第46話 合流
亜門に見送られて俺達は診療所を出発する。
俺はやっぱり後部座席の僅かなスペースに押し込まれた。
夜明けを迎えた空を眺めるうちに、だんだんと身体の感覚が戻ってきた。
それに伴って失った目や指がズキズキと痛む。
呻くと佐奈がうるさいのでどうにか声を我慢する。
(くそ、どうして俺がこんな……)
すべて美夜子のせいだ。
死んだのに迷惑をかけやがって。
大人しく成仏すればいいじゃないか。
さっさと消えてくれ。
心の中で延々と愚痴を垂れていると、いきなり車が停まった。
そこはショッピングモールの駐車場だった。
平日なので客は少なく閑散としている。
棺崎はこちらを振り返って言う。
「次の心霊スポットに行く前に彼と待ち合わせしていたのだよ」
少し離れた場所にある黒い車から男が降りた。
それはスポーツバッグを背負う安藤だった。
なるほど、安藤がいれば頼もしいな。
とにかく冷静沈着で荒事にも強い。
自殺神社でもほとんど影響を受けてない様子だった。
もし彼が喰呪荘にいたら、俺もあんな目に遭わずに済んだかもしれない。
安藤がこちらまで歩いてくると、佐奈が車の窓を開けた。
「こんにちは。あなたが漫画家の方ですか」
「は、はじめまして! 飯島佐奈ですっ! 棺崎先生から話は聞いています、よろしくお願いします!」
「安藤です。こちらこそお願いします」
初対面の安藤と佐奈が挨拶を終えた後、俺は安藤の車に移動した。
佐奈の車が呪具だらけで狭かったからだ。
助手席に乗ると、安藤が錠剤入りの瓶を渡してくる。
「飲みますか。鎮痛剤です」
「いただきます……」
俺が鎮痛剤を飲む間、安藤はほぼ無表情だった。
親身な感じは一切せず、義務的な気遣いなのは分かっている。
しかし、今はそれでも嬉しかった。
他の人間がヤバすぎて相対的に優しいのである。
すぐに佐奈の車が発進し、安藤はそれについていく。
安藤は運転しながら淡々と言った。
「呪われた挙句に一億円の請求とは災難でしたね」
「本当にヤバかったんですよ……安藤さんは何をされてたんですか? もっと早く合流できると思ってたんですが」
「棺崎さんの指示で次の心霊スポットの調査をしていました。それと武器の調達ですね。後部座席にあります」
俺は何気なく振り返ってぎょっとする。
後部座席を埋め尽くすように大量の銃火器が散乱していたからだ。
ナイフや手榴弾、ロケットランチャーといった代物まで置かれている。
あまりに現実離れした光景に、俺は念のため確認する。
「……これ全部本物ですか?」
「はい。行き先を考えれば妥当な準備でしょう」
「でも幽霊に銃は効かないんじゃ……」
「まだ棺崎さんから聞いていないんですね」
信号待ちで安藤がこちらを見る。
恐ろしいほど冷え切った眼差しだった。
感情に乏しい顔のまま安藤は明かす。
「三つ目の心霊スポットは須王会の本部です」




