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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第70話 活路

 棺崎が棚から紙箱を手に取った。

 彼女は中を覗き見て笑う。


「一つ確かなのは 新村美夜子さんに霊的素養があったことだ。実家がこの状態なら力の強い悪霊になったのも頷ける」


「先生、その箱は何ですか」


「新村美夜子さんの髪で編まれたミサンガだ、こっちは彼女の血で書いた御札だね。霊力ですぐに分かった」


 棺崎が箱の中身を見せてきた。

 確かにミサンガと御札が入っている。

 それぞれ髪と血が使われているらしい。

 失った目の疼きが強まった気がした。

 紙箱を閉じた棺崎はそれを白衣のポケットに押し込む。


「新村美夜子さんのご両親は娘の一部を使った呪具を作るのに執心していたようだ」


「変なこだわりですね」


「こだわりというより、単純に呪の効力が増すんじゃないかな。ご両親は娘の才能を知っていたのだろう」


 新村家はオカルトとの関わりがあった。

 その事実は俺にとって衝撃だった。


 美夜子は元々の才能で悪霊になったのか。

 それとも両親から影響を受けたのか。

 棺崎の話を信じるなら前者に近いのだろう。

 美夜子の霊が異様な力を持っていたのには原因があったわけだ。


(俺への恨みだけで霊になったんじゃないんだな)


 勝手に安堵したところで、俺は地下室のおかしな点に気付く。

 壁や天井の端に奇妙なマークが刻まれていた。

 どれも同じマークで、星印の中心にデフォルメされた目が描かれている。

 よく見ると保管されているアイテムのほとんどに記されていた。


「何だこのマーク……」


「気になるかね。それは淀離よどり協会の聖印だよ」


 背後で棺崎が答えを言った。

 俺は直近の記憶を探る。


「淀離協会……って、須王会の元会長が話していたような」


「たぶんそれだね。祟りビルで淀離協会の魔術道具をいくつも回収した。新村美夜子さんを捕縛した鎖も淀離協会の魔術だったし、何かしら繋がりがあったのだろう」


「先生、淀離協会とは何ですか!」


「地方のカルト組織だ。魔術に精通し、神に成る方法を模索している。そして目的のためならば手段を選ばない」


 棺崎が両手を広げた。

 彼女は満足そうに言葉を続ける。


「我々はラッキーだね。淀離協会の道具がこれだけあれば、新村美夜子さんにも対抗できるだろう。死体のある山まで襲撃されずに行けるかもしれない」


「……本当に大丈夫ですか? 今までそんな調子で失敗してきましたけど」


「心配いらないよ。淀離協会の道具は高性能だ。ほら、ここの道具を車に載せよう」


 棺崎はさっさと動き出すと、地下室の物を地上に運び始めた。

 俺と佐奈も急かされながら手伝う。


 作業中、俺は棚の隙間に落ちていた古い写真を見つけた。

 そこには美夜子の両親と棺崎の三人が写っていた。


「…………」


 少し考えた後、俺は写真をこっそりと鞄に忍ばせた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「何だこのマーク……」 >「気になるかね。それは淀離協会の聖印だよ」  美夜子の両親と淀離協会とのただならぬ関係……嫌な予感しかしない。
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