれて先に進めない。

 安藤が意図的にルートを潰したのだろうか。

 単独で戦いやすいように工夫したのかもしれない。


 建物の奥からは銃声に混ざって怒鳴り声が聞こえてくる。

 たぶん協会の人間だ。

 指示を出しながら安藤に対抗しているらしい。


 耳を澄ませる棺崎は愉快そうに解説する。


「淀離協会は日本でも有数の魔術組織だ。霊や魔術師への対策は徹底されている。しかし今回の相手は安藤君だ。そういったノウハウは一切通用しない」


 爆発音が連続で轟く。

 そしてまた壁か天井が崩落する音が続いた。


「淀離協会にはいくつか支部がある。既に本部の異変を察知して応援を送っているだろうが、到着には時間がかかる。それまでに安藤君が皆殺しにするだろうね」


「あ、安藤さんって一体何者なんですか……」


「秘密主義の刑事……としておこう。あまり詮索しすぎると我々に銃口が向きそうだ」


「えっ」


 俺は反射的に周囲を見回すも、安藤の姿はない。

 銃弾も飛んでこない。

 さっきまで頼もしい味方だと感じていたが、急に恐ろしい敵に思えてきた。

 それは隣で平然とする棺崎も同様である。

 二人は淀離協会よりも危険な存在なのだろう。

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