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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第68話 残る部屋

 ついに言ってしまった。

 俺は黙り込んで棺崎の反応を待つ。

 彼女はやけにあっさりと頷き、いつもの微笑で述べる。


「君の口から直接聞けてよかったよ。これで謎が一つ解決できた」


「え?」


「前も言ったが、喰呪霊は生まれ損なった赤子の集合体だ。故に妊婦だった新村美夜子さんと共鳴したのだろう」


「ちょ、ちょっと棺崎さん」


「祟りビルの霊……禍舞明神も同様だね。生贄を取り込みすぎて様々な要素が混ざっていたが、あれのベースは女の情念だった。きっと新村美夜子さんと通じ合うものがあったのだろう」


 俺が止めようとしても棺崎の話は止まらない。

 彼女はとても流暢に自身の推測や分析を披露する。

 佐奈はそれを凄まじいスピードでメモしていた。

 後で漫画の参考にでもするのだろう。


 それにしてもこっちは覚悟を持ってカミングアウトしたのに、棺崎はあまりにも平然としていた。

 さすがに気になった俺は尋ねる。


「……もしかして、美夜子の妊娠を知ってたんですか?」


「うん。飯島君に教えてもらったよ」


「秘密にする義理もないでしょ」


 佐奈は悪びれもせずに言う。

 そうだ、こいつには妊娠のことを話しているんだった。

 タイミングがあれば勝手に暴露していたとしても不思議ではない。

 棺崎にとっては既に知っている情報だったわけだ。


 母子手帳をひらひらと振る棺崎は、これ見よがしに嘆息する。


「妊娠中の彼女を自殺させるなんて、なかなか酷い彼氏だね」


「…………軽蔑しましたか」


「いやまったく。元から君の人格面は劣悪だと認識しているよ」


 辛辣な感想だった。

 まあそれでも自分の行いについて延々と罵倒されるよりは気が楽でいい。

 俺が最低なクズであることは俺が誰よりも理解している。


 その後、俺達はめぼしい美夜子の私物をゴミ袋に詰め込んで探索を済ませた。

 俺はゴミ袋を背負って言う。


「これで全部の部屋を調べましたね。とりあえず外に出ますか」


「まだ残っているよ。ついてきたまえ」


 棺崎がいきなり歩き出す。

 向かう先は一階だった。


(どこか調べ忘れていたっけ)


 疑問に思いながらもついていく。

 棺崎が足を止めたのは廊下の途中にある物置部屋だった。

 そこは序盤に調べたのでもう何もないはずだ。

 棺崎は部屋の奥まで進むと、床をコツコツと踏み鳴らす。


「一階の探索中、巧妙に仕込まれた結界を発見してね。人間の五感では捉えにくくなる効果が施されていた。そこまでして隠したい何かがあるのだろう」


 気が付くと、棺崎の足元の床板がずれていた。

 床の下には階段が続いている。

 佐奈が感激した様子で拍手をする。


「さすがです! 先生にかかれば秘密の結界も見抜けてしまうんですねっ!」


「これくらいは誰にでもできる。君にも伝授しようか?」


「ぜひお願いします……ッ!」


 そんなやり取りを挟みつつ、俺達は地下へと続く階段を下っていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >「妊娠中の彼女を自殺させるなんて、なかなか酷い彼氏だね」  ああ、第40話でいだいた疑問の答え合わせが、ようやくできたかな。
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