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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第51話 交渉開始

 黒服が険しい顔でインカムを操作する。

 どこかに連絡をしているようだ。

 その間も油断なく俺を観察していた。


(言い方が悪かったな……殺されるかも)


 いきなり殴りかかられる光景を想像して震える。

 もう痛いのは嫌だ。

 ヤクザを前にして祈るにはあまりに儚い望みだった。

 やがて黒服の一人が顎で俺を促す。


「来い」


「えっ、いいんですか」


「面会の許可が出た」


 歩き出した黒服についていく。

 面会とは何だろう。

 たぶん相手は元会長だと思うが不安しかない。

 闇金のことで責められたら弁明できる自信がなかった。

 もっと別の要件を伝えるべきだったか。

 適当な嘘をついた方がマシだったかもしれない。


 密かに後悔しつつ、俺は祟りビルのエントランスに入る。

 そこで黒服からボディーチェックを受け、私物をすべて没収された。

 後できちんと返してもらえるのか。

 そもそも生きてここを出られるのか。

 不安は急速に膨らんでいく。


 俺はエントランスからエレベーターに乗った。

 扉が閉じた瞬間、もう逃げられないことを悟る。

 エレベーターは上昇し、階数表示が"32"を示したところで停止した。

 俺は黒服によって廊下へと押し出される。

 間もなくエレベーターは閉じて下降してしまった。


(ここから先は俺一人で行けってことか)


 廊下の端に扉があった。

 他は壁ばかりで進む場所がない。

 俺は扉に近付くと、恐る恐るノックをする。


 数秒後、中から現れたのは高級そうなスーツを着た壮年の男だった。

 男は穏やかな笑顔を浮かべているが、目だけが笑っていない。

 佇まいも隙だらけに見えて妙な圧があった。

 男は表面上は朗らかな様子で話しかけてくる。


「やあ、こんにちは。今日は来てくれてありがとう」


「ど、どうも……」


「何を緊張しているんだい。リラックスしたまえ」


 男は俺を室内に招く。

 その部屋は会議室のような場所だった。

 円形のテーブルを囲うようにビジネスチェアが置かれている。

 部屋には男以外には誰もいなかった。

 男は笑顔のまま俺に握手を求める。


「須王だ」


「む、村木です。よろしくお願いします」


「こちらこそよろしく」


 高級スーツの元会長――須王は俺の肩を叩くと、近くのビジネスチェアに深く腰かけた。

 それから俺に問いかける。


「先に確認したいのだが、君は淀離協会の人間ではないね」


「よ、どり……?」


「違うならそれでいい。話を進めよう」


 須王は別のデスクチェアを俺に勧めてきた。

 俺は縮こまって従う。

 とても座り心地が良いがそれどころではなかった。

 にこやかな須王は単刀直入に尋ねてくる。


「須王会の傘下にある闇金を襲ったのは君だね」


「あー、それは俺じゃなくて、いや、金を貰ったのは事実なんですけど……」


「慌てなくていい。別に怒っているわけじゃないんだ。たかが数百万円の損失だからね。本題はその先にある」


 刹那、須王の目の色が変わる。

 彼は覗き込むように俺の顔を凝視してきた。


「君は霊を飼っているね。それを私に譲ってほしいんだ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] そうできるならそうしたいもんだよ。ほんと
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