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偏愛霊  作者: 結城 からく


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第49話 作戦会議

「そろそろ着きますよ」


 安藤の声で目を覚ます。

 車はコインパーキングに停まっていた。

 隣には佐奈の車もある。


 少し眠ったおかげか、体調はかなり良くなっていた。

 呪いの後遺症は無さそうだ。


 目と指の欠損も今のところは気にならない。

 まあショックは残っているのだが、あまり考えないようにしている。

 今は生き残ることだけが最優先なのだから。


 車内から外を見回す。

 そこは閑静なオフィス街だった。

 ビジネススーツを来た人々が忙しなく行き来し、客を乗せたタクシーが渋滞を作っている。


 運転席の安藤が前方を指差した。


「あれが祟りビルです」


 周囲より何倍も立派な高層ビルがそびえ立っている。

 高さも付近では一番ではないだろうか。

 フロアの半分くらいが全面ガラスで働いている人々の様子が見える。

 言われなければヤクザの本拠地とは思えない佇まいである。


 ビルの前には大きな階段があり、三階のエントランスに繋がっている。

 階段の両端にはエスカレーターも搭載されていた。

 俺はその外観に首を傾げる。


「変な作りですね。普通に一階から入れるようにしたらいいのに」


『そこがポイントなのだよ』


 まだ通話中だったらしく、スマホから棺崎の声がした。

 そこに佐奈の元気な声も続く。


『先生、解説をお願いします!』


『おそらく一階と二階は慰霊碑のスペースなのだろう。なるべく人を近付けたくないから入口を三階にしているのだと思うよ』


「慰霊碑に近付かれると都合が悪いんですか?」


 俺が訊くと、棺崎が嬉しそうに回答を返してくる。


『十中八九、慰霊碑が祟りの発生源だ。祟りを散らす何らかの工夫を施してあるなら、無闇に触られるリスクは避けたい。もし対策が崩れた場合、須王会に甚大な被害が返ってくるからね』


「つまり慰霊碑は須王会の武器であると同時に弱点なんですね」


 今度は安藤が発言した。

 隣の車では棺崎が笑みを浮かべていた。


『そうだね。祟りの恐ろしさを知っていれば脅しの材料にもなるだろう』


「参考になりました。ありがとうございます」


 会話が途切れたのを見計らい、俺は重要な質問をする。


「ところでどんな作戦で行くつもりですか? 今までと違って侵入するのが厳しそうですけど」


『作戦はシンプルだよ。まず村木君が一人で祟りビルに突入する。その後、一億円を奪取したら……』


「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ! 俺が一人で突入って正気ですか!?」


『狂気がなければ先に進めないよ。ほら、頑張りたまえ』


『ワガママ言って先生を困らせないで! さっさと行きなさいよ』


 棺崎と佐奈が有無を言わさずまくし立ててくる。

 このままでは不味いと感じた俺は頼みの一人に縋り付く。


「安藤さん……」


「全員で向かうより単独の方が怪しまれません。闇金の件で来たと言えばすぐには殺されないでしょう」


 安藤は誰よりも冷めた目で淡々と言う。

 仲間がいないことを悟り、俺はぐったりと肩を落とした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >『狂気がなければ先に進めないよ。ほら、頑張りたまえ』 このくだりで爆笑しますたwww
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