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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第71話 不審点

 地下室の魔術道具を佐奈の車に載せて、俺達は新村家を出発した。

 美夜子の両親の死体については放置した。

 警察に通報もしていない。

 俺達も不法侵入した挙句に物を盗んでいるため、申し訳ないがこうするしかなかったのだ。


 物が満載で狭苦しい後部座席。

 俺は前を向いてじっと座っている。

 カーナビが示す先は美夜子の死体がある山だ。

 順調に行けば三時間ほどで着くらしい。

 途中で休憩を挟んでも四時間はかからないだろう。


 車体には大量の御札が貼られていた。

 所々に魔法陣を描いた紙も混ざっている。

 美夜子の襲撃をガードするための備えである。

 どこまで効果があるのか不明だが、今のところ異変は起きていない。


 あとは山に移動し、美夜子の死体を燃やして埋葬するだけだ。

 ようやく解決の糸口が見えたというのに、俺の気持ちは沈んでいる。

 不穏な出来事が連続し、いくつもの謎が残っているせいであった。


 ます新村家を襲った泥棒だ。

 美夜子の私物だけを集中的に盗んでいたが、一体何が目的だったのか。

 殺人まで犯して、金品に手を付けないのは割に合わないと思う。


 殺害された両親についても謎が多い。

 地下室に大量の魔術道具を貯蔵し、娘の髪や血を使った呪具まで作っていた。

 オカルト方面に傾倒していたのは明らかだろう。

 かなり本格的だったし、美夜子が悪霊になったことと無関係とは思えない。


 淀離協会という組織も不可解だ。

 須王会と新村家の地下室に協会の道具があった。

 単にオカルト界隈の有名メーカーなら納得できるが、実際は怪しいカルト団体らしい。

 ヤクザに技術提供するような組織とは関わりたくない。


 極め付けは最後に見つけた写真だろう。

 それは美夜子の両親と棺崎のスリーショットだった。


(棺崎はずっと前から新村家を知っていた。そのことを黙っていたんだ)


 俺は自分の意思で美夜子の件を棺崎に依頼した。

 棺崎と新村家に接点があるのはただの偶然のはずだ。

 それなのに、なんとなく腑に落ちない。


 怪しいと言えば棺崎の態度も引っかかる。

 元々の胡散臭さに加え、新村家を出てから特に違和感が大きい。

 運転中の佐奈が様々な質問を投げかけているが、もっともらしく答えているように見えて肝心な部分をはぐらかしていた。

 どうにも信用ならない態度である。


(……駄目だな。疑い出すときりがない)


 俺は髪をくしゃくしゃに掻き毟る。

 堂々巡りの思考で気持ちが沈む一方だった。


 余計なことは考えないようにしよう。

 表面上は棺崎も友好的なのだ。

 下手に口を滑らせて藪蛇になっても困る。


 このまま計画通りに美夜子の件を終わらせる。

 疑問点はさっさと忘れる。

 それでいいじゃないか。

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