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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第66話 収穫なし

 家の探索を始めることになったが、なぜか俺が先頭に立たされた。

 後ろから押されるのでやんわりと抗議する。


「棺崎さん、前に行ってくれませんか」


「断る。危険は役割は君に任せると決めているのでね」


「勝手に決めないでくださいよ……」


 文句を言いつつ、俺は慎重に歩き出した。

 どうせ俺の主張が通らないことは分かり切っているからだ。

 それなら早く探索を済ませてしまうに限る。


 先に家に侵入していた泥棒はどこにいるのだろう。

 死体の血の乾き具合にから考えるに、それなりの時間が経過していそうだ。

 もうとっくに立ち去っている可能性は高い。


 最悪なのは泥棒がまだ家に潜伏しているパターンだ。

 鉢合わせて刺されるのは先頭にいる俺だろう。

 いきなり刃物で首を切り裂かれる想像をして、俺は顔を顰める。


(ああ、嫌だ……)


 不意に肩を叩かれる。

 驚いて振り向くと佐奈がいた。

 その手には無骨な拳銃が握られている。


「安心して。怪しい奴はあたしが射殺するから」


「なんで銃を持ってるんだよ」


「祟りビルで拾ったの。漫画の資料にしたかったから。あんたも持ってるでしょ」


「あ、そうだった」


 指摘されて思い出した俺は、鞄から拳銃を取り出した。

 黒服の死体から何丁か盗んでおいたのである。

 俺は拳銃の引き金に指をかけて見つめた。


(……相手が幽霊よりマシか)


 ビジュアルがいよいよ化け物じみてきた美夜子より泥棒の方が勝ち目はある。

 そうだ、前向きに考えよう。

 なんだかんだ生き延びてこれたんだ。

 怖がることなんてない。

 ちょっとしたお化け屋敷みたいなものじゃないか。

 自らを鼓舞する俺の横で、佐奈は楽しそうに拳銃を構える。


「ふう、ワクワクしてきたわ。早く撃ちたいなぁ」


「頭おかしいだろ……」


「おかしくないと漫画家なんてやってられないの」


 馬鹿なやり取りをしつつ、俺達は一階の部屋を順に探索していく。

 どこの部屋も物がひっくり返されて目茶苦茶になっていた。

 家具は倒れ、引き出しや戸棚は中身が床に散乱している。

 そのせいで足の踏み場がない部屋も多かった。 


 探索中、棺崎は茶封筒を拾い上げる。

 そこには数枚の一万円札が入っていた。


「現金が放置されているね。泥棒には別の狙いがあったらしい」


「何を探してたんでしょうか」


「さあ、今のところは予想が付かないね」


 ほどなく俺達は一階のすべての部屋を探索し終えた。

 その間、泥棒に遭遇することもなければ、美夜子に関する有力な手がかりも見つからなかった。


 続けて二階に赴くも似たような調子だった。

 台風が通過したように荒れ果てた部屋を無駄に漁るばかりで、何の収穫もない。

 そうして残ったのは美夜子の部屋だけとなった。


 俺は部屋の前で立ち止まる。

 扉には「にいむらみよこ」のネームプレートが吊り下げられていた。

 ドアノブに触れる。

 ぞわぞわと恐怖が這い上がってきた。

 一瞬で汗だくとなった俺は何もできずに硬直する。

 すると痺れを切らした棺崎に小突かれた。


「早く開けたまえ」


「心の準備をしてるんですよ」


「君の気持ちなんてどうでもいい。さっさとするんだ」


 俺を押し退けた棺崎が扉を開ける。

 俺は反射的に目を閉じた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新村パパを殺す動機のある人間はいないと思うけどなぁ…
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